Spiral Fiction Note’s diary

物書き&Webサイト編集スタッフ。

『おおかみこどもの雨と雪』


監督:細田守
キャスト:宮崎あおい(花)、大沢たかお(おおかみおとこ)、 黒木華、大野百花(雪)、 西井幸人加部亜門(雨)、平岡拓真、林原めぐみ、中村正、大木民夫染谷将太谷村美月麻生久美子菅原文太




解説・物語/「時をかける少女」「サマーウォーズ」の細田守監督が、「母と子」をテーマに描くオリジナルの劇場長編アニメーション。人間と狼の2つの顔をもつ「おおかみこども」の姉弟を、女手ひとつで育て上げていく人間の女性・花の13年間の物語を描く。「おおかみおとこ」と恋に落ちた19歳の女子大生・花は、やがて2人の子どもを授かる。雪と雨と名づけられたその子どもたちは、人間と狼の顔をあわせもった「おおかみこども」で、その秘密を守るため家族4人は都会の片隅でつつましく暮らしていた。しかし、おおかみおとこが突然この世を去り、取り残されてしまった花は、雪と雨をつれて都会を離れ、豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住む。「時をかける少女」「サマーウォーズ」に続いて脚本を奥寺佐渡子、キャラクターデザインを貞本義行が手がける。 (映画.comより)


 バルト9にて観賞。前の回で観終わって出てきた人が涙ぐんでたりしたのを入る前に観るが泣いていたのはほぼ女性だった気がした。夏休み(?)か高校生ぐらいの男子四人組とか夫婦とかカップルとか親子づれと前評判も高く『時をかける少女』『サマーウォーズ』の細田監督人気なのか昼過ぎの回だったがけっこう入っていたように思えた。三作目にだけど細田ブランドは前二作によって確立されているみたい。今作『おおかみこどもの雨と雪』が日テレが出資なのか最初に出てくるぐらいだから次期宮崎駿ジブリとして期待しているのだろうね。


 まあ、最初に細田さんの名前は聞いたのは『時をかける少女』だったけどこの作品が口コミでヒットした。次代を担う若手監督を探していた宮崎駿によりジブリで『ハウルの動く城』の監督に選ばれるも諸々あって制作中止になり、この『時をかける少女』がヒットした時にジブリ宮崎吾郎監督『ゲド戦記』がコケるという話があって因果なものだなって思ったのは覚えてる。





 冒頭の主人公でありおおかみこどもの母親である花とおおかみおとこが出会って、なぜかおおかみおとこは名前がないのだが、だから花は作中で彼の名前では呼びかけない。運転免許におおかみおとこの名前出てたのかな、覚えてないけど。二人が出会ってゆっくりと恋をして大事な人になっていくのを丁寧に描く。
 彼は自分がおおかみおとこだと言わないといけない時がくる。本当の事を言わないといけないとわかっていたけど言えば花を失うと思って言えなかった事を。それを花は受け入れて二人は暮らし始めやがて子供を授かる、一人目が生まれた日は雪が降っていて、二人目は雨が降っていた。ただ花は生まれてくる子供が人間とおおかみのハーフで生まれる時にどういう姿で出てくるのかがわからないので二人とも自宅で彼に手伝ってもらって出産する。そして家族四人の幸せな一時が過ぎて彼はいなくなり、諸々の問題が起きて親子三人は自然豊かな田舎に越して廃屋に見える家をキレイにして住みだす。


 収入はなく彼が残した貯金でやりくりする一家は庭を耕して農作物を作ろうとするが素人でうまくいかない。偏屈な頑固ジジイや周りの人達と徐々に打ち解けていく。子供たちはおおかみになったりして山や野原をかけていく。



 どうおおかみこどもを育ていいのかわからず誰にもこのことを聞けない花は試行錯誤して子育てをしていく。雪もやがて小学校に入り、雨も入る。二人の成長というか学年が一個ずつ上がるときの互いのクラスを交互に見せて二人がどう人間の世界に慣れていくのかを見せるのは上手いなあと思う。時間も短くわかりやすい。


 宮崎あおいの花の声は違和感ないんだがおおかみおとこの大沢たかおの声はなんだか違和感あったんだけどなんでだろう。


 雪が起こす事件、雨が先生と慕う人、おおかみと人間のハーフである彼らが成長していくのを見守っている花。二人はそれぞれの道を自分で決めて歩き出す。優しい母性、母親の視点で描かれている。花は亡くなった父親からいつでも笑っていれば世の中なんとかなるんだと言われているので二人がケンカして家がボコボコになろうが二人が問題を起こしても声を荒げて怒りはしない。


 『サマーウォーズ』は田舎の旧家の血族の結束で世界危機を乗り越えた。今作では血縁も誰もいない排他的であろう田舎の町でよそ者である親子三人がその町の人に支えられ好意的に受け入れられたからこそなんとかなっている。というのは素晴らしいことだけど実際の世界はそんなに優しくはないだろうなって。
 もっと実際の世界だと血族故に揉めるし争う事がでてくる、家族であるけど個人の利益や価値観でそう簡単には一致団結はできないし。田舎にいきなりやってきた親子三人をそうそう優しく受け入れてくれるほど開放的な場所はそんなにないだろう、所謂世間の目がどうしてもある。


 たぶん、現在だと血とか地域のコミニティよりは趣味だとかで遠くにいるけど繋がっている関係性とかのほうがラクチンだし助けになるかなあと、精神的には。でも、おおかみこどもを育てている花にはそんなコミニティはないし、最初は子供の事がバレるとヤバいと思ってあえて隣のうちがだいぶ下に行かないとない場所に越してる。人の繋がりによってこの三人は助かっている、細田さんはそういうものを信じている人なんだろうなと思う。そういう狭いコミニティが嫌で都会に出る人もいるのでそれは人それぞれの価値観なのだろうけど。


 最初はちょっとはおおかみおとこって思うけどまあすんなりその世界観に入れるからそれで勝ちではあるんだろう。子供たちはおおかみとして生きるのか人間として生きるのかを決めていかないといけない。子供の可能性でもあるし、他の子供と違う何かを持っている我が子を育てる親としていろんなメタファーにもなる。そこにあるのは真っ直ぐな母親の愛だけだ。この世界には父はいない。


 花を見てると『カーネーション』の糸子を思い出した。父性のない世界で家長として家を支える母親の強さと凄さ。最後に花が片方の子供にかけるあの言葉がまっすぐに響くのはこの物語を見ていて自分がその世界に違和感がなくてしっかり物語に感情移入で来たからなんだろうなって思う。


 子供を育てている僕の友だちや知り合いの現在子育て最中の人が見たら僕なんかよりはもっと感情移入して響きまくるんじゃないかなって思った。
 きっと残っていく作品だと思う。子育てに悩んでる人とか観ることで少しは救われたりするのかもしれない。とてもいい作品だと思う、大ヒットもするだろうし愛される作品として何年も観続けられていく作品だろうし細田守監督が次世代の国民的アニメ映画作家になる一作なんじゃないかな。

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