毎日新聞と星野監督

http://www.mainichi.co.jp/hanbai/kitaitochumon02.html


[創刊130年]毎日新聞へ期待と注文 阪神タイガース監督、星野仙一さん
 本文 阪神タイガース監督、星野仙一さん(55)
 スポーツ紙だけでなく一般紙も、1面から終面まで読んでいる。最近は中国、韓国、北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)に対する報道で、各紙とも腰が引けているのではないかと感じる。勇気を持って、正しいと思うことを伝えてもらいたい。 野球界に身を置く者として、センバツ都市対抗を主催し、かつてはプロ球団も所有していた毎日新聞のこれまでの貢献は非常に大きかったと感じる。担当記者に、社の代表ではなく、個人としてつき合うようにしてきたが、毎日の個性的な記者には、酒の席でも楽しい思いをさせてもらったし、本の執筆に協力もした。 新聞に期待するのは原点を忘れないでほしいということ。確認、裏取りを忘れず丁寧な仕事をするというのは、瓦版の時代からの原則。それと、記者は人の批判をするなら、自らも姿勢を正すべきだ。
瓦版時代に「確認・裏取り」をちゃんとやっていたかどうかは不明ですが、まぁ報道の原点であることは確かです。今は「事実が確認できていないのでコメントできない」というのは、コメントを求められた側の常套句になっているみたいですが。最後の一言もなかなかきついですね。俺は、「人の批判をするなら、実名でやれ」としか言いません。公共のマス・メディアは、ネットの匿名掲示板とか、俺みたいな人間じゃないんだから(毎日新聞は、メジャーな新聞の中では唯一すべての記事が署名記事です。この点は俺はとても評価しています)。

「天声人語」の人が語る海外の情報は正確か

↓2003年10月31日づけ


 イラクに駐留する米軍の士気は高いか? 星条旗新聞が10月半ばから7回にわたって現地報告をした。米軍の準機関紙という立場から内部に深く入ることができる強みを生かしている。意外なほど軍への遠慮が感じられない連載だ。鋭い批判も交えている。

 「イラクでは、王子のような暮らしをする軍人もいれば、砂の上で寝る兵もいる」。連載3回目の見出しである。司令部をフセイン元大統領の宮殿に置く師団のスタッフは、室内プールからインターネットカフェまで利用できる。「自分の部下には見せたくないね」と指揮官。

 一方で、何カ月もベッドやトイレもなく温かい食事やシャワーにありつけない生活を続ける兵も少なくない。「誰かが攻撃してくるまで座って待つだけの生活だ」。待遇のいい部隊についての怨嗟(えんさ)の声も上がる。「同じ敵を相手に戦っているとは思えない」

 何のためにイラクにいるのか? ゲリラ掃討作戦で民家を訪れる。通訳にノックさせる。恐怖に震える女性が出てくる。「おれたちはドアをぶっ壊すのは慣れているが、ドアをノックするのには慣れていない」とある軍曹。警察や民生関係の仕事をさせられているとの不満も上がっている。

 約2千人が回答を寄せたアンケートでは、35%が「使命があいまい」と答え「明瞭(めいりょう)」とした人とほぼ同数だった。部隊の士気が高いと答えたのは16%、低いが49%、残りが「普通」だった。

 ブッシュ大統領は28日「方針を変えるつもりはない」と語った。現地の米軍兵士たちは、どう受けとめたことか。

↓「星条旗新聞」の「現地報告」は以下のところで読めます
http://www.stripes.com/morale/
↓アンケートの回答は以下のところにあります
http://www.stripes.com/morale/dayonestats.html

12. How clearly defined is your mission?


400 very clear 21%
282 mostly clear 15%
523 clear 27%
348 mostly not clear 18%
326 not clear at all 17%

「clear」を「普通」と訳している根拠が不明なんですが。普通は「average」とか「normal」のような気がします。まぁ、この質問自体が、曖昧な部分を許さないような質問立てになってるんで、しょうがないかな、とも思いますが。
↓原文だと、以下のように言っています
http://www.stripes.com/article.asp?section=104&article=17519&archive=true

A Stars and Stripes questionnaire of nearly 2,000 servicemembers in Iraq showed that 35 percent of the respondents said their mission was “mostly not clear” or “not clear at all.” An equal number said the mission was “very clear” or “mostly clear.”
まぁ、確かに翻訳の通りではありますが。
「志気(morale)」に関する回答は、以下の通りです。

13. How do you rate your unit's morale?


53 very high 3%
252 high 13%
653 average 34%
540 low 28%
412 very low 21%

↓これに関しては、「個人レベルの志気」も含めて細かな分析を以下のところでやっています
http://www.stripes.com/article.asp?section=104&article=17516&archive=true

¶ Among the largest group surveyed, Army troops, the results looked much like a bell curve. Twenty-seven percent said their personal morale was “high” or “very high.” Thirty-three percent said it was “low” or “very low.” The largest percentage fell in the middle, saying it was “average.”

¶ Among the second largest group, reservists and National Guard members, the differences were much starker. Only 15 percent said their own morale was “high” or “very high,” while 48 percent said it was “low” or “very low.”

¶ Among Marines, the next largest group, 44 percent said their morale was “high” or “very high,” and only 14 percent said it was “low” or “very low.”

¶ Among airmen, the smallest of the four major groups surveyed because fewer questionnaires were allowed to be circulated to them, the results were also very positive. Thirty-nine percent said their morale was “high” or “very high,” and only 6 percent said it was “low” or “very low.”

やはり現場にいる人間のほうが、志気が低下するようです。
しかし、アンケートの回答で気になるのは、これのほうでしょうか。

11. How worthwhile do you think fighting this war was for America?


542 very worthwhile 28%
359 probably worthwhile 19%
395 worthwhile 20%
390 little value 20%
211 not worthwhile at all 11%

まぁ、これも「普通」という回答欄がない質問なので何とも、なんですが。

新聞はどう読めばいいのか

今回のはそれほどでもないですが、天声人語を含む記事を読む場合に注意すべきことは、「何を言っているか」ではなく「何を言っていないか(隠しているか)」ということでしょうか。たとえば、裁判における証人尋問で、ある重要人物が容疑者と会っていたかいないかが問題だったとします。
弁護士「当日の夜中に被告が、その人物と会っていたという事実はないのですね?」
証人「はい、ありません」
そのような証人の証言は曖昧すぎて、検事としてはツッコミを入れなければならないところでしょう。「夜中」ではなくたとえば「明け方(早朝)」に会っていたかもしれないし、「午後8時」に会っていたとしても、その時間が「夜中」であるかどうかは、個人差があると思います。つまり、証人は「嘘は言っていない」が、「真実を語っている」わけでもない、というボーダーラインが存在してしまうわけです。
検事は証人の再尋問で、たとえば「その日の午後5時から翌日の朝の7時までに、被告はその人物と会っていたのか」というような質問をしなければなりません。
裁判の席において、関係者は「嘘を言ってはならない」という決まりはありますが、「知っている事実をすべて語らなければならない」という決まりはありません。その件に関する質問がされない限りは、「聞かれなかったから答えなかった」という対応も可能です(まぁ実際には、裁判官の心証をものすごく悪くするので、してはならないことみたいですが…)。