「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「しろいろの街の、その骨の体温の」(村田沙耶香)


いや〜この本は感動した…。今年のベスト3に入るだろう…参った…ケッサクです…。タイトルがスゴイねえ。読んでみると絶妙なタイトルだと分かる。


「女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作」とあるが、まさにそうなんだろう。


例えて言うと、幼虫がさなぎになり脱皮して成虫になる過程を描いたのだ。ここまでリアルに書けるものなのか。何気に自分が小中学校の頃を思い出した。


「クラスでは目立たない存在である小4の結佳。女の子同士の複雑な友達関係をやり過ごしながら、
習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に伊吹を「おもちゃ」にしたいという気持ちが強まり、
ある日、結佳は伊吹にキスをする。恋愛とも支配ともつかない関係を続けながら
彼らは中学生へと進級するが――」そのエッセンスを紹介しよう。


「私たち、骨の中で暮らしているみたい」肘と膝が、また痛んだ。私たちの手足にあるような、伸びる骨。まるでその骨の中に紛れ込んだみたいだ。白い世界は少しずつ広がって、完成へと近づいてく。


・「ね、伊吹。伊吹に『せいつう』が来たら、私に見せてよ」

「え?」

「代わりに、私に、『しょちょう』が来たら、伊吹に見せてあげるよ」

「しょちょー?何、それ」

「すごいことだよ。知らないの?」

「わかんない」

「約束ね。このことは誰にも内緒だよ」

伊吹は小指を出してきて、私たちは指切りをした。伊吹の手は私より少し小さくて。赤ちゃんの手みたいな柔からさがまだ残っていた。幼くて柔らかい伊吹を締め付けるように、私は小指に力をこめた。


・私は、初潮になったら見せてあげる、という甘美な約束を思い出した。もう半年以上も前のことだし、性教育を受けてその意味をちゃんと知った私たちは、まさかそれらを見せ合ったりしないだろう。私たちの身体は機械じかけで、ある程度身体の中から成長する大人のスイッチが入って、そのしるしに少し血が出る。私は漠然と、そんなふうに思っていた


どうして、この未熟な身体に、こんなにコントロールできない熱が宿ってしまったのだろう。恵ちゃんや佳代子ちゃんの清潔な恋愛と違って、私は自分の肉体が発情しているのがはっきりわかる。伊吹の体温を食べたくなってしまう。


「……あのね、体の中にずっと、音楽みたいなものがあるんだ。ずっと、それをどうやって演奏していいのか、わかんなかったの。だから、伊吹にぶつけて、ぐちゃぐちゃにしちゃった。でも、本当は、唄いたかった。それは伊吹が好きだから発生した音楽だから、伊吹の手とか指とか、そうした場所で演奏しないと唄えないんだ。私は、早くないと思う。すごく、遅すぎたって思う。私。小学校4年生の頃から、ずっとこうしたかった。でも、我慢してた。でも、伊吹がまだ準備できてないなら、もっと待つ。いつまでも、絶対に待つ」


・私たちは、ゆっくりと、お互いの体温の中に落ちていった。私はやっと、自分が白い街の外に流れ出ていくのを感じていた。汗ばんだ伊吹の皮膚を、醜くて美しい私の指がたどっていく。私たちの欲望が、音楽になって互いの身体に流れ込む。身体の中にあった、言語化できなかった感情たちが、液体になって、伊吹にしみこんでいった。伊吹の呼吸が、ゆっくりと温度を増していく。その濡れた呼吸の音色に耳を澄ませながら、瞳を閉じた。そして、私は、自分がずっとたどり着きたかった体温の中へたどり着いて、あの骨の街を出たのだということを知った。


あったねえ…成長痛でずきずき疼くような痛みが!このような小説に出会えたことがウレシイ。自分の中の純粋さを思い出したました。超オススメです。(・∀・)!