金色堂


以前平泉の中尊寺を訪れたのは高校3年生のときだった。3月中ごろの、小雪のちらつく寒い日だったのを覚えている。あいにく金色堂は1962年から始まった解体修理のために、見ることができなかった。父と母も同じ頃に訪れていたようで、いまだに金色堂をみたことがないという。というわけで、今回のたびの一番目の訪問先は中尊寺と決まり、磐越道から東北道へと車を走らせる。
炎天下の33度を越す暑さの中、杉林の参道を歩き金色堂へ。金色堂は鉄筋コンクリート作りの覆堂で守られ、建っている。藤原家三代の栄華を知ることはできるかもしれないが、歴史の重みを感じさせるものではなくなっている。参道は土産物屋が多く、あの40年前の静けさの中に凛とたたずんでいたはずの杉木立もまったく趣を変えている。
やはり神社仏閣は人の少ない、寒い季節に静かに訪れるものだとあらためて実感した。

秘湯


本日の宿は、岩手県の夏油(げとう)温泉。山間の渓谷に沿って点在する露天風呂が売りの、湯治場を兼ねたひなびた温泉宿だ。
しつこいようだが、ここも暑い。日陰に入っても涼しくない。当然のことながらクーラーなんかはないし、つい一昨日までは寒かったんですよと、従業員は言う。風呂に入り汗を流しても、すぐにシャツが体に張り付いてくる。
夜も窓を全開にし、扇風機を回してなんとか寝ることができた。