『時をかける少女』(2006.08.25 福山シネマモード)

サマーウォーズ』公開を待ちわびて、昔の文章の修正版。

【解説】(allcinema ONLINEより)
これまでに何度も映像化されてきた筒井康隆の名作ジュブナイルを初のアニメ映画化。あるきっかけで、過去に遡ってやり直せる“タイムリープ”という能力を身につけたヒロインの淡い恋の行方と心の成長を丁寧な筆致で綴る。監督は「ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」の細田守
 明るく元気な高校2年生、紺野真琴は、優等生の功介とちょっと不良な千昭と3人でいつもつるんで野球ばかりして楽しい毎日を送っていた。そんなある日の放課後、真琴は理科準備室で、突然現れた人影に驚いて転倒してしまう。その後、修復士をしている叔母・芳山和子のもとへ自転車で向かった真琴は、ブレーキの故障で踏切事故に遭ってしまう。死んだと思った瞬間、真琴はその数秒手前で意識を取り戻す。その話を和子にすると、和子は意味ありげに、それは“タイムリープ”といって年頃の女の子にはよくあることだと、冗談とも本気ともつかない説明をするのだった。最初は半信半疑だったが、いつしか使い方を覚えて些細な問題でも簡単にタイムリープで解決してしまい、すっかり調子に乗る真琴。そんなある日、真琴は千昭から突然の告白を受ける。3人の友だち関係がいつまでも続くと思い込んでいた彼女は、動揺のあまり、タイムリープで告白そのものをなかったことにしてしまうのだが…。

■『時かけ』がアニメ映画に─。知ったのは、書店で立ち読みしたQuickJapan「SF特集」号の、細田守監督のインタビューより。
アニメ界の動きには疎いので細田監督のことは全く知識なく、”また難儀なことするなぁ”というのが、映画化を知ったときの感想。
映画マニアとしても知られる筒井康隆*1の眼鏡にかなう作品となるのか、しかもアニメで─?と気になりインタビュー記事を読んだが、その筒井氏が好評価を行っていて、それ以来少し気になってはいた。

■広島での公開は首都圏公開から1週間遅れで広島バルト11にて。
しかしアニメ映画にありがちな、朝の回のみとかの半端な時間の上映になってしまい時間を工面してまで見に行くかどうかの決心はつけかねていた。
そしてネットの上で圧倒的な高評価*2が伝わってくるころには広島での公開は終わり、最寄りの映画館は福山市のみ。
もうチャンスはないかもしれんと意を決し、知らない街の映画館へ。

■…めっさ良かった。
真っ直ぐで斬新で初々しくて潔くて大胆で繊細で清々しくて凛々しくて。
声を務める若手俳優ちの真っ直ぐな演技、前半のコミカルな演出が中盤のサスペンスを引き立てる巧みな脚本展開、そして”勇気を持って未来に踏み出すことで人は成長する”というメッセージ。
冷静に考えるとつじつまの合わない消化不良箇所も少々あるけど、中盤移行の気持ちを揺さぶる展開の前には些細なことはどうでもよくなる。
観たあともずっと、ひとつひとつのシーンが頭の中をぐるぐるして、それらにケリをつけずにはいられない。

*1:小学校高学年から中学校くらいまでいっとき筒井康隆にハマっていた。 『にぎやかな未来』『アフリカの爆弾』などの角川文庫の白い背表紙シリーズを買ったり、『家族八景』『七瀬ふたたび』は中学校の頃通っていたピアノの先生の部屋の本棚にあったものを読んでいた。 そのころは”ツツイスト”なんていう言葉はなかったと思う。

*2:例えばYahoo!映画のユーザーレビューにおけるあまりの高評価ぶり。 そもそもあのレビュー欄に書き込むようなクラスのレビュアーにシビアな批評眼を期待してはいけないが、それでも”☆5つ”をつける気持ちはよく判る。作品の内容のよさは勿論、今夏アニメの本命馬の『ゲド戦記』がその前評判やジブリのブランド力に見合うだけの説得力が持てなかったため、ノーマークの『時かけ』が相対的に際立ってしまったこともある。

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