ゲームでシステマを再現することについて

今回は格闘ゲームに登場したロシア武術システマから、ちょっと考えたことを書く。
格闘ゲームの『DEAD OR ALIVE 5 ULTIMATE ARCADE』(DOA5UA)というゲームが昨年12月からゲームセンターで稼動している。
この格闘ゲームシリーズの新キャラとして「マリー・ローズ」というキャラクターが登場し、その使用する格闘技がシステマということになっているのだが、全く現実のシステマと似ていないので一部で話題になっている。


公式サイトより Dead or Alive 5 Ultimate: Arcade Official Site


格闘ゲームの格闘技が現実離れしているのは別にシステマに限った話ではないので驚くことではないが、「似ていない部分が多い」「システマの動きを再現できそうな部分でもしていない」「技術の違いとキャラ設定を考慮するとシステマを使うことにしている意味がない」あたりがシステマの練習者からすると痛いところだと思う。


現実のシステマの動きをゲームに取り入れるのは厄介な話だ。
モーションキャプチャーでシチュエーションに合わせた動きを取り込むことはできるだろうが、「システマの動きを再現するにはゲームでは通常動かさない部位を動かす必要がある」「システマの動きが状況や相手に合わせて変わる」という点が難しさを増すのではないだろうか。
前者については、最近のゲームでは結構うまく処理できるようになってきた。キャラクターが衣類を着ているゲームなら細かい部分を省略しても結構リアルな動きになるだろう。
後者については、システマの根幹に関わる。システマで全く同じ動きを繰り返さないということは、実際の指導やデモンストレーションでも言われる。
例を挙げよう。
アメリカの格闘技雑誌Black Belt誌2013年8・9月号でシステマのシンストラクター、ヴラディミア・ヴァシリエフ師がデモンストレーションを行った際のエピソードが紹介されている。取材者がカメラに向かってもう一度同じディフェンスのデモをするように頼んだところ、ヴラディミア師は、同じ動きができない理由―システマの動きが相手の動きや位置を前提とし、わずかな攻撃、角度の違いが異なる反応を生むということ―を説明した*1
決まったパターンにはまらないように状況に合わせた最適な動きを生み出せるように練習しているシステマとゲームとの相性は良くと思われる。格闘ゲームにはあまり向いていない。格闘ゲームの格闘技にリアルさは求められていないかもしれないが、フレーバーとして入れるのはもっと難しいのではないだろうか。
しかしFPSのような射撃中心のゲームで特定のアクションだけ取り入れるとか、ローリングのような移動・受身の部分を取り入れるとか、イベントシーンで状況にあったアクションを見せるといった形ではうまく使えるのではないかとも思う。
実際のシステマ指導者の動きを再現する場合、誰が協力するのかという問題もあるが。