火薬と鋼

2014-03-28

[] 空間除菌グッズをめぐる批判のこれまで

二酸化塩素を利用した空間除菌グッズ販売の根拠のない表示を取りやめるように消費者庁が命じるという報道があった。

二酸化塩素という化学物質を使い、生活空間の細菌やウイルスを取り除くと表示して除菌グッズを販売していた全国の17の会社に対し、消費者庁は、効果が出る根拠がないとして法律に基づき、こうした表示をとりやめるよう命じました。

命令を受けたのは、大阪・西区の大幸薬品や、愛知県半田市の中京医薬品など全国の17の会社です。

(後略)

除菌グッズ効果の根拠なし 17社に処分 NHKニュース


この空間除菌グッズの効果やその宣伝については以前から批判があったのだが、このニュースに対する反応を見るとあまり知られていないようだ。

そこで私がこの空間除菌グッズの問題点を知った経緯とこれまで見た批判的情報をまとめておこう。


自分がこの種の商品について知ったのは2011年12月のことだ。

勤務先の図書館で二酸化塩素や次亜塩素酸ナトリウムによる除菌効果をうたった除菌グッズを導入しようかという話があって調べたのである。

その結果、国民生活センターでの2010年11月公表の商品テスト結果があることを知った。これにより、図書館への導入は取り止めになった。

二酸化塩素による除菌をうたった商品−部屋等で使う据置タイプについて−(商品テスト結果)_国民生活センター


この商品テストの「消費者へのアドバイス」が一番消費者にとっての要点を踏まえた結論だ。

消費者へのアドバイス

•二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品は、さまざまな状況が考えられる生活空間で、どの程度の除菌効果があるのかは現状では分からない。

•二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品は、二酸化塩素の放散がほとんど確認できないものがあった一方で使用開始当初に放散速度が大きくなるものもあり、使用に際しては注意が必要である。

•二酸化塩素が食品添加物であること等を根拠に安全であるとうたっている銘柄があるが、必ずしも商品自体の安全性ではない。

二酸化塩素による除菌をうたった商品−部屋等で使う据置タイプについて−(商品テスト結果)_国民生活センターより)


効果も安全性も確かではないということだ。

本来ならこれでこの種の商品の効果が改めて企業で検証されたり宣伝が改善されたり、場合によっては販売中止されれば問題のないことだが、そうはならなかった。厳密に言えば広告の説明などの修正・削除はある程度行われたが、その説明には優良誤認になりそうな問題が残り続けた。


その後、空間除菌グッズについて著名人が使う例が話題になった。

・2012年2月のプロ野球の楽天・星野監督の報道

no title


・2013年1月の佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長のブログ、Facebook

携帯って良いよね : 樋渡啓祐物語(2005年5月ー2015年2月)

【除菌・消臭用品が贈呈されました】 | Facebook


こうした報道や商品についてネットで批判がなかったわけではない。

楽天・星野監督の件の報道に対してMochimasaさんは次のような批判のエントリを公開していた。

楽天・星野監督が『ウイルスブロッカー』なる怪しい商品の宣伝に一役買っている件について - Not so open-minded that our brains drop out.


武雄市長の件には次のような反応とまとめがあった。

武雄市長が絶賛する「ウイルス除菌用品」 - Togetterまとめ


さらに空間除菌グッズについて事故につながる問題も起きている。

次亜塩素酸ナトリウムを使う携帯型の「ウイルスプロテクター」等の除菌グッズでやけどの被害事例が相次いだことから、2013年4月には消費者庁が使用中止を呼びかけるということがあった。

首から下げる「除菌用品」、3製品にやけどの恐れ


この報道に関連して公開された空間除菌グッズへの批判記事もある。

アピタル(医療・健康・介護):朝日新聞デジタル


また、次のブログではこの報道の前から空間除菌グッズの問題を複数回取り上げている。

「二酸化塩素を使った、首から下げるタイプの除菌用品」3製品で「中等度の刺激性」、化学やけどなど。国民生活センター発表。: メモノメモ


やけどの問題後、次亜塩素酸ナトリウムを使った空間除菌グッズはなりをひそめたが、その後も二酸化塩素を使った空間除菌グッズは変わらず宣伝・販売されていた。むしろ、二酸化塩素を使った商品なら安全とでも言うかのように宣伝されていた。

大幸薬品の以下の発表はその典型的な例だ。

2012年秋からこの冬にかけ、ノロウイルス、インフルエンザの感染拡大に伴い、二酸化塩素とよく似た名前の除菌製品が市場に出回っています。また、2月18日次亜塩素酸ナトリウムをつかった首下げ型除菌剤の事故が発生し、みなさまからたくさんのお問合せを一般社団法人日本二酸化塩素工業会の会員各社に頂戴しております。なお、工業会加盟各社では、次亜塩素酸ナトリウムを使った製品は取扱いがございません。各社にかわり、工業会より皆様にご案内を申し上げます。

(中略)

今回やけど事故がおこった製品(ダイトクコーポレーション社製「ウイルスプロテクター」)については、次亜塩素酸を使用した製品であり、二酸化塩素を用いた製品ではありません。誤認混同ございませんよう、お願い申し上げます。

大幸薬品、二酸化塩素を用いた空間除菌製品について


しかしこれまで紹介してきた記事から分かるように、二酸化塩素を使った空間除菌グッズの効果・安全性の根拠にも疑問が指摘されていた。国民生活センターから事業者への要望が出て改善した後も、本質的には変わらない宣伝が続いていた。


例えば大幸薬品のクレベリンは「医師がすすめる空間除菌」と宣伝されており、今年2月にはその宣伝に対する疑問を中心にNATROMさんが批判記事を書いている。

「医師がすすめる空間除菌」のカラクリ - NATROMの日記


こういうビジネスとして定着した商品についての批判や疑問はマスコミでなかなか扱われず、消費者にも伝わらない。今回ここに取り上げたもの以外でも空間除菌グッズに批判的な記事はあったが、効果に関する疑義があることさえ知らなかった人のほうが多いのではないだろうか。健康・栄養・美容関係ではこういう例が無数にあり、根拠のあやしげな商品に関する批判的な情報がなかなか広まらない。