1134話 ダウンジャケット寒中旅行記 第18話

 いつものように、映画三昧 前編

 旅をすれば、そこで映画を見る。映画マニアとか映画研究者ではないが、旅を始めた昔から、そうなった。モロッコでも映画館に行ったが、めぼしい作品はなく、モロッコ映画ならどんなものでも見てみたいと思ったが、うまくいかなかった。
 マドリッドでは宿のすぐ近くの、いまや「行きつけ」と呼びたくなるソルの映画館、Yelmo Cines Idealに出かけて、スペイン映画を探した。1年前は、ポスターの下に上映情報を印刷した紙が貼ってあったのだが、今はデジタル表示に代わっている。本日上映予定の映画すべては、スペイン語タイトルがついているから、カウンターに行って、どれがスペイン映画か教えてもらった。上映時刻を考えて、まず選んだのは、この作品。

 “Perfectos desconocidas” 「パーフェクトなナニか」なんだろうが、私のスペイン語力ではわからない。元は舞台劇なのかと思った。シーンの95%は、マンションのダイニングルームなのだ。7人の登場人物がとにかくしゃべりまくる映画だから、外国人には退屈極まりないはずなのだが、内容はちゃんとわかって、おもしろかった。バルセロナの、ちょっと高いマンションに住んでいる夫婦が友人たちを招いて夕食を共にする。ひとりに電話がかかってきた。席を離れようとするが、「おもしろいから、その場で話したら」と言う者がいる。座興である。「秘密がないなら、いいじゃない」。その発言をきっかけに、全員のスマホをテーブルに置く。電話が鳴ったら、必ず出る。この場で、話をするという取り決め。スマホを表にしておいているから、誰にどういう電話がかかったか、わかるようになっている。
 その遊びが不幸を招き、ホスト夫婦以外すべてに、表ざたにできない秘密が暴露され、混乱のうちに夕食会が終わる。その時、突然の暴風が吹き荒れ、ホスト夫婦の妻がベランダに出て、様子を見るが気を失う。気がついて、ダイニングルームに戻ると、夕食会が始まったばかりに時間が戻り、スマホをテーブルに出さずに、和やかに食事が始まる。
 帰国して、調べてみた。この映画は2017年のスペイン映画だが、2016年のイタリア映画”Perfetti sconosciuti”のリメイクで、タイトルを直訳すると「完璧なよそ者」。イタリアでは数々の映画賞を得たコメディーだ。スペイン版のほか、ギリシャやトルコでもリメイクされたようで、ネット情報は多い。
 これが、イタリア版の予告編
https://www.youtube.com/watch?v=f7TahC1Upgw
 こちらが、スペイン版
https://www.youtube.com/watch?v=53SVAqOPS0E