津軽(2013811・岩木お山)

 成田雲竹と高橋竹山を知ったのは、白黒テレビ時代のNHKインタビュー番組でであった。1972年頃だろう。雲竹はすでに80をこえていた。なぜそれが分かるかといえば、感激して山野でLPを求め、夜中に無人の『アンアン』編集部に持ち込み、作業しながら聞き惚れていたからである。世は「原子心母」あたりの時代ではなかったか。そのLPは自宅の引っ越し騒ぎの中で消えてしまい、声だけが耳に残っていた。数年前に雲竹・竹山コンビの放送用テープから起こした全集が出て、勇んで買ったが、この初期のLPを越えてなかった。
 
 あの名盤が出ないわけがないとチェックしていたら、同内容で後からも出たらしいLPがCDになっていた。名人シリーズの第1弾である。近ごろこんなにうれしいことはない。岩木山の麓の1泊300円の宿からリンゴ2コを昼飯に、お山にのぼったのが東京オリンピックの年で、頂上での2コの味をこえるのを食ったことがない。日本には津軽にしか本当の民謡はないと思い込んでいる。テントを背負っての旅の20間山唄をうなっていた。