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maplecat-eveの日記

2018-01-02 2017年ベスト 50枚 〜音楽編〜

[]2017年 ベスト50枚 〜音楽編〜

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2017のベストトラックはコーネリアス『夢の中で』。浮上するわけでも潜行するわけでもない幽体離脱の夢の弾け方。ヴァンパイア・ウィークエンドのBaioの「Sensitive Guy」は毎朝目覚めの1曲でした。ライブは最愛のバンドWarpaintに行けたこと。どれだけこの日を待ったことか。Yumi Zoumaは毎年の恒例行事になりつつあるね。素晴らしいことです。以下、よく聴いた50枚のリスト。


1.Cornelius『Mellow Waves

Mellow Waves

Mellow Waves

2.Syd『FIN.』

Fin

Fin

3.Matt Martians『The Drum Chord Theory』

The Drum Chord Theory [Explicit]

The Drum Chord Theory [Explicit]

4.Tyler The Creator『Scum Fuck Flowerboy』

Scum Fuck Flowerboy

Scum Fuck Flowerboy

5.The XX『I See You』

6.Yumi Zouma『Willowbank』

WILLOWBANK

WILLOWBANK

7.サニーデイ・サービスPopcorn Ballads』

Popcorn Ballads

Popcorn Ballads

8.Vince Staples『Big Fish Theory』

BIG FISH THEORY [CD]

BIG FISH THEORY [CD]

9.Baio『Man Of The World』

MAN OF THE WORLD

MAN OF THE WORLD

10.Alvvays『Antisocialites』

Antisocialites

Antisocialites

11.Sohn『Rennen』

Rennen [輸入盤CD](CAD3708CD)

Rennen [輸入盤CD](CAD3708CD)

12.Charlotte Gainsbourg『Rest』

Rest

Rest

13.Peaking Lights『Fifth State of Conscio』

FIFTH STATE OF CONSCIO

FIFTH STATE OF CONSCIO

14.Jamiroquai『Automaton』

Automaton

Automaton

15.The Priests『Nothing Feels Natural』

Nothing Feels Natural

Nothing Feels Natural

16.Thundercat『Drunk』

Drunk

Drunk

17.Flo Morrissey and Mathew E. WHITE『Gentlewoman, Ruby Man

Gentlewoman, Ruby Man

Gentlewoman, Ruby Man

18.Fever Ray『Plunge』

Plunge [Explicit]

Plunge [Explicit]

19.Frankie Rose『Cage Tropical』

Cage Tropical

Cage Tropical

20.Beck『Colors』

COLORS [CD]

COLORS [CD]

21.Arca『Arca』

ARCA[輸入盤CD](XLCD834)

ARCA[輸入盤CD](XLCD834)

22.Trevor Sensor『Trevor Sensor』

SENSOR, TREVOR

SENSOR, TREVOR

23.Big Thief『Capacity』

CAPACITY

CAPACITY

24.Metz『Strange Peace』

Strange Peace

Strange Peace

25.Jay Som『Everybody Works』

Everybody Works

Everybody Works

26.Haim『Something to Tell You』

SOMETHING TO TELL YOU [CD]

SOMETHING TO TELL YOU [CD]

27.Oh Wonder『Ultralife』

ULTRALIFE

ULTRALIFE

28.Sampha『Process』

Process[輸入盤CD](YTCD158)

Process[輸入盤CD](YTCD158)

29.Steve Lacy『Steve Lacy´s Demo』

Steve Lacy's Demo [Explicit]

Steve Lacy's Demo [Explicit]

30.Philip Selway『Let Me Go OST

Let Me Go Ost

Let Me Go Ost

31.FKJ『French Kiwi Juice』

French Kiwi Juice

French Kiwi Juice

32.Kllo『Backwater』

Backwater

Backwater

33.Black Kids『Rookie』

ROOKIE

ROOKIE

34.Kendrick Lamer『Damn』

Damn

Damn

35.Loyle Carner『Yesterday´s Gone』

Yesterday's Gone

Yesterday's Gone

36.Johnny Jewel『Windswept』

Windswept

Windswept

37.SlowdiveSlowdive

SLOWDIVE

SLOWDIVE

38.OST『La La Land』

Ost: La La Land

Ost: La La Land

39.Mount Kimbie『Love What Survives』

Love What Survives

Love What Survives

40.Dirty ProjectorsDirty Projectors

Dirty Projectors

Dirty Projectors

41.Nite Jewel『Real High』

Real High

Real High

42.Phoebe Bridgers『Stranger in the Alps』

Stranger in the Alps

Stranger in the Alps

43.Japanese Breakfast『Soft Sound from Another Planet』

SOFT SOUNDS FROM ANOTH

SOFT SOUNDS FROM ANOTH

44.Moses Sumney『Aromanticism』

Aromanticism

Aromanticism

45.Ariel Pink『Dedicated to Bobby Jameson』

Dedicated to Bobby Jameson

Dedicated to Bobby Jameson

46.Golden Teachers『No Lucious Life』

No Luscious Life

No Luscious Life

47.Ronald Bluener Jr.『Triumph』

48.Broken Social Scene『Hug of Thunder』

Hug of Thunder

Hug of Thunder

49.Suchmos『The Kids』

THE KIDS(通常盤)

THE KIDS(通常盤)

50.Zoot Woman『Zoot Woman』

ZOOT WOMAN

ZOOT WOMAN


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2018-01-01 2017年ベストシネマ

[]2017年ベストシネマ

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新年あけましておめでとうございます。さて、2017年松本俊夫特集上映のパンフレットに書かかせていただいたことがホントに幸せで、自分が書いたことは必ず自分に返ってくることを知る、その跳ね返りの繰り返しの中にいることが喜びでした。何よりそれこそが松本俊夫の映画だよね、と。文章どうこうの話ではなく、これからの日常レベルで自分が成長できる経験だったと思います。とても楽しい一年でした。2016年のベスト1に選んだベルトラン・ボネロ『ノクトラマ』が未だ公開されてないことは寂しいかぎりですが。というわけで以下に2017年のリスト。


1.『ベイビー・ドライバー』(エドガー・ライト

Baby Driver/Edger Wright

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2.『バンコクナイツ』(富田克也

Bankoknites/Katsuya Tomita

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3.『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ

20th Century Women/Mike Mills

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4.『ゴースト・ストーリー』(デヴィッド・ロウリー)

A Ghost Story/David Lawrey

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5.『マリアンヌ』(ロバート・ゼメキス

Allied/Robert Zemeckis

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6.『ノクターナル・アニマルズ』(トム・フォード

Nocturnal Animals/Tom Ford

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7.『ロスト・シティ・オブ・Z』(ジェームズ・グレイ

The Lost City Of Z/James Grey

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8.『パターソン』(ジム・ジャームッシュ

Paterson/Jim Jarmusch

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9.『散歩する侵略者』/『予兆 散歩する侵略者』(黒沢清

Before We Vanish/Kiyoshi Kurosawa

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10『ダンケルク』(クリストファー・ノーラン

Dunkirk/Christpher Nolan

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11.『John From』(Joao Nicolau)

John From/Joao Nicolau

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12.『Logan/ローガン』(ジェームズ・マンゴールド

Logan/James Mangold

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13.『Summer 1993』(カーラ・サイモン)

Summer 1993/Carla Simon

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14.『Chez Nous』(リュカ・ベルヴォー)

Chez Nouz/Lucas Belvaux

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15.『婚約者の友人』(フランソワ・オゾン

Frantz/Francois Ozon

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16.『南瓜とマヨネーズ』(冨永昌敬

Pumpkin and Mayonnaise/Masataka Tominaga

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17.『ルイ14世の死』(アルベルト・セラ)

La Mort de Louis XIV/Albert Serra

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18.『ブレードランナー 2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ

Blade Runner 2049/Denis Villeneuve

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19.『ラ・ラ・ランド』(デイミアン・チャゼル)

La La Land/Damien Chazelle

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20.『ダーク・ナイト』(ティム・サットン

Dark Night/Tim Sutton

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1位は合計4回も映画館に駆けつけてしまった『ベイビー・ドライバー』。ロマンチック!に尽きる。2位も3時間超えの長尺にも関わらず連続で見てしまった『バンコクナイツ』。富田監督は体で映画を撮ることで表面的な原理を超え、本当の意味で映画の原理に接近し得たのだと思う。こんなにスケールの大きな日本映画は他のどこにもない。賛否分かれる『ラ・ラ・ランド』は、「アナザー・デイ・オブ・サン」が突き抜けて素晴らしい楽曲なので、もうそれだけでオーケー。どれだけ繰り返し聴いたことか。何よりこんなに始まる前にドキドキが止まらなかった映画は久しぶりだった。


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Planetarium/Rebecca Zlotowski

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Reparer les Vivants/Katell Quillevere

他、『ジャッキー』(パブロ・ラライン)、『あさがくるまえに』(カテル・キレヴィレ)、『プラネタリウム』(レベッカ・ズロトヴスキ)が強く心に刻まれた作品。『あさがくるまえに』の若い恋人たちの出会いのシーンは今年一好きかもしれない。『プラネタリウム』のリリー・ローズ・デップという特別な女優の誕生をナタリー・ポートマンが仕掛けた、というエピソードは今後語り継がれることでしょう。どれも大好きな作品です。『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(ティム・バートン)と『ネオン・デーモン』(ニコラス・ウィンディング・レフン)は昨年のリストに入れたので対象外にしました。見逃した作品で後悔してるは『ネルーダ』(パブロ・ラライン)、『女神の見えざる手』(ジョン・マッデン)。絶対入れたかった『ツイン・ピークス The Return』(デヴィッド・リンチ)、『ストレンジャー・シングス シーズン2』(ダフィー兄弟)は、まだ全部見れてないのです。昨年のリストは以下に。


http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20170102#p1


未公開の作品の補足。『ゴースト・ストーリー』はヴァージニア・ウルフの言葉に導かれる極めて美しい作品。予想通りルーニー・マーラの快進撃はここでも止まらない。そしてデヴィッド・ロウリー、映画作家としてめちゃくちゃ攻めてます。ジェームズ・グレイ渾身の傑作『ロスト・シティ・オブ・Z』とこれは公開されるでしょう。Joao Nicolauはミゲルゴメス『自分に見合った顔』に出演、同じくミゲルゴメスの素晴らしい『贖罪』の編集に関わった経歴の持ち主。女の子の撮り方を少し見ただけでだけで、この作家に興味が持てるはず。カーラ・サイモン『Summer 1993』は徹底した自然主義の撮影で、少女の「言葉以前の言葉」が捉えられる。感情が言葉として整理される前の状態について考えさせられる上に、胸を打つ。リュカ・デルヴォーの『Chez Nous』は、『BPM』(ロバン・カンピヨ)と共に、あるいはそこにベルトラン・ボネロ『ノクトラマ』を加えてもいいのだけど、三者三様のポリティカルな運動の背景を思う。つまり現在の映画。『ダーク・ナイト』は賛否両論の作品。ガス・ヴァン・サントエレファント』の素晴らしさがこの作品の評価を難しくする。ガス・ヴァン・サントはカラカラに渇いてるようで、もっとウェット。ティム・サットンは極めてドライ。前作『メンフィス』の霊歌としてのソウルが、ここでもアメリカの空に反響しているように思う。ティム・サットンアメリカという霊歌の作家。


そして今年最大のハイライト青山真治監督&宮崎あおいトーク付きで『ユリイカ』に再会できたことです。ちょっとこの特別な体験は自分の中で大切すぎて語れない。『ユリイカ』のバスの旅と、『ユリイカ』を初めて見たとき以降の自分の人生の旅が、スクリーンという共有体験の時間の中でゆっくりと重なっていく、そんな体験でした。涙が止まらなかった。この作品の上映を選んでくれた宮崎あおいに感謝。ご結婚おめでとうございます。


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Eureka/Shinji Aoyama

2017-12-14 筒井武文『映像の発見=松本俊夫の時代』パンフレット

[]筒井武文『映像の発見=松本俊夫の時代』パンフレット

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先週末よりイメージフォーラムで上映中の『松本俊夫 ロゴスカオスのはざまで/映像の発見=松本俊夫の時代』のパンフレットに5作品の論考を寄稿させていただきました。素晴らしい作品はどの時代、どの年齢で見たって、その価値は普遍である。ということを大前提として言いますが、それでも『薔薇の葬列』をはじめ、松本俊夫の作品群を20歳くらいのときに体験できたことは心から幸福なことだったと思っています。松本俊夫を知らない人生なんて、ちょっと考えられないくらいに。今回原稿を書くにあたって劇映画全作品と可能な限りの実験映画を再見しましたが、20歳くらいの頃に受けた鮮烈な体験が、というより、そことの距離こそが「発見」として真新しい強度を帯びていくのが分かりました。松本俊夫の作品に触れるということは、そういうことなんだよ。常に変容と共にある。と同時に、松本俊夫の作品を語ることの難しさも痛感しながら。松本俊夫という巨大な「像」を前に、筒井監督が途方に暮れてしまった、と語る気持ちが痛いほどわかるというか。手に負えない感、凄いです(笑)。でもこういう作品群だからこそ、20歳くらいの頃に夢中になる必要があると心から思います。自分がそうであったように感じてくれたなら嬉しいです。『薔薇の葬列』で引用されるボードレールの詩を引用するなら「我、傷口にして刃 いけにえにして刑吏」。『薔薇の葬列』の中で、作品から受ける衝撃の中で、やがて歳を重ねていく過程で、それがどう変容していくかは、若い頃に体験していなければ決して分からない。余談ですが、原稿を書いている途中、東京国際映画祭で『ユリイカ』を青山真治監督と宮崎あおいトーク付きで体験できたのは、2017年最大のハイライトでした。ちょうど松本俊夫の作品に夢中になっていた頃、完璧にやられてしまった映画。宮崎あおいは涙が止まらなかったそうですが、自分も涙が止まらなかったです。何かの巡り合わせだと感じました。人生はうまくできています。


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パンフレットに掲載させていただいた論考は5本。書くために仮のタイトルを作ったのですが、そこまで採用してくれてありがとうございます。


・「少年の幻視した時代」(筒井武文『映像の発見=松本俊夫の時代』論)

・「記憶/記録の増大」(松本俊夫『修羅』論)

・「モナ・リザパンチドランク」(松本俊夫十六歳の戦争』論)

・「記録映画のエモーション」(松本俊夫『西陣』論)

・「発光体としての映画」(松本俊夫『つぶれかかった右眼のために』論)


松本俊夫の作品に関しては解説を、ということでしたが、好きに書いていいとのことですべて論考のつもりで書きました。この160頁にも及ぶパンフレットプロデューサーの羽田野直子さんのやりたい放題が結実した、わがままサイズの素晴らしいパンフレットです。こんな贅沢な試みがこの時代に出来るということは驚きでしかない。筒井監督と宇川直宏さん(宇川さんの語り、好きなんです。菊地成孔さんの語りと共に昔から大ファンです)、中原昌也さんの対談がボリュームたっぷり読めるという。それでいて、『映像の発見=松本俊夫の時代』という700分超えの作品、及び、松本俊夫の全体像をサポートする決定版、家宝版と言っていいでしょう。自分が関わっているとか関係なく、松本俊夫のファンとしてとても興奮しています。そして何より松本俊夫の作品群と『映像の発見=松本俊夫の時代』を見てほしい。偉大な才能を知ること以上に、一生に渡って関わっていく問いそのものがそこにはあるから。自分も生涯に渡って追いかけていきたいなと思いました。追いかけても追いつけない悦びというかね。思えば松本俊夫の残した作品自体が、そういった非決定性の連続で出来ているんじゃないかと思います。安心よりも絶えず揺さぶられること、心をかき乱されることを望んで選ぶすべての同志へ。選択とは強い意思のことです。


原稿を書く機会を与えてくださったことにこの場を借りてお礼させてください。ありがとうございました。


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追記*『映像の発見=松本俊夫の時代』に出てくる記録映画『春を呼ぶ子ら』はホントぶっ飛びますよ。

2017-06-12 『20th Century Women』/Mike Mills

[]『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ/2016)

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感傷的な気持ちに身を任せると

星の明かりが部屋に差し込んでくる

あなたの愛に満ちたやさしさは

まるで暗闇を照らす炎のよう

「In a Sentimental Mood」


スーパーマーケットの駐車場で燃え上がるフォード・ギャラクシー。少年ジェイミーが生まれたとき家まで運んだ父の車が炎上するシーンから『20センチュリー・ウーマン』は始まる。劇中で使用されるザ・レインコーツの曲名「スーパーマーケットのおとぎ話"フェアリーテイル・イン・ザ・スーパーマーケット"」に倣う出発点を持つこの作品は、車の炎上=父の消失〜母親の物語、正確には複数の「母親」の物語への移行を、守られた迷い子の歩みのように表象する。ちょうどスケートボードに乗ったジェイミーの後ろを車からやさしい眼差しで追う母ドロシアの庇護のように。ドロシアの誕生日パーティーではベニー・グッドマンのバージョンの「イン・ア・センチメンタル・ムード」が木調の家に懐かしく響くだろう。この曲はデューク・エリントンが亡くなった母親に捧げたインストゥルメンタルとして知られる(歌詞はその後付けられたもの)。この作品において、2つのジャズ・スタンダードの響きは、1979年を彩る刺激的なポップミュージックと共に、基調となるおおらかな響きを持つことになる。


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そう、マイク・ミルズは『20センチュリー・ウーマン』において、「響き合い」の生まれる瞬間を丁寧に掬いとる。登場人物が誰かに発した言葉は、発信者である本人に全力で跳ね返ってくる。全力でぶつけた言葉が失敗も含めて全力で返ってくる様を、私たちは何度も目撃する。マイク・ミルズは、その切実さの中にこそ関係性=映画が生まれるのだと信じている誠実な映画作家だ。息子ジェイミーを怒ったあとに泣いてしまうドロシアに。妊娠が困難になったアビーから「子供を持つことは人生の最大の経験だった?」という質問を受け、即答でイエスと答えた後すぐに「ごめんなさい」と謝るドロシアのやさしさに。「あの頃の私は生意気で、いつもイライラしていて、、、とてもハッピーだった!」と過去を振り返るアビーの独白に。「10代の頃聴いていれば、もっと楽になれたと思う」曲たちをジェイミーに聴かせ踊るアビーに。いつも二階の窓から登場(!)し、ジェイミーと添い寝するジュリーに。自分の言ったこと、したことの現在への反響が切実に迫ってくる。ここにあの素晴らしい『ビギナーズ』のTシャツの言葉を思い出す。「My personality was created by someone else」。そして、そんな大好きな彼女たちから、「女性」についていろんなことを学びたい少年ジェイミー。「いい男になりたい」とジェイミーは願い、学び、実行し、失敗する。ジェイミーに限らず、実行と失敗を繰り返し描くところにこそ、マイク・ミルズの「響き合い」はある。


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スケートボードに乗ったジェイミーを後ろから車で追うドロシアのショットには、保護者であるのと同時に、息子の成長に追いつけない(ジェイミーがどんどん離れていく)母親の悲しみが表されている。『20センチュリー・ウーマン』が感動的なのは、ジェイミーの急激な成長に手を焼くドロシアの反応をジェイミーが待っている、その瞬間をショットとしてきっちり捉えているところだ。わざと母親を挑発することを言った後、自分の欲しい答えを待っているジェイミーの迷子のようなリアクションを見逃してはならない。ジェイミーは母親の真実を待っている。「ウソはダイアログに。真実は風景に。」とはケリーライヒャルトの言葉だが、こういう一面的でない演出が出来る映画作家を私は心から信じる。だからこそ、「母さんがいれば僕は大丈夫」と伝える二人のシーンに、嗚咽のように泣いてしまう。たった一度だけ。ジェイミーが髪をドロシアにブリーチしてもらってからの、たった一度だけの真実でこの映画はかけがえのないものになる。


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映画館を巡る旅の記録をエッセイ風に仕上げたマイク・ミルズの短編『So Many People』(こういう作品をたくさん撮っている)では、各地の劇場のお客さんがカメラに向かって「ハーイ!」と笑顔で応えるショットが地名と共に繰り返される。見ているこっちが思わず笑顔になってしまうようなユーモア溢れる作品なのだけど、モノクロで捉えられたこれらの風景は、いつの時代の何処だろうと、人々の笑顔、喜びを表すときの感情に変わりがないことを示している。マイク・ミルズは『20センチュリー・ウーマン』において、時代の変化によって移ろい、変わっていく人々を描くのと同時に、いつの時代も変わらない、とどまり続ける感情を描く。「イン・ア・センチメンタル・ムード」で、母親の誕生日を祝福したように、この映画のもう一つのジャズ・スタンダード「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」は、謎めいた大好きな母親、大好きな女の子たちへ贈る最高の「響き」だ。


これだけは心に留めていてほしい

キスはキスであり、ため息はため息だ

恋の基本はいつの時代にも当てはまる

いくら時が流れようと

「As Time Goes By



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2017年を代表する大傑作!ありがとう、マイク・ミルズ

http://www.20cw.net/sp/index.php

2017-01-30 『Jackie』/Pablo Larrain

[]『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(パブロ・ラライン/2016)

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『Jackie』


『ジャッキー』に寄せられた言葉で、ナタリー・ポートマンがインタビューで語った言葉に敵う批評はありえない。曰く、「聡明なジャクリーンは自分が記者に語る言葉がそのままアメリカの物語になることを知っていた」。そう、『ジャッキー』はジャクリーン・ケネディの辿った数奇な運命よりも、彼女の創り出したアメリカの「物語」に光を当てる。大衆の目の前に出るためにリハーサルを重ね、鏡の前で有名なピンクのシャネルのスーツを着て本番に向かうジャクリーンの姿。バレンタインデーに全米で放映された、ジャクリーンがホワイトハウスを紹介する『ホワイトハウス・ツアー』(ホワイトハウスはジャクリーンによって内装を一新。新しいアメリカの理想のイメージを提示した。監督は後に『猿の惑星』を撮るフランクリン・J・シャフナー)の撮影のために、秘書のナンシー・タッカーマン(グレタ・ガーウィグ)と台詞の合わせ読みを繰り返すジャクリーン。新しいアメリカのイメージのために演技をするジャクリーンと、そんな彼女を完全に理解した上で演じるナタリー・ポートマンの凌ぎ合いこそが『ジャッキー』を特別な映画にしている。ファーストショットからどうしようもなく「女優」を感じさせるナタリー・ポートマンの素晴らしさ。『ジャッキー』はジャクリーン・ケネディという伝説のヒロインを描いた映画に留まらず、ナタリー・ポートマンという聡明で偉大な女優を描いたドキュメンタリーでもあるのだ。


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『Jackie』


実際の『ホワイトハウス・ツアー』を見れば分かるとおり、この作品のためにジャクリーンのあらゆる映像や音声に触れたというナタリー・ポートマンの声(声色、発音、アクセント!)の憑かれぶりには鳥肌が立つほど驚かされるが、何より素晴らしいのは、ジャクリーンの亡霊を捕まえようとするナタリー・ポートマンをこの作品が捕まえていることだろう。この作品で強く印象に残るショットは、前半のほぼアップで迫るジャクリーンの悲哀を堪えた顔と、大きめの空間を彷徨う姿を後方から捉えた、ジャクリーンの幽霊のような歩行だ。それはジャクリーンがイメージによって描いた光り輝くアメリカの物語(ジャクリーンの語るところの「キャメロット」=王国)と対を成す、喪のイメージであり、その対照的な光のトーンの変化がジャクリーンの肖像を立体的に浮かび上がらせる。


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『Jackie』


パニックになったジャクリーンが狙撃によって飛び散ったケネディの肉片をかき集めて、シークレットサービスが大統領夫妻を守るため車によじ登るーーーケネディが暗殺されたときの映像を思い浮かべることのできる私たちは、あの時、あの車が止まらずにそのまま走り続けていた風景までは知らない。『ジャッキー』におけるジャクリーンの彷徨は、「キャメロット」というイメージを作り出してきた彼女の王国が崩れていく、足を失った心象風景であり、対照的に葬列さえもが「キャメロット」という王国を維持しようとしたジャクリーンの聡明なるイメージ=演技の選択なのだ。その演技は想像を絶する悲しみの上に成り立っている。「キャメロット」という王国を去る際にグレタ・ガーウィグが無言で語りかける仕草。カメラの前で演技をすることそのものに向けられたそのオマージュを思い出し、静かに黙祷を捧げる。演技というものが、怒りや悲しみの上に成り立っていることに。


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『Jackie』


『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』は3月31日公開。

http://jackie-movie.jp


追記*オリバー・ストーンの『JFK』とエミリオ・エステベスの『ボビー』は自分の中でもJFK映画の大・大・大・金字塔。ここに『ジャッキー』が加わることの豊穣さ。記事で触れたジャクリーンが案内する『ホワイトハウス・ツアー』はYoutubeで見れます。『ジャッキー』見たあとに見るのがいいです。ミカチュー(Mica Levi)による劇伴は、劇中のグレタ・ガーウィグ(本当に賞賛すべき名演だと思う)やジョン・ハート(追悼!)のように、どこまでもサポートアクトに徹してて素晴らしい。

ボビー BOBBY  [DVD]

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Jackie

Jackie