Hatena::ブログ(Diary)

maplecat-eveの日記

2018-06-05 『Isle of Dogs』

[]『犬ヶ島』(ウェス・アンダーソン/2018)

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友達にはなれないけど、大好きだ」(スポッツ)


犬ヶ島』において、少年アタリとボディーガード犬スポッツ、そして新たな相棒犬チーフはいまにも泣き出しそうな瞳をスクリーンに何度も浮かべる。口笛による木霊が人と犬の交感(この木霊は開巻早々、劇中にサラウンドする)を言葉以上に響かせる、否、震わせるとき。翻訳トランシーバーによってお互いの言葉が通じ合うとき。決まって彼らの瞳は涙で潤んでいる。そこにはお互いに友達にはなれないけど、大好きであることを伝えたい原始的な感情と感動が、涙という表象言語として、言葉以上にお互いを震わせている。その意味において、小林市長が繰り返す上っ面な「リスペクト」という言葉が、やがて色彩を得ていくのは感動的だ。『犬ヶ島』は、口笛による木霊の反響、メロディーの反復=お互いの共感に至る過程の間に生まれ、そこで振るい落とされてしまったものを再び拾い集める。


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Megasaki City - Isle of Dogs

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Tokyo Imperial Hotel - Frank Lloyd Wright


犬ヶ島』のプロダクション・デザインを手掛けたポール・ハロッドはインタビューの中でフランク・ロイド・ライト(メガ崎御霊神社は旧帝国ホテル本館をモデルにしている✳画像参照)の他に、日本のメタボリズム建築から強い影響を受けたことを語っている。日本の高度経済成長期に華開き、大阪万博で頂点を迎えたメタボリズム建築と『犬ヶ島』で設定された「現在=過去から見た未来」という時代設定の幸福な出会い。メタボリストたちの唱えた建築の「有機性」の定義はそれぞれだが、その定義を都市の成長、生命の成長に適合する建築、未来との共生を志向する建築と捉えたとき、『犬ヶ島』の志向する「有機性」と重なり合っていく。黒澤明どですかでん』〜高度経済成長期の夢の島をモデルにしたと思われるゴミ島に犬が隔離されるのは、未来を排除によってデザインしようとした(都会の増えつづけるゴミを夢の島に廃棄したように)政治と重なる。犬は都市計画という未来(しかし未来とは現在のことだ)から排除されてしまったのだ。このゴミ島が、かつて未来をデザインするために計画され失敗した島であることに注視したい。ウェス・アンダーソンは失敗を失敗で上塗りしていく歴史に待ったをかける。スクラップされた瓦礫の山から始めるゼロ地点からのスタートではなく、それさえ含んだ過去現在未来を共生させる都市計画として『犬ヶ島』をデザインする。振るい落とされたものを再び拾い集め、共生する未来を描く、という選択


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Dodesukaden - Akira Kurosawa

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Isle of Dogs


ムーンライズ・キングダム』〜『グランド・ブダペスト・ホテル』において、現れてはすぐに消えてしまう幻影として記憶を留めた(故に美しい)ウェス・アンダーソンは、『犬ヶ島』でついに記憶を未来と共生させる。劇中、スポッツが父親になるという未来を選んだように、ここにはウェス・アンダーソン自身が父親になったことも大きく影響しているのかもしれない。個人的にはスポッツの台詞/選択は本作で一番感動したシーンだ。スポッツとチーフの鏡像関係が分割画面、加えて、モニターによる分裂画面とでも言いたくなるような展開が巻き起こるアクション、その速度は、あまりに痛快だ。こういった部分にも、全てを同じ画面で共生させようとするウェス・アンダーソンの未来への計画が読み取れるかもしれない。マスタープランからポスト・マスタープランへ。ウェス・アンダーソンのネクストは、幻影を幻影と呼ばせない。そこには新しい未来=現状への覚悟がある。分かりあえない者同士が原始的な感情だけを頼りに分かりあえないまま画面に共生する。『犬ヶ島』はハードボイルドな輪郭を持った未来的建築物なのだ。大傑作。


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追記✳ウェス・アンダーソン犬ヶ島』とショーン・ベイカー『フロリダ・プロジェクト』、トッド・ヘインズワンダーストラック』という2018年を代表する傑作群は個人的には「ジオラマ」というキーワードで繋がっている。最終的にジャック・タチの偉大なる『プレイタイム』を見直した。


追記2✳ウェス・アンダーソンの娘さんの名前は、フランク・ボーゼージ『死の嵐』(1940)のヒロイン、フレヤからとったとのこと。『チャップリンの独裁者』以前に公開されたこの反ナチス映画の傑作のヒロインにウェスが惹かれているということに妄想が広がります。

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追記3✳参考のために見た大阪万博の残された映像は完全にロマンティックな狂い方だと思った(笑)。もうホント狂ってる。ドキュメンタリーが見たい。そしてこのメタボリズムに関する本は面白すぎます。夢中になって読んだ。


追記4✳ポール・ハロッドのインタビューはこちら。

https://www.dezeen.com/2018/03/28/wes-anderson-isle-of-dogs-sets-metabolist-architecture-paul-harrod-interview/


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2018-05-24 『The Florida Project』

[]『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(ショーン・ベイカー/2017)

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いったいどうやって撮ったんだ!?ロングショットが意外と多いのに、やけに密着感、親密感が残るのは、ギャー!とかイェー!とかウォー!とか、セレブレーション、カモン!よろしく、ハイテンションな子供たちを笑いながら見ている自分の視線がまるごとこの子たちに同化してしまうからなのか。『フロリダ・プロジェクト』の奇跡/軌跡をまるごと呑み込んだ末に残るのは、この子供たちが撮影が終わって、はい、解散、というよく出来たフィクションのフレームに収まらないどころか、この作品を体験(というより、体感という言葉の方がこの傑作にはふさわしい)した者とこの子供たちがたったいま同じ世界を生きている、同じ空気を吸っている、手を伸ばせばすぐに手を取り合うことさえできてしまえることへの確かな輪郭を持った感情だ。この作品に感銘を受けた者は『フロリダ・プロジェクト』という作品、そしてこの作品を手掛けたショーン・ベイカーや何よりムーニーちゃんと、がっちり握手を交わさずにはいられないだろう。ショーン・ベイカーは子供たちをフィクションの中に閉じ込めない。おとぎ話や絵本の中に閉じ込めない。予め準備された結論の中に閉じ込めない。『フロリダ・プロジェクト』は子供に憧れた大人の撮った映画ではないのだ。根っからのインディーズ映画作家KENZO&アビー・リーと組んだ『Snowbird』は上手くいっているといえるだろうか?)であり、ジョン・カサヴェテスエリック・ロメールを尊敬するショーン・ベイカーは、子供たちの遊びと共にある作品を志向/試行することで、あくまでショーン・ベイカー手法として彼の尊敬する映画作家の作品に刻まれた性質に近づく。たとえばアパートの階段の下は子供たちだけが集まれるスペースであり、大人がそこにいることはない。そういった出発点が既に作品、そして被写体へのヴィジョンを提示している。すべてが子供たちとのその場のチャレンジであることによって近似値を呼ぶ唯一の映画は、フランソワ・トリュフォーの撮った傑作『トリュフォー思春期』だろう。『トリュフォー思春期』の冒頭で大勢の子供たちが駆け抜ける幸福なシーン。そして小さな子がアパートから猫を落とそうとする危なっかしいシーン。ハラハラ見守るこちらの気持ち。『フロリダ・プロジェクト』は、ああいった瞬間の連続で出来ている。なによりジョイフルであることは、何故にこれほどまで胸がはち切れそうになることなのか。


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ショーン・ベイカーはハル・ローチの手掛けた『ちびっこギャング』に強く影響を受けたことを公言しているが、この荒唐無稽のサイレント〜初期トーキー期のコメディーと1994年リメイクされた『ちびっこギャング』を比べたとき、時代の移り変わりによって生まれたもの、失ったものの間にこそ『フロリダ・プロジェクト』の志向/試行はある。オリジナル『ちびっこギャング』のアクション重視な荒唐無稽のドタバタ劇に憧れながら、リメイク版『ちびっこギャング』のような大人が子供をコントロールしたウェルメイド感(とはいえ、楽しい作品です)からは、どこまでも遠く離れる。どれも演出された結果であるにも関わらず、『フロリダ・プロジェクト』だけが生活のドキュメントに肉薄しているのは、ショーン・ベイカー自らが大人によって整備された環境に身を投じなかったことによるのだろう。むしろ整備された環境から振り落とされた人たちの中に、行き当たりばったりの生活(そして演出)の中にこそ、ドキュメントは生まれる。ここに前作『タンジェリン』の「嘘ばかりで出来てる街」という台詞を思い出す。フロリダの空や、ピンク色のモーテル、この世界自体が嘘みたいな作り物で、そこには喜びと反転するように悲しみが溢れている。反転は一瞬のスピードで起こる。だからこそ美しい。仰角で撮られたフロリダの空は意外や曇っていて、舗道は雨で濡れていたりさえするのだけど、その反面、廃墟の窓から覗く空は清々しいほど青い空で、目隠しを外せば嘘みたいに感動的な空にだって会えてしまう。嘘みたいなバカ騒ぎ。嘘みたいな眩しさ。過剰にジョイフルであることは悲しいくらいに反転する。裏と表がなくなる。アーシア・アルジェントみたいなタトゥーを入れた素敵なママ(ブリア・ヴィネイト)が、子供たちのバカ騒ぎの果てに記念の写メを撮る。その時、切り取られたムーニーちゃんの表情をどうか見逃さないでほしい。


とんでもない傑作が生まれた。セレブレーション、カモン!この作品が生まれたことに祝福を!


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The Florida Project


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Small Change


ちびっこギャング [DVD]

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2018-01-02 2017年ベスト 50枚 〜音楽編〜

[]2017年 ベスト50枚 〜音楽編〜

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2017のベストトラックはコーネリアス『夢の中で』。浮上するわけでも潜行するわけでもない幽体離脱の夢の弾け方。ヴァンパイア・ウィークエンドのBaioの「Sensitive Guy」は毎朝目覚めの1曲でした。ライブは最愛のバンドWarpaintに行けたこと。どれだけこの日を待ったことか。Yumi Zoumaは毎年の恒例行事になりつつあるね。素晴らしいことです。以下、よく聴いた50枚のリスト。


1.Cornelius『Mellow Waves

Mellow Waves

Mellow Waves

2.Syd『FIN.』

Fin

Fin

3.Matt Martians『The Drum Chord Theory』

The Drum Chord Theory [Explicit]

The Drum Chord Theory [Explicit]

4.Tyler The Creator『Scum Fuck Flowerboy』

Scum Fuck Flowerboy

Scum Fuck Flowerboy

5.The XX『I See You』

6.Yumi Zouma『Willowbank』

WILLOWBANK

WILLOWBANK

7.サニーデイ・サービスPopcorn Ballads』

Popcorn Ballads

Popcorn Ballads

8.Vince Staples『Big Fish Theory』

BIG FISH THEORY [CD]

BIG FISH THEORY [CD]

9.Baio『Man Of The World』

MAN OF THE WORLD

MAN OF THE WORLD

10.Alvvays『Antisocialites』

Antisocialites

Antisocialites

11.Sohn『Rennen』

Rennen [輸入盤CD](CAD3708CD)

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12.Charlotte Gainsbourg『Rest』

Rest

Rest

13.Peaking Lights『Fifth State of Conscio』

FIFTH STATE OF CONSCIO

FIFTH STATE OF CONSCIO

14.Jamiroquai『Automaton』

Automaton

Automaton

15.The Priests『Nothing Feels Natural』

Nothing Feels Natural

Nothing Feels Natural

16.Thundercat『Drunk』

Drunk

Drunk

17.Flo Morrissey and Mathew E. WHITE『Gentlewoman, Ruby Man

Gentlewoman, Ruby Man

Gentlewoman, Ruby Man

18.Fever Ray『Plunge』

Plunge [Explicit]

Plunge [Explicit]

19.Frankie Rose『Cage Tropical』

Cage Tropical

Cage Tropical

20.Beck『Colors』

COLORS [CD]

COLORS [CD]

21.Arca『Arca』

ARCA[輸入盤CD](XLCD834)

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22.Trevor Sensor『Trevor Sensor』

SENSOR, TREVOR

SENSOR, TREVOR

23.Big Thief『Capacity』

CAPACITY

CAPACITY

24.Metz『Strange Peace』

Strange Peace

Strange Peace

25.Jay Som『Everybody Works』

Everybody Works

Everybody Works

26.Haim『Something to Tell You』

SOMETHING TO TELL YOU [CD]

SOMETHING TO TELL YOU [CD]

27.Oh Wonder『Ultralife』

ULTRALIFE

ULTRALIFE

28.Sampha『Process』

Process[輸入盤CD](YTCD158)

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29.Steve Lacy『Steve Lacy´s Demo』

Steve Lacy's Demo [Explicit]

Steve Lacy's Demo [Explicit]

30.Philip Selway『Let Me Go OST

Let Me Go Ost

Let Me Go Ost

31.FKJ『French Kiwi Juice』

French Kiwi Juice

French Kiwi Juice

32.Kllo『Backwater』

Backwater

Backwater

33.Black Kids『Rookie』

ROOKIE

ROOKIE

34.Kendrick Lamer『Damn』

Damn

Damn

35.Loyle Carner『Yesterday´s Gone』

Yesterday's Gone

Yesterday's Gone

36.Johnny Jewel『Windswept』

Windswept

Windswept

37.SlowdiveSlowdive

SLOWDIVE

SLOWDIVE

38.OST『La La Land』

Ost: La La Land

Ost: La La Land

39.Mount Kimbie『Love What Survives』

Love What Survives

Love What Survives

40.Dirty ProjectorsDirty Projectors

Dirty Projectors

Dirty Projectors

41.Nite Jewel『Real High』

Real High

Real High

42.Phoebe Bridgers『Stranger in the Alps』

Stranger in the Alps

Stranger in the Alps

43.Japanese Breakfast『Soft Sound from Another Planet』

SOFT SOUNDS FROM ANOTH

SOFT SOUNDS FROM ANOTH

44.Moses Sumney『Aromanticism』

Aromanticism

Aromanticism

45.Ariel Pink『Dedicated to Bobby Jameson』

Dedicated to Bobby Jameson

Dedicated to Bobby Jameson

46.Golden Teachers『No Lucious Life』

No Luscious Life

No Luscious Life

47.Ronald Bluener Jr.『Triumph』

48.Broken Social Scene『Hug of Thunder』

Hug of Thunder

Hug of Thunder

49.Suchmos『The Kids』

THE KIDS(通常盤)

THE KIDS(通常盤)

50.Zoot Woman『Zoot Woman』

ZOOT WOMAN

ZOOT WOMAN


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2018-01-01 2017年ベストシネマ

[]2017年ベストシネマ

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新年あけましておめでとうございます。さて、2017年松本俊夫特集上映のパンフレットに書かかせていただいたことがホントに幸せで、自分が書いたことは必ず自分に返ってくることを知る、その跳ね返りの繰り返しの中にいることが喜びでした。何よりそれこそが松本俊夫の映画だよね、と。文章どうこうの話ではなく、これからの日常レベルで自分が成長できる経験だったと思います。とても楽しい一年でした。2016年のベスト1に選んだベルトラン・ボネロ『ノクトラマ』が未だ公開されてないことは寂しいかぎりですが。というわけで以下に2017年のリスト。


1.『ベイビー・ドライバー』(エドガー・ライト

Baby Driver/Edger Wright

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2.『バンコクナイツ』(富田克也

Bankoknites/Katsuya Tomita

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3.『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ

20th Century Women/Mike Mills

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4.『ゴースト・ストーリー』(デヴィッド・ロウリー)

A Ghost Story/David Lawrey

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5.『マリアンヌ』(ロバート・ゼメキス

Allied/Robert Zemeckis

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6.『ノクターナル・アニマルズ』(トム・フォード

Nocturnal Animals/Tom Ford

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7.『ロスト・シティ・オブ・Z』(ジェームズ・グレイ

The Lost City Of Z/James Grey

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8.『パターソン』(ジム・ジャームッシュ

Paterson/Jim Jarmusch

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9.『散歩する侵略者』/『予兆 散歩する侵略者』(黒沢清

Before We Vanish/Kiyoshi Kurosawa

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10『ダンケルク』(クリストファー・ノーラン

Dunkirk/Christpher Nolan

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11.『John From』(Joao Nicolau)

John From/Joao Nicolau

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12.『Logan/ローガン』(ジェームズ・マンゴールド

Logan/James Mangold

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13.『Summer 1993』(カーラ・サイモン)

Summer 1993/Carla Simon

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14.『Chez Nous』(リュカ・ベルヴォー)

Chez Nouz/Lucas Belvaux

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15.『婚約者の友人』(フランソワ・オゾン

Frantz/Francois Ozon

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16.『南瓜とマヨネーズ』(冨永昌敬

Pumpkin and Mayonnaise/Masataka Tominaga

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17.『ルイ14世の死』(アルベルト・セラ)

La Mort de Louis XIV/Albert Serra

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18.『ブレードランナー 2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ

Blade Runner 2049/Denis Villeneuve

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19.『ラ・ラ・ランド』(デイミアン・チャゼル)

La La Land/Damien Chazelle

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20.『ダーク・ナイト』(ティム・サットン

Dark Night/Tim Sutton

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1位は合計4回も映画館に駆けつけてしまった『ベイビー・ドライバー』。ロマンチック!に尽きる。2位も3時間超えの長尺にも関わらず連続で見てしまった『バンコクナイツ』。富田監督は体で映画を撮ることで表面的な原理を超え、本当の意味で映画の原理に接近し得たのだと思う。こんなにスケールの大きな日本映画は他のどこにもない。賛否分かれる『ラ・ラ・ランド』は、「アナザー・デイ・オブ・サン」が突き抜けて素晴らしい楽曲なので、もうそれだけでオーケー。どれだけ繰り返し聴いたことか。何よりこんなに始まる前にドキドキが止まらなかった映画は久しぶりだった。


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Planetarium/Rebecca Zlotowski

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Reparer les Vivants/Katell Quillevere

他、『ジャッキー』(パブロ・ラライン)、『あさがくるまえに』(カテル・キレヴィレ)、『プラネタリウム』(レベッカ・ズロトヴスキ)が強く心に刻まれた作品。『あさがくるまえに』の若い恋人たちの出会いのシーンは今年一好きかもしれない。『プラネタリウム』のリリー・ローズ・デップという特別な女優の誕生をナタリー・ポートマンが仕掛けた、というエピソードは今後語り継がれることでしょう。どれも大好きな作品です。『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(ティム・バートン)と『ネオン・デーモン』(ニコラス・ウィンディング・レフン)は昨年のリストに入れたので対象外にしました。見逃した作品で後悔してるは『ネルーダ』(パブロ・ラライン)、『女神の見えざる手』(ジョン・マッデン)。絶対入れたかった『ツイン・ピークス The Return』(デヴィッド・リンチ)、『ストレンジャー・シングス シーズン2』(ダフィー兄弟)は、まだ全部見れてないのです。昨年のリストは以下に。


http://d.hatena.ne.jp/maplecat-eve/20170102#p1


未公開の作品の補足。『ゴースト・ストーリー』はヴァージニア・ウルフの言葉に導かれる極めて美しい作品。予想通りルーニー・マーラの快進撃はここでも止まらない。そしてデヴィッド・ロウリー、映画作家としてめちゃくちゃ攻めてます。ジェームズ・グレイ渾身の傑作『ロスト・シティ・オブ・Z』とこれは公開されるでしょう。Joao Nicolauはミゲルゴメス『自分に見合った顔』に出演、同じくミゲルゴメスの素晴らしい『贖罪』の編集に関わった経歴の持ち主。女の子の撮り方を少し見ただけでだけで、この作家に興味が持てるはず。カーラ・サイモン『Summer 1993』は徹底した自然主義の撮影で、少女の「言葉以前の言葉」が捉えられる。感情が言葉として整理される前の状態について考えさせられる上に、胸を打つ。リュカ・デルヴォーの『Chez Nous』は、『BPM』(ロバン・カンピヨ)と共に、あるいはそこにベルトラン・ボネロ『ノクトラマ』を加えてもいいのだけど、三者三様のポリティカルな運動の背景を思う。つまり現在の映画。『ダーク・ナイト』は賛否両論の作品。ガス・ヴァン・サントエレファント』の素晴らしさがこの作品の評価を難しくする。ガス・ヴァン・サントはカラカラに渇いてるようで、もっとウェット。ティム・サットンは極めてドライ。前作『メンフィス』の霊歌としてのソウルが、ここでもアメリカの空に反響しているように思う。ティム・サットンアメリカという霊歌の作家。


そして今年最大のハイライト青山真治監督&宮崎あおいトーク付きで『ユリイカ』に再会できたことです。ちょっとこの特別な体験は自分の中で大切すぎて語れない。『ユリイカ』のバスの旅と、『ユリイカ』を初めて見たとき以降の自分の人生の旅が、スクリーンという共有体験の時間の中でゆっくりと重なっていく、そんな体験でした。涙が止まらなかった。この作品の上映を選んでくれた宮崎あおいに感謝。ご結婚おめでとうございます。


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Eureka/Shinji Aoyama

2017-12-14 筒井武文『映像の発見=松本俊夫の時代』パンフレット

[]筒井武文『映像の発見=松本俊夫の時代』パンフレット

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先週末よりイメージフォーラムで上映中の『松本俊夫 ロゴスカオスのはざまで/映像の発見=松本俊夫の時代』のパンフレットに5作品の論考を寄稿させていただきました。素晴らしい作品はどの時代、どの年齢で見たって、その価値は普遍である。ということを大前提として言いますが、それでも『薔薇の葬列』をはじめ、松本俊夫の作品群を20歳くらいのときに体験できたことは心から幸福なことだったと思っています。松本俊夫を知らない人生なんて、ちょっと考えられないくらいに。今回原稿を書くにあたって劇映画全作品と可能な限りの実験映画を再見しましたが、20歳くらいの頃に受けた鮮烈な体験が、というより、そことの距離こそが「発見」として真新しい強度を帯びていくのが分かりました。松本俊夫の作品に触れるということは、そういうことなんだよ。常に変容と共にある。と同時に、松本俊夫の作品を語ることの難しさも痛感しながら。松本俊夫という巨大な「像」を前に、筒井監督が途方に暮れてしまった、と語る気持ちが痛いほどわかるというか。手に負えない感、凄いです(笑)。でもこういう作品群だからこそ、20歳くらいの頃に夢中になる必要があると心から思います。自分がそうであったように感じてくれたなら嬉しいです。『薔薇の葬列』で引用されるボードレールの詩を引用するなら「我、傷口にして刃 いけにえにして刑吏」。『薔薇の葬列』の中で、作品から受ける衝撃の中で、やがて歳を重ねていく過程で、それがどう変容していくかは、若い頃に体験していなければ決して分からない。余談ですが、原稿を書いている途中、東京国際映画祭で『ユリイカ』を青山真治監督と宮崎あおいトーク付きで体験できたのは、2017年最大のハイライトでした。ちょうど松本俊夫の作品に夢中になっていた頃、完璧にやられてしまった映画。宮崎あおいは涙が止まらなかったそうですが、自分も涙が止まらなかったです。何かの巡り合わせだと感じました。人生はうまくできています。


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パンフレットに掲載させていただいた論考は5本。書くために仮のタイトルを作ったのですが、そこまで採用してくれてありがとうございます。


・「少年の幻視した時代」(筒井武文『映像の発見=松本俊夫の時代』論)

・「記憶/記録の増大」(松本俊夫『修羅』論)

・「モナ・リザパンチドランク」(松本俊夫十六歳の戦争』論)

・「記録映画のエモーション」(松本俊夫『西陣』論)

・「発光体としての映画」(松本俊夫『つぶれかかった右眼のために』論)


松本俊夫の作品に関しては解説を、ということでしたが、好きに書いていいとのことですべて論考のつもりで書きました。この160頁にも及ぶパンフレットプロデューサーの羽田野直子さんのやりたい放題が結実した、わがままサイズの素晴らしいパンフレットです。こんな贅沢な試みがこの時代に出来るということは驚きでしかない。筒井監督と宇川直宏さん(宇川さんの語り、好きなんです。菊地成孔さんの語りと共に昔から大ファンです)、中原昌也さんの対談がボリュームたっぷり読めるという。それでいて、『映像の発見=松本俊夫の時代』という700分超えの作品、及び、松本俊夫全体像をサポートする決定版、家宝版と言っていいでしょう。自分が関わっているとか関係なく、松本俊夫のファンとしてとても興奮しています。そして何より松本俊夫の作品群と『映像の発見=松本俊夫の時代』を見てほしい。偉大な才能を知ること以上に、一生に渡って関わっていく問いそのものがそこにはあるから。自分も生涯に渡って追いかけていきたいなと思いました。追いかけても追いつけない悦びというかね。思えば松本俊夫の残した作品自体が、そういった非決定性の連続で出来ているんじゃないかと思います。安心よりも絶えず揺さぶられること、心をかき乱されることを望んで選ぶすべての同志へ。選択とは強い意思のことです。


原稿を書く機会を与えてくださったことにこの場を借りてお礼させてください。ありがとうございました。


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追記*『映像の発見=松本俊夫の時代』に出てくる記録映画『春を呼ぶ子ら』はホントぶっ飛びますよ。

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