CHAPTER2|SERIEA ウディネーゼ

(3−4−3)

○11
○9          ○10

○7          ○8
○5   ○6

○2   ○3   ○4

○1

メンバー表(07-08)

番号 選手名
1 ハンダノビッチ
2 ルコビッチ
3 フェリペ
4 サバタ
5 インラー
6 タゴスティー
7 ドッセーナ
8 メスト
9 ディ・ナターレ
10 ぺぺ
11 クアリアレッラ
監督 マリーノ

◇システムの希少性を利用したカウンター
・90年代にバルセロナアヤックスが採用していた3-4-3は中盤の並びがダイヤモンド型だった
 だが、ウディネーゼの中盤はダブルボランチと左右のサイドハーフで構成されている
・戦術的なコンセプトも異なる
 前者2チームは攻撃的チームの極北のようなチームだったが、ウディネーゼはカウンターチームだ
・興味深いのは、この布陣の利用方法の違い
 従来の3-4-3はボールポゼッションが前提で、相手に合わせるのでは自分たちのやり方を貫くためのシステム・一方、ウディネーゼの狙いは対照的だ
 4バック全盛の現在、この布陣が持つ希少性を相手チームとの駆け引きに利用しているのである
・それが顕著に表れるのが、カウンターの場面だ
 攻守が切り替わった瞬間、相手チームは3-4-3という慣れない並びへの対応でマークがずれることが多い
 それを利用してウディネーゼは一気に敵陣内までボールを持ち込む

2007年12月に行われたカターニャとのアウェーゲーム
ウディネーゼは開始直後にカウンターから決定機をつかんでいる
・自陣で奪ったボールを素早く左サイドのドッセーナに展開
 そのまま前方に進出してクロスを上げ、ゴ−ル前に飛び込んできたクアリアレッラが頭で合わせた
→惜しくもゴールはならなかったものの、カターニャ守備陣を完全に崩した形だった

実はこのカウンターに秘密が隠されている
 →注目すべきは、カウンターの起点になったLMFのドッセーナがまったくのフリーだったこと

ウディネーゼの布陣は3-4-3 、カターニャは3センターハーフの4-3-3である
・注目は両チームのマッチマップだ
 通常、カターニャのSBはウディネーゼのWGをマークすることになり、実際そうしてた
  →だがそうすると、ウディネーゼのSMFのマークがガラ空きになる
ウディネーゼのカウンターは、このフリーとなったSMFと3トップの4人で仕掛けるパターンが基本
  →起点となるSMFがフリーなので、高確率でフィニッシュへとつなげている
ウディネーゼは、守備陣にボールと逆サイドのSMFがDFラインに吸収されるのではなく、中盤に残り中に 絞るという対応の行なっている
  →カウンターの第一歩を早くするための意図的な工夫だろう

つまり、なにも考えずに”普通”に対応してしまえば、必ず彼らの罠にはまってしまう
・中盤に特定のサイドプレイヤーがいない4-3-3とのマッチアップはこの現象が最もよく現れる一例
→例えば、SMFとSBを縦に並べた4-4-2や4-2-3-1でも結果は同じ
・攻撃時には多くの場合、片方のサイドプレイヤーは敵陣深くまで進入している
 もしも、そこからカウンターを受けた場合、自陣に残っている味方SBが3-4-3のWGをマークしてしまうと、 高い位置にいるSMFのマークは誰もいなくなってしまう

3-4-3のSMFは、4バックのSBよりもさらに縦方向の運動量が要求される難しい役割だが、基本ポジションが
高めに位置しているため、攻守が切り替わった瞬間にカウンターの起点になれる
・現在はドッセーナとメスト、過去にもヤンクロフスキといったタレントが、このポジションを務めてきた

◇マッチアップを巡る駆け引き
ウディネーゼのカウンターは一種の奇術のようなもので、ネタバレしてしまえば脆い部分がある
 前述したカターニャ
 ・時間の経過とともにカターニャは守備のやり方を変えてきた
・味方SBのマークをウディネーゼのWGからSMFに切り替えたのだ
・敵3トップのは残った3人のDFが、そのままスライドして対応
→すると今度は、ウディネーゼのカウンターがまったく機能しなくなった

とはいえ、これは例外的なケース
ウディネーゼはあえてマッチアップにズレを生じさせている
  →つまり、自ら仕掛けて毎回同じような状況を作っているので、このような駆け引きに慣れているし、その   対応方法もわかっている

現在4バックが圧倒的なシェアを占めているのは、なんといってもその安定性ゆえだ
・効率的にスペースを埋められて、機能させるのも容易
・一方、3バックはバランスをとるのが難しいぶん、高度なシステムといえる
  →そんな中、あえて3-4-3を貫き、しかもしっかり結果を残しているウディネーゼは興味深い存在だ

3-4-3は守備面のリスクが高い
・守備時は強制的にスライドして空いているスペースを埋めなければならないからだ
バルセロナアヤックスは、ボール支配によって守備機会そのものを減らそうとした)
・だが、ウディネーゼはそうしたリスクを反転させて、強みにしてしまった
・挑戦なくして発展はない
→こうした異端の戦術が、いつか主流を変えていくのかもしれない