PBP2015 時を越えて走るランドヌール 01


4年前のゴールしたときに感じたこと。
こんなにきついこと、もう1回したいと思えるのか?
しかしもう一人の自分は確かにリベンジを考えていた・・・


そしてあの日から4年。
1400日以上もあれば何だってちゃんと準備できると思っていたものの、実際は思っていたことの半分もできた実感がなかったし、ただただ4歳分能力が低下したという事実。
PBPを走っていた時わかったことは、先頭グループで当時の自分は若い方だったということ。
しかし若さが必要なのかというと、そうでもないのがPBPのすごいところだ。
若さ・パワーよりも経験。
集団で50歳以上も普通にいる。
要は低出力ながらも長時間出し続ける、何か動きが出たときに正しい判断ができる、ということだ。
細く・長く
加齢とともに出力は低下する。しかし低下しても長時間続けるためのトレーニングができてさえいれば、何とかなるということだ。

先頭タイムは42時間あたり。1200kmを高出力で走るわけではない。
太く短い出力をプロのロードレースだとすると、PBPで必要なのは細くもとてつもなく長い出力。しいて言えば、想像だが復路のナイトラン時の出力は若干高くないといけないのでは?自分がもし先頭を単独もしくは少人数で狙うとすれば、集中力の低下する、判断力の鈍り始める800kmを過ぎてからが本当の「戦い」にするはずだ。
練習としてはZONE 2でどのぐらい速く走れるようになるのか、そしてどのぐらい長く休憩を取らずにZONE 2を続けられるのか。
最初の3年はとにかくブルベを中心にZONE 3までの走りを重点的に。
渡航する前にはびわ湖一周などでラスト200kmのイメージを作りながらの走行。
しかしあくまでもフルタイムワーカー。
朝8時には自宅を出発し、10時には仕事開始。18時まではデスクワーク中心で、それから自宅まで自走。
帰宅後も21時から1時まではだいたいパソコンで自宅残業。
どれだけ乗る時間を作れるのか。
乗れないから乗らない、のではなく、乗らなければいけないなら乗る。
シンプルだ。

そして8月11日、日本を旅立ちフランスに到着。
4年前に果たせなかった夢を、見ることのできなかった戦いを、今回は必ず・・・


【使用する機材編】
今回バイクはフランスへは2台体制で挑んだ。
メインバイクはリドレー・ヘリウムにコンポはカンパニョーロ・レコードEPS
ホイールはカンパニョーロ・ゾンダにタイヤはオリジナルタイヤのMASSA T2601
チューブはパナレーサーのブチルチューブ。
タイヤやチューブ、ホイールの軽量化は格段にパフォーマンスを向上させることができるが、軽量化するということはそれだけトラブルに対して弱さを増してくる。
確実に完走、確実に上位で戻るパフォーマンスを持つのなら、敢えて軽量化に走る必要はない。
客観的に自分を見た場合、無理に軽量化へ舵を取る必要はない。ただトラブルなく走ることができる機材であればいいはずだ。
ハンドルとステム、シートピラーはサドルと同じくFizikで、カーボンパーツは使用していない。
アルミハンドルにアルミシートピラー、トラブルがなければいい。
サドルは今年に入って快適でいてぺダリングが明らかにスムーズになったFizikのバーサスVX。
従来のバーサスよりも腰の安定性が増しているようだ。
そして目立たないパーツだがバーテープもFizikの3mm厚のもの。
2mmのものにバージェルをチョイスするかギリギリまで悩んだが、このバーテープの快適性が十分なこと、そしてバイク全体で考えると十分なコンフォタブル性を持ち合わせていると判断した。
空気圧は5.8気圧。
決してスタート時の軽さを信じてはいけない。
大事なのは走り出して1時間2時間3時間と経過したときの軽さと快適性だ。
インナーチューブがR-Airなどであれば6気圧でもいいが、肉厚のあるチューブなので、バウンドの速さを考えると低圧でも十分だ。
あとは荒い走りをしないよう、丁寧に走るということを心掛けることだ。

スペアバイクはヘリウムより若干軽い仕様のヘリウムSLにカンパニョーロ・レコード。こちらは機械式だ。
前日のバイクコントロールまでに万が一バイクにトラブルが発生した場合に使用できるよう、そしてトレーニングでトラブルが発生しないように持参、メインバイクは矢野社長に頼んで持参してもらった。
こちらにはホイールはカンパニョーロ・バレット
両ホイールともスポークはステンレス。
アルミの扁平スポークの方が見た目には速く軽量だが、ロングライドになるとクッション性に関してはステンレススポークに分がある。
好みもあるかもしれないが、前回はラスト200kmを切ってからアルミスポークの硬さ、タイヤの硬さで完全に肩も腕も手首も、そして内臓までもが完全にノックアウトされたのを覚えている。

セッティングではブレーキブラケットの位置はかなり重要だと思う。
ロードレーサーに多い低いセッティングだと、瞬間的には力が入るが体重が前に入りその分肩に負担がかかる。
肩や首そして手のひらと、耐えがたい痛みとなってバイクコントロールすらままならなくなる。
ブラケットを高くすればするほどスピードが低下するし、なによりも体重をどんどんお尻で受けることとなり、尿道の圧迫や股ずれもしやすいのではないかと思う。
ただ、これがベストだ!と言うセッティングであっても、1,200kmと言う距離はどんどん体を蝕んでいく。
テーピングしようが痛み止めを飲もうが、必ず弱いところから順にどんどん潰れていく。
それがどこなのかは、練習やその人の体によってまちまち。
自分に関しては肩、右手首と右小指のしびれ、右足首に股ずれ、と言ったあたりか。
4年前には高出力を維持したブルベで、右ひざがまったく曲がらなくなってしまったこともある。

参加者を見ていると興味深いのはカセットはかなりクロスレシオに交換し、ケイデンスを上げる走りを回避しているようだった。
それは回転ピッチが変わることで筋肉への負担が生じるからだろうか。
しかしここはトップライダーたちのセッティングとは相反する超ワイドレシオの12T-29Tを選択した。
フロントギヤは53Tx39T、アウター×ローで今回のコースをほとんどこなせるはずだ。


ペダルは使い慣れたスピードプレイのチタンシャフト。
クリートは歩きやすい&空気抵抗軽減のウォーカブル。
空気抵抗は残念ながらわからないほどの低速だが、チェックポイントごとにシューズのままスタンプ地点までランニングすることを考えると大きなアドバンテージ、だった。
階段は一段抜かしで駆け上がれるし、実際何度かスタンプ一番乗りを果たしている。
もし前半にスタンプ地点まで片道200mぐらいあるチェックポイントがあれば、本気で逃げを考えただろう。

その他にもメインコンピューターとしてキャットアイストラーダスリム、サブにはGPSデータをレコーディングできるPOLAR V800とV650
V650は途中でモバイルバッテリーを接続してゴールまでの走行ログを途切れることなくレコーディング。
V800も最大50時間可能だったが、途中で一部データが飛んでいた。
ライトはキャットアイ・VOLT700を2灯。
最大700ルーメンを発するが、実際はオールナイトモードでナイトランは常時点灯、そして下りなどでもう一つをノーマルモードで点灯させて明るさを確保した。
そして大事を取ってブレストでライトをバッテリー満タン充電のものと入れ替え。


今回持参して走ったサドルバッグはドイターのバイクバッグSで、基本はパンクとホイールのスポーク切れまでのトラブルしか想定していない装備だ。
ダンシングしたときに振り子のように重りになるし、極力軽くしたい。
予備チューブ、タイヤレバー、ニップル回し、携帯工具・・・最悪の場合に何かできるかも、と瞬間接着剤と結束バンド。
そしてタイヤブースト
それ以外のトラブルは??
セラヴィ(それもまた人生さ)
いつかワインを飲むときのあてにするしかない。
すべてのトラブルを想定して走るなんてできない。
予備タイヤ?予備ホイール?予備変速機に予備シューズ??
エンド修正工具にカーボンフレームが割れたときに釜持って走る??
すべてを持って走る人はいないだろう。みんな必ず過去の経験などから「仕分け」したり、なかったら「セラヴィ」と言う覚悟で置いていくものがあるはずだ。
だからこそ消耗品は新品にしておいたり、逆に使用して馴染ませておいたり・・・
あとはトラブルのないよう全力で挑むだけだ。


国内のブルベでも使用しているリドレー・ヘリウムで今年のPBPに挑む。
EPSコンポは高価だが、ストレスを考えると大きなアドバンテージになるはずだ。




コックピットはキャットアイVOLT700を2灯にストラーダスマートをライトの光をかぶせるように配置することで、ナイトラン時もスピードを確認できる。
メインメーターとしてPOLAR V650
最大20時間データをレコードできるのだが、今回はPCで2回モバイルバッテリーをトップチューブに貼り付け、連続してデータをレコーディング出来るようにした。
なお、PBPの場合は路上に曲がる・まっすぐなどのサインがあるので、基本キューシートは必要ない。



尾灯はキャットアイオムニ3をチョイス
PBPでもナイトラン3回をバッテリーなしで走りきれる。
現在は継続として発売されているオムニ5も同じく点灯で最大45時間。
PBPの場合、町の入口・出口にスピードを殺させるための段差があり、結構な衝撃
そのほかにも石畳などもあり、はめ込み式のライトだと走行中に分解してしまうことがある。
そのほかにもヘッドライトやスピードメーターをゴムバンドで固定している人もいたし、結束バンドを使用している人もいた。



今回のサドルバッグの中身
もしサポート無しであれば、もう一回り大きいものにして予備チューブを増やすだろう。