無駄な業務設計

最近はセブン銀行のおかげで、日本のどこにいてもBank of Americaの口座から現金を引き落としできるので、出張の際に米ドル現金や旅行者小切手を持ち込むことはなくなった。円高には辟易とさせられるが...

サンフランシスコ空港にて

今回、台湾に短期滞在するために米国出国前にUS$200を台湾ドルに両替した。小さな窓口の中には担当の兄ちゃんが一人。渡された米ドルを無造作に数え、「$200だな。じゃ、NT$5000と残りは米ドルでいいな。」と言ってささっとNT$1000札が5枚渡された。続けてレシート(下写真)が印刷されてきて、半端分の米ドルが戻ってきて取引終了。

この間、1分しなかったろう。

取引条件はこんな感じ

  • NT$5000=$189.95
  • 手数料=$7.95
  • 合計=$197.90

OANDAによれば、この日の台湾ドル〜米ドル交換レートは0.03146。従って原価はNT$5000*0.03146=$157.30となり、粗利は$197.90-$157.30=$40.90。粗利率ざっと26%。

兄ちゃん一人が1分で稼ぐ仕事の粗利率が26%、ということを覚えておこう。

成田・りそな銀行窓口

台北は思ったより物価も安く、さらに言葉も通じないのにタクシーを値切るという荒業を繰り出したため、NT$が余った。これを成田にて円に両替したわけだが....

まずりそな銀行の看板が掲げられた両替窓口に並ぶ。窓口は二つ。左側は東欧系と思われる訛りの強い英語を話すおっさんが担当者と揉めており、なかなか開かない。

右側の女性が終わり、自分の順番に。おもむろに台湾ドルを出したら、「あちらの外貨両替票にご記入ください」と突き返される。両替票とは下記写真の手書き複写式伝票だ。

「現金」の下に台湾ドル・3300と記入し、再び窓口に並ぶ。左側の外人さんは相変わらず店員と揉めたまま。右側の女性が終わるのを待つこと約5分。自分の番が来た。

窓口にて伝票と3300台湾ドルを渡す。店員はお札を丁寧に数え、伝票下半分の「銀行記入欄」という部分に「NT$1000 3枚 NT$3000」「NT$100 2枚 NT$200」という詳細と、合計金額NT$3000を手で記入。再度お札を数えて、伝票のそれぞれの数字に赤ペンでチェックを入れ...窓口後方の別担当者に渡す。

別担当者が何をしていたのか自分の場所からは見えなかったが、そこから返ってきたのは先程の複写式伝票と日本円。そして複写式伝票の裏には「5000円 1枚 5000円」「1000円 2枚 2000円」「500円 1枚 500円」「100円 1枚 100円」「50円 1枚 50円」「10円 3枚 30円」「5円 1枚 5円」「1円 4枚 4円」「合計 7689円」という記述が。

さらに窓口担当は後方から渡された現金と伝票詳細とを突き合わせ、個別にチェック。全部あったのを確認した上で伝票一枚目をファイルした上で、やっとこさ俺に現金と複写伝票二枚目を渡してくれた。

ざっと5分。ちなみに隣の外人は、まだ何事か揉めていた。

取引条件はNT$3300=7689円。OANDAによればこの日の台湾ドル〜日本円レートは2.8483。従って粗利は3300*2.8483-7689=1710.39。粗利率は22.24%。

窓口担当と奥の人二人が5分かけてやる仕事の粗利率が22.24%。

両者比較

  • SFOの両替屋は、一人で1分あたりの粗利率が26%。
  • 成田りそなの両替窓口は、二人で5分かかる仕事の粗利率が22.24%。隣の窓口のことを考えるともっとひどいわけだが、今回は見逃しておこう。
  • それでも、成田りそなの窓口一人1分あたりの粗利率は2.22%となる。
  • つまり、SFO両替屋の1割にも満たない。
  • 税金投入して支援しても、中の非効率部分を改善しなければ、ただの雇用対策にしかならんのだね。

無駄

りそなの場合、何が無駄なのだろう? 自分には、この両替業務のほとんどが無駄のかたまりに見えた。

手書き伝票に名前と連絡先を書かせるのだが、特に身分確認はしない。伝票下部に「本人確認」というチェック欄があるので、おそらくは高額の場合には身分確認をする運用になっているのだろう。ならば、その金額を越えて身分確認が必要な場合にのみ、伝票を使った処理をすればいいのではなかろうか。

次に無駄なのがお札や硬貨の枚数を記入する部分。担当者はお金をネコババするもの、という性悪説に立った運用なのだろうか? それともお金の数え間違いを防止するための業務なのだろうか? この業務設計をした人は、一度パチンコ屋の景品交換所における業務を見学してみるべきではなかろうか。

だいたい、なんでいまどき紙の伝票なんだろう。外貨両替票の欄外にはこんな印刷がある。

31-645-05-50(1/2) 保7年 帯(2x50)20.8

「保7年」というのは、7年保存ということか? 紙で保存するのか、マイクロフィッシュにするのかわからんけど、ずいぶん無駄な話だよね。最後は下写真のように電算機から結果を打ち出しているわけだから、そのトランザクションが何らかの形式で記憶媒体に残っていれば良いはず。

こういう生産性の低い業務を支援する無駄な機能が山のようにあって、それを維持管理することでシステム業界が生きながらえているとしたら...そりゃ、システム業界の生産性も下がるのは当然の結果だわな...