最近の読書

「姑獲鳥の夏」を読み終わった。おもしろかった、が、ちょっと消化しそこねた部分も残った。あまり関係ない話だが、この本は文章や台詞がおもしろいんだけど描写されている映像を思い浮かべつつ読むのも大事かなとも思いながら、なぜなら仮想現実であるとか錯覚というものは、それを像に描いてはじめて腑に落ちるものだろうからだが、しかしあまり脳内映像化にこだわりつつ読み進めるようなものではない気もしていて、なぜならこれは体験や舞台の話でなく記憶の話なのだろうとも思えるからで、だから本を読み進めていく行為が、文字の記憶と映像の記憶が個別に最初から最後まで完結せず、それらがごっちゃになっているというか、両方ともある部分や片方だけしかない部分など、おれの記憶への格納のされ方がまちまちというか、ちぐはぐにつながっているような、つながっていないようなかんじで、そのへんも読んでて楽しめた。これスピード優先で読まなかったら全部文字だけで読んじゃったかもしれないな。そっちのが正解な気もするけど、べつに正解だけが欲しくて本を読んでるわけでもない。

で、一冊目を読み終わったら次は二冊目…と思って「魍魎の匣」を手にとってみたの、だ、が、でかいなこれは！ポケット時刻表かよ！いやそれ以上のものだ！びっくりした。これ二冊束ねると縦だか横だかわからなくなりそうだ（横幅 10cm ちょっとに対して厚み 4cm くらいある）。たぶんあれだ松本零士氏作品に出てくるキャラクタがいつも食いたがってるステーキってこんなかんじだよね…と思った。まあステーキは肉であってこれは本だけど。「魍魎の匣」はもちろんシリーズものとして「姑獲鳥の夏」と同じ棚に並んでいるわけだが、一作目を取り出したとき横目に見ていたはずなんだけど、「それは本だ」という認識をうまくできていなかったようだ。ブックエンド感。または初回限定フィギュア付飾り箱とか。「姑獲鳥の夏」で十分分厚かったのに「魍魎の匣」は分厚すぎる。これ持ち歩いて読書ってのはちょっとすごい絵だな。文庫サイズになったほうが逆に取り回しが利かない気までしてくる。おれのポケットはそれなりにデカいがさすがにこれ入れるとパンパンになってしまう。いいかんじではない。仕方ないので肩掛け袋に入れて持ち歩くことにしよう。

でもこれどう考えてもモバイル読書用の本ではありませんよって厚さだよな。家でテーブルのうえに本置いて読めってサイズだ。両手支持で。厚すぎるので重しを置いてページを開きっぱなしにするのもむずかしいから。でも「通勤読書をしているひとを見るとき、京極氏作品はその本の厚さだけで一発でわかる」みたいな話も聞くし、てことはこれを通勤読書に使っているひとはそれなりに居るはずだ。この扱いに困る四角いカタマリをなあ。トートバッグにいつもレンガ入れて持ち歩いてます、みたいな異様さ。

ワンダの虚像

ワンダと巨像というけど、ワンダ一人に対して巨像は十六体（柱？）居る。だから正確には「ワンダと巨像たち」ではないかなと思ったが、逆にそこがヒントかもしれない。つまり真の巨像というのはあのゲーム中一体しか居ないのだ。じゃあそれは誰だ。それを決めてしまうのはつまらないな。毎日毎時違えばいいんじゃないかな。

で、いま考えているのは「あの十六体の巨像というのは、じつはこれまでに日本で発売された家庭用ゲーム機たちの亡霊でさ…」みたいな話。でも一体一体がどのハードに対応するのかとか、そもそも十六体に絞るのがめんどいのでそこいらへんは曖昧のまま。託された志、描かれた夢の亡骸たちに剣を突き立てたり葬ったり供養したり真っ黒い例のアレに串刺しにされたり最後の一撃はどこか切なかったりするそんなゲーム。じゃないよなべつにワンダはそのようなゲームでは。でも、あれそのまんまのグラフィックで、メガ CD 1 ＋メガドラ 1 ＋スーパー 32X の三重の塔を模った巨大な石像が大地を闊歩とかしてるありさまは、ちょっと見てみたくはあるな。

ながいき 100 円サンダル

買った端からブチブチと紐の切れる昭和漫画に出てくる押し売りが売ってるような品質のサンダルを、まあ 100 円だしなというボンクラ的な理由により毎日のように買っていた生活からしばらく遠ざかっている。というのも最後に買ったサンダルのひもがいまだに切れていないからだ。なかなかタフ。べつに信用してないので、明日は切れるかもなとかも思っているわけだけども。同じ 100 円のサンダルでこうも寿命が違うとは驚きだ。逆か。100 円のサンダルなのでこうも品質にバラつきが出るという話だよな。これが 1,000 円サンダルなら半日ひも切れなど許されまい。100 円でも許さないひとは許さないのかもしれないが、まあそういうパワーのあるひとなら 100 円で材料買ってきたとおもって自分で勝手に修理しちゃうだろうし。そうでないおれのような人間にとって、ボロい 100 円商品にはある種の癒しがあるのだろうな。