幸福度世界一のデンマークに学ぶ(2) 〜グルントヴィの教育思想

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

先日の続きです。今なぜデンマークが注目されているのかをもう一点あげるとすると、それは持続可能性の高い社会システムを構築しようとしている点です。
特に、エネルギーについて言うと、電力源の40%が再生可能エネルギーです。うち28%が風力発電という点も注目です。
国土の割には人口(電力消費量)が少ない国だからこそ出来ることなのかもしれませんが、日本も見習うべき点はたくさんあります。

そして、教育について言うと、こういった社会システムと教育システムが密接につながっていることが注目に値するでしょう。デンマークには、「自然と技術」という教科が小学校(国民学校)にあり、その中で、再生可能エネルギーについて学びます。

また、社会で求められている職種について高校で育てるという連結性が強く、日本のように、社会と教育のミスマッチが起こっていません。この点は見習うべきです。

歴史的に言うと、今のデンマークの教育の考え方のもとになっているのは、ニコライ・F・S・グルントヴィという人です。グルントヴィは、童話作家アンデルセンや哲学者キェルケゴールと同時代(19世紀前半に活躍)のデンマークの国民的詩人です。彼は詩人としてだけでなく、教育に与えた影響も大きく、近代デンマーク精神の父ともいわれています。

グルントヴィは、当時の学校教育が無意味な暗記や試験、理念のない実学教育、立身出世だけを目指す競争を行っているとして批判し、対話や相互作用を根本にした人間教育を行うべきと主張しました。そして、試験も資格も問わない農民のための成人教育を提唱し、それが北欧独特の教育機関フォルケホイスコーレになりました。
これが、現在でも本質を追求し人間を中心においた自由と民主主義を体現したデンマークの教育思想のもとになっています。

実際に、デンマークの生徒たちは自由です。日本のように躾教育を行ったりはしませんので、授業態度も(日本的に評価すれば)ひどいものです。しかし、自分のことは自分で考えて実行します。高校生でも明確に自分の意見を持ち、しっかりと発言できます。
日本社会においては、躾も大事ですが、グローバルにみたら、自分の意見を持ち表現できる力のほうが大切です。これからの学校教育においてどこに重点を置くのか。デンマークの教育を参考にできる部分も大いにあると思います。

次回から、学校段階ごとにもう少し細かく見ていくことにします。