アクティブ・ラーニングの誤解

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

いま教育界では「アクティブ・ラーニング」という言葉が盛んに使われています。
私が勝手に決める教育界流行語大賞があるとすれば、2014年度の東の横綱が「グローバル教育」なら、西の横綱は「アクティブ・ラーニング」でしょう。

実際、昨年12月に提言された中教審の高大接続の答申の中でも、「アクティブ・ラーニング」という言葉が登場しています。「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた改革の方向性」という章において、「高等学校教育については、(中略)課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学習・指導方法であるアクティブ・ラーニングへの飛躍的充実を図る」と述べられています。

しかし、「アクティブ・ラーニング」という言葉が広く使われるようになって、誤解も生まれているような気がしています。
「アクティブ・ラーニングって、グループ学習のことだよね」
「アクティブ・ラーニングって、体験学習のことでしょ」

このような発言をする方は、「アクティブ」を活動的と訳しているのかもしれません。つまり、生徒が席に座っているだけではなく身体を動かしながら学ぶということと誤解しているのです。

通常、「アクティブ・ラーニング」を日本語にするときは「能動的な学び」と訳しています。
つまり、学ぶ姿勢や態度が受動的ではなく能動的だということです。身体を動かすかどうかは条件ではありません。もちろん、身体を動かしながら学ぶ場合は、受動的ではいられませんから、これらの活動も「アクティブ・ラーニング」の一つではあります。だだし、全てではありません。

私は「アクティブ・ラーニング」には3種類あると定義しています。1つは、「問題解決型アクティブ・ラーニング」です。生徒が能動的、つまり授業における主体性がもっとも生徒側にある授業形態です。探究学習やPBL(Project Based Learning)などがここに含まれます。
2つ目は、「知識活用型アクティブ・ラーニング」です。一定の知識があることが前提で、それを活用して答えを導くようなスタイルの学習方法です。ある程度教師が授業を主導しますが、生徒の主体性も高い授業形態です。例えば、ディベート型授業やジグソー法などです。
そして、3つ目は、「知識習得型アクティブ・ラーニング」です。授業の主体性はだいぶ教師側にありますが、生徒も能動的に参加する授業形態です。授業内容を理解し知識を定着させるためにも、従来型の一方的な講義スタイルではなく、インタラクティブ(双方向)なスタイルをとった方が効果が上がるということです。

「アクティブ・ラーニング」というと、1つ目の「問題解決型」を思い浮かべる方も多いと思いますが、実は活用のチャンスが多いのは、「知識活用型」や「知識習得型」の方です。社会で求められる力が変わり、それにつれて大学入試が変化しようとしている今、特別なプログラムではなく、通常の授業の中で行うことができる「知識活用型」や「知識習得型」の「アクティブ・ラーニング」を教師一人ひとりが積極的に取り入れることを考えていくべきだと思います。

従来型の一方的な講義スタイルの授業を見ていると、生徒はただ聞いている(ふりをしている)だけ、板書をただ写しているだけで、まったく頭が動いていないように見えます。それでは理解もできないし、知識の定着もしないでしょう。私は、「アクティブ・ラーニング=能動的学び」を「脳働的学び」と読み換えて考えています。身体は動かなくても「脳」が「働」いていればいいのだと思います。
特別なプログラムを考えるのではなく、まず日々の授業の中で、どれだけ生徒一人ひとりの脳を働かせることができるのかを研究し実践してほしいと思います。

板書&ノートテイキングというやり方でいいのか、まず説明してから演習させる方法でいいのか、生徒全員が教師の方を向いて座る形式でいいのか――授業のあり方の根本から見直す必要があるのではないでしょうか。
そして、その時に、ICTや様々なアクティブ・ラーニング手法の活用の可能性が見えてくるのではないかと思います。

「アクティブ・ラーニング」の検討を契機に、貴校の授業のあり方を根本から見直してはいかがでしょうか。