恒例となった同盟強化イベント

経済機会という太陽を掲げる中国と、ミサイルという北風を吹かせる北朝鮮


北朝鮮、ロケット打ち上げを予告 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
北朝鮮ミサイル予告、中国の再三の説得実らず : 北朝鮮 : 特集 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ということでまたもや北朝鮮さんちのロケット=ミサイル騒動であります。今回は特に「異例の」間隔の短さであったそうで。まぁなんというか自衛隊をはじめとする関係各所の皆様おつかれさまでございます。
――で、やっぱり中国さんは自制を求めていたと。

 会談や親書の詳細は明らかになっていないが、中国は北朝鮮にミサイル発射などの挑発行動を自制するよう促した可能性が高い。実際、中国外務省の洪磊副報道局長も11月27日、ミサイル発射の観測について、「北東アジア地域の平和と安定の維持は各国の共同の責任であり、共同の利益につながる」と語り、北朝鮮に暗に自制を求めていた。

北朝鮮ミサイル予告、中国の再三の説得実らず : 北朝鮮 : 特集 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

「北東アジア地域の平和と安定の維持は各国の共同の責任であり、共同の利益につながる」ですって。さすがへいわをあいするちゅうごくさんだなぁ。


建前はさて置き。
まぁそういいたくなる気持ちは解らなくはないんですよね。実際、最早こうした北朝鮮さんちのミサイル騒動は、恒例イベントとなって久しくて、故に日米韓による連携訓練の様相を呈しつつあるわけで。もちろん北朝鮮さん自身にとっては、生存戦略でもあるし国威発揚にも使えるし更には貴重な商品にもなるという、一石三鳥な行動ではあるのでしょう。
だからこそ、彼らはこうして事実上の宗主国でもある中国の制止なんかも聞く耳をもたない。
この点で北朝鮮と中国さんちの利害はかなり乖離してしまっているんですよね。皮肉な話ではありますけども、こうして発射を重ねれば重ねるほど、私たち対応側の手際は良くなっていくし、更には世論に対して軍事的な防衛行動の必要性までも認識されるようになってしまう。しかも今なんてタイミングの良いことに日本も韓国も選挙期間中だっていう。
もちろん、言うまでもなく中国さんち自身だって似たようなことをやっているだろうというのはその通りなんですが、しかしやっぱり彼らのはギリギリ「火遊び」という辺りで収まっているわけで。「パスポートでの自国領主張」や、あるいは「ハワイも領有権を主張できる」とか、まぁ確かに合法ではありますけどもしかし決して賢明ではありませんよね。しかしだからこそ、日本もアメリカも「対中国向け」に際しては一定の配慮をせざるをえないのです。不満はあっても直接に名指しすることができない。
ところが北朝鮮さんは見事にそんなラインを踏み越えてしまっている。だからこそ、こうしたミサイル危機の度に私たちは公然と行動を起こせるのです。


かくして中国の大戦略である「日米同盟に楔を打ち込む」という目的から真逆の効果をもたらしてしまっているミサイル危機。経済的な魅力でもってアメリカをより味方、あるいは中立な立場へと誘導しようとする中国さんちの長期戦略について。ぶっちゃけそれで済むならば直接にアメリカと対決するよりずっとコストは安い以上、それは良いとか悪いとかというレベルではなく、当然の帰結でありますよね。だからこそ彼らはその投資という経済機会でアメリカを魅了しようとするし、一方で私たち日本はそのイデオロギーの共通性や地政学的な魅力でもってそれに対抗しようとするわけであります。
そうした中国の試みは、私たち(現状の日米同盟政策を続ける限り)日本にとっては北朝鮮からのミサイルと同様に――あるいはそれ以上に、とても恐ろしいものであります。
少し前に「日米中は正三角形だ!」とか放言する人がいらっしゃいましたけど、その発言が心底間抜けだったのは「日本を置き去りにする形での二等辺三角形」が形成されてしまう可能性をまるで考慮していない点なんですよね。中国さんはほぼ一貫してアメリカの方を向いているというのに、まるで私たちに「だけ」選択権があるような世界観。そんなものあるはずないのに。
日本を頭越しにして米中の両者で手を結ばれてしまう世界。
現状で想定できる最悪のシナリオとはつまり、日本が『道』扱いされること、であるのだから。


こうした東アジア全体を巻き込む勢力争いの中で、ところが見事に北朝鮮さんに足を引っ張られている中国さんち。
当事者としてはあまり笑えませんけども、しかしこちらも恒例となった『中国の再三の制止』という絵を見ると「いやぁ無能な味方って怖いよね」と少しくすっとしてしまうお話だなぁと毎回思ってしまいます。