Baby Princess(1)/公野櫻子/電撃文庫

Baby Princess〈1〉 (電撃文庫)

「アイツはここで、あんな鈍感なアホのままで生きていられるくらいに―――幸せに暮らしてたに決まってる!それで―――本当はきっと、こんな風にうちにやって来ることは偶然なんかじゃなくて、ずっとずっと前から決まってたのよ!」


電撃G`s magazine及び公式サイトでの連載で好評を博している企画が、原作者自らの手により小説化。たった一人の身内であった祖母が亡くなり、天涯孤独の身となった陽太郎は、美少女剣士・ヒカルと出会い、引きずられるように彼女の家族である19人姉妹と暮らすことに。


事前に聞いてたあらすじから視点は小説版の主人公である陽太郎の一人称固定だと思っていたのだけど、実際は陽太郎視点、姉妹視点、神(まさに)視点と色々な角度から家族に焦点を当てていた。姉妹の中で最もスポットライトが当たっていたのはやはり表紙を飾っていたヒカル、話の鍵を握っていたのは日記の回数も多い麗で、逆にあさひ青空さくら綿雪辺りの年少組は影が薄かったかな。


とはいえ新しい家族が来ると聞かされた時の心情は大体語られていて、序盤は怒涛のような家族の紹介が続いたものの、主題は陽太郎が、名もないトゥルー俺から「陽太郎」というキャラクター、家族の一員として定着するまで、という印象を受けた。確固たるコミュニティに異分子が入ってきたことによる軋轢と、その収束。これはなかなか姉妹視点だけでは書き辛いだろうなあ。まとわりついてくる虹子に頬が緩み、氷柱に責められ自分のせいで仲の良かった家族が喧嘩する辺りでは切実に胃が痛くなり、麗が引用した台詞を口にした時には涙腺がじわりと来た。所詮小学4年生ではあるけれど、それゆえに無視できない真っ直ぐさに救われた。やっぱり小雨は麗のことよく見てる。トゥルー家族とは何か。リアル家族の立場はどうなるのか。何故トゥルー俺ではなく陽太郎でなければいけなかったのか。そういったことに真っ向から取り組んでいる、気がした。


G`s及び日記とのイメージの齟齬が少なからずあったのは春風さん。ただ、これは王子様以外の他の姉妹と春風さんが話してるところを、今まであまり見る機会がなかったせいかな?次巻では「怒ると怖い春風さん」も見られるといいな。


その他諸々。

  • 人物紹介で麗が「姉妹で一二を争う美少女」から「姉妹の中で一番の美少女」にランクアップしてた。
  • 各章扉は、その章に出てこない姉妹は伏せられてるのね。なんだか推理小説で殺された被害者の写真の上に×がついていくような演出だ。
  • WHOLE SWEET LIFEと一部リンクしてた。
  • 春風さんはイケメンなんて言わない。言わないで……
  • ヒカルは春風さんの3m以内に近付いちゃダメだと思う。
  • フレディがノーライフ的なものに……。さすがにピンクの象は無理があったか。
  • 綿雪の思考はちょっと危なっかしい気がしなくもない。
  • 海晴姉が「みはるあね」だなんて今さら自分の中で修正できないよ!
  • 壷に赤ん坊を入れること幸せを祈る儀式ってどこかに元ネタがありそう。
  • けんちん汁にから揚げ入れられたら誰だって怒る。俺だってそーする。
  • 陽太郎が家出したのが虹子の誕生日と聞いてひどくすまない気持ちになった。ごめん、虹子。ごめん、ヒカル。ごめん、みんな……。
  • いちごパンツはどうかと思います。
  • ♥♥♥分が足りない
  • 陽ちゃんを受け入れるまでは、航お兄ちゃんのときもこんな感じだったのかしらん、というような気持ちだった。……アレ?でも実際に劇中で妹に「航お兄ちゃん」とか呼ばれてた記憶がないような……?


この後、小説は1年後の期限が終着点になるんだろうけど、みそら(=美空?名前からしトゥルー家族の家系と何か関連が?)ばーちゃんのことや、パパの年の離れた妹のこと、ヒカルの非血縁疑惑なんかは明かされるんだろうか。兄とヒカルがそっくりな顔してるのって二次裏設定だっけ?日記の展開を見てるとなんとなくぼかしそうな気も……。


最後に、この小説を読んで家族になりたいと思った人のため、一緒にくらすための約束を。

  1. 遠慮はしない。
  2. 姉妹を呼ぶ時に「さん」付けしない。
  3. 食事は好き嫌いなくきちんと取る。
  4. 嘘をつかない。
  5. でも秘密があるのはOK。
  6. 家族行事には必ず参加すること。
  7. 自分の部屋には原則姉妹を入れない。どうしても必要な場合は必ず二人以上で。


七つの約束を守ってみんなで楽しくトゥルーライフを。