日本のサービス業における生産性の高さ

サイゼリヤ



日本のサービス業における生産性の低さ*1が指摘されているが、そもそも日本のサービス産業と海外のサービス産業を同じ土俵に立たせるのは意味が無い。
サービスとは“奉仕”であるが、その語源は“スレーブ(奴隷)”に由来する。日本のサービス産業はその名の通り“奉仕”の部分が多い。理髪店が良い例だが、海外の理髪店は髪しか切らないが、日本の理髪店は洗髪、洗顔、髭剃り、整髪、マッサージと至れり尽くせりだ。
外食産業も分かりやすい。日本と海外のレストラン比較だけでも以下の差異がある。


日本――――――――――――――――――→海外
お絞りが出る――――――――――――――→何も出ない。手はトイレで洗うしかない
飲料水は無料で飲み放題―――――――――→飲料水も有料でソフトドリンクと同程度の価格
店によってはお替り無料―――――――――→無し
和食に多い小皿―――――――――――――→ 一皿の盛り付けが殆ど
ソース等の調味料を豊富に取り揃える―――→基本的にテーブルには塩と胡椒のみ
チップは無し――――――――――――――→チップが必要
客待ちの時は立って待たなければならない―→奥の控え室か客の席で座って待機
トイレは無料――――――――――――――→デパート内のレストランの場合、有料
ほぼ毎日営業――――――――――――――→日曜が休みとの場合が多い
来客数が多い――――――――――――――→来客数が少ない


以上から何が分かるだろうか。日本のサービス産業は見えない部分が多い。海外と日本のサービス産業生産性比較は、単に海外の価値観で概算しているに過ぎない。
即ち、メニューに載っている商品の客単価と従業員の給料から算出しているだけだ。この場合、日本の生産性は著しく低いと判断される。しかし、上記の様なサービスを金に換算した場合、日本サービス産業の生産性はかなり高いものとなる。
理髪店は髪を切れば良いだけなのだろうか。レストランは食事を出しさえすれば良いのか。車はただ走れば良いのか。
全てに言える事だが、経済にしても短絡に結論を導くと本質が分からなくなる。


過剰サービス社会の日本において、究極にまで生産性を高めた企業がある。レストラン・サイゼリヤだが、わずか40年で780店舗*2もの大所帯になった。理系社長の先見性はピカ一で、彼の存命中は今後も伸び続けると思われる。
徹底した流通コスト削減、調理の効率化による厨房一人体制、理系社長による科学的鮮度管理体制、その結果の低価格路線。
世界を席巻しても良いほどの合理化、科学化だが、今のところ中国等の途上国にしか進出を考えていない(もっとも、急成長する企業はヤオハンのように中共に壟断されるリスクは高い。日本の義理や道理など通じないのも中国。その為にも海外進出の分散化は絶対に必要だが)。


がっちりマンデー サイゼリヤの理科系戦略


決断の時 サイゼリヤ 代表取締役社長 正垣 泰彦


格差社会は、もはや途上国だけの問題ではない。物価高の先進国で喘いでいる一般市民にこそ、必要なレストランに思うのだが・・・。
世界一の生産性を有すサイゼリヤ。今後の世界戦略に注目したい。


労働生産性の国際比較(2007年版)

1. 日本の労働生産性(2005年)は先進7カ国で最下位、OECD加盟30カ国中第20位。

2005年の日本の労働生産性(就業者1人当り付加価値)は、61,862ドル(789万円/購買力平価換算)でOECD加盟30カ国中第20位、主要先進7カ国では最下位(図1)。
日本の労働生産性は昨年(2004年/59,156ドル)より2,706ドル(4.5%)向上したものの、順位は昨年と変わらなかった。
第1位はルクセンブルク(104,610ドル/1,334万円)、第2位はノルウェー(97,275ドル/1,240万円)。米国の労働生産性を1とすると日本は0.71。対米国比率は2000年以降ほとんど変化が無い。


小売業・サービス業の生産性向上が所得水準引き上げの重点課題 マイコミジャーナル 2008/09/04


産業別国際比較からみたわが国の労働生産性低迷の要因分析〜小売・サービス業の生産性引き上げ戦略〜日本総研 2008年09月04日

*1:金融バブルが崩壊した今、日本以外の各国サービス産業の生産性も甚だ如何わしいものではある。

*2:2008年10月期