dipの音源を、自分内(中略)覚え書いていくシリーズ@その5

少し間があいてしまいましたが、残念、まだ終わったわけではないのだなははは。は(乾笑)。ちなみに前回までのあらすじはこちら→その1その2その3その4。あと、時系列に沿うとここらでdip the flagのライヴ盤と、ヤマジソロBOXが割り込んでくるのですが、1回感想はメモってるし、本題からは若干それるので省略。


I'll slip into the inner light

I'll slip into the inner light

ジャケットの写真がけっこう好きなんですが、はまぞうさんで出ないのが惜しい。デザイン的にはそんなに凝ってないんだけど、色づかいが綺麗で。
94年1月発売だそうなので、UKプロジェクトからの『dip』が前年の7月発売であんまり間があいてないというところから、この2枚はセットになってると考えていいのかなあと。セットっつーか、『dip』が骨で、『i'll』がその骨にぺたぺたと肉付けしてった、みたいな。
再録曲が3曲。“lilac acordion”が『dip』からの再録。『dip』ヴァージョンが、ギターがバリンバリンに鳴っててかなりロック寄りな仕上がりになってるのに対し、こちらの『i'll』ヴァージョンは低音を効かせたミックスで、リヴァーヴかけまくりでまるでオルガンのように聴こえるギターソロといい、サイケデリック色が強まってる感じ。深い湖の底を、ゆっくりと進んでいくような後者も悪くないんですが、個人的にはヴォーカルを前に出した前者の方が好みかも。ちなみに後者の方が、ほんの何秒かトラックが長い(笑)。3曲目の“オモト”は、ヤマジソロ2作目の『crawl』収録のインストナンバーに詞をつけたもの。原曲は、わりとさらっとしたアコースティックな小品なんですが、こちらは泣きのメロディを強調したフォーキーな歌モノ。しみじみと沁みる、いい曲です。8曲目の“human flow”がdip the flag時代の曲の再演。これはあんまりアレンジ変わってないのかな。
メジャーからのリリース、という意識が多少なりともあったのか、全体的にポップで聴きやすい。歌メロはっきり&音も整理されてて小ぎれい。でもって、どことはなしにスウィート。舌にのせた途端にふわっと溶けてなくなってしまう、綿菓子のような甘さがある。モロに当時の流行に乗っかったくさい“after sunday”はご愛嬌(笑)。タイトルロールは、トラックを3つに分けた組曲風のサイケデリック長尺ナンバーで、途中で“sunday paffce”のピアノのフレーズが出てきたりの逆回転アワーに突入しつつ、最後は轟音R&Rで締め。このギターがまたしびれるんだ(笑)。湯水のように、極彩色のフレーズが次から次へと飛び出してくる。ちょっとビートルズっぽい。“A DAY IN THE LIFE”みたい。
入手直後にもちょろっとメモっとるのですが、“空に揺れたい”とか、あと“トランスオレンジ特急”とか“冷たいくらいに乾いたら”とか、この辺の曲のいかにもな青臭さ、それこそ本当に“空を飛び回る”ような、みずみずしい疾走感。たまらんなあ。20代のこの時期でしか書けなかった、できなかったであろう刹那のキラメキが、しっかりと刻み付けられてるですよ。なんというか、こういう「この世界には君と僕の2人だけ」的閉じた世界っつーのかな。少年と少女、もしくは少年と少年でもいいんだけど(笑)そのあたりの性も未分化な年ごろの「君と僕」が、人に言えない2人だけの秘密を共有することで居場所を見つける、みたいな世界観。が、アルバム全体に貫かれていて、これはねえ、マズイよねえ、かぶれるよねえそういう“居場所を見つけられない”年ごろの少年少女は(苦笑)。このあたりの曲を生で聴けたら、その場で過呼吸起こしてぶっ倒れる自信だけは無駄にありますが(笑)、今のヤマジ氏はさすがにもうこういう世界はとっくに通り越しちゃってるし、仮に今これらの曲やっても、たぶん全然違った味わいになるんだろうな。いや、まあ、それはそれで聴いてみたい気もするけど(笑)。



それにしてもしみじみと思うのが、Plastic Treeの有村さんは、本当にこの時期のdipが大好きだったんだろうなあということです。いや別にたろさんを貶めているわけではなく(笑)、たろさんが好きで聴いてて、そしておそらくは自分でもこういう音楽をやりたいと思っていたであろうスミスとかキュアーとかマイブラとかエコバニとか、といったUKバンドの音を、いかにして“日本語のロック”に変換するか、そのヒントをだいぶん彼はこの時期のdipからもらってるんじゃないかなーと思ったの。たろさんの場合、いまだにこの「君と僕」的世界に執着してるあたりですでに独自の芸風確立しちゃってるけど(笑)。“冷たいくらいに〜”を昔歌ったことがあるらしいですが、それはさぞかし恐ろしいくらいにハマっていたことでしょう、キーもちょうど合ってるし。ていうかむしろプラでカヴァーしちゃえばいいじゃない(笑)。念のため、私プラトゥリ好きでしたよ。『パレード』までは持ってるし、ライヴも行ってましたよー。最近はご無沙汰してますけど、今でも『奇妙な果実』と『Puppet Show』はたまに聴きます。って、プラの話はいずれまたおいおいに。



さらに余談なのですが、



なぜかこのアルバム、2枚持ってるわけです。1枚目は某オークションで手に入れたのですが、2枚目は、某中古店の格安ワゴンを何気なく掘っていたら、うっかりサルベージしてしまいまして。ええ、まさに今日(笑)。



だってこの値段だったんだもの…(苦笑)。
中のトレイが少々汚れてましたが、盤・ブックレット・帯ともに状態は良好。まあこれも何かの縁だと思って、保存用として持っておきますよ。