進化しているか


 人類は進化してきて今があるのだけれど、ほんとうにどうなんだろう。

 「ある種のサルが人類に進化した。人類の決めては、直立二足歩行。これまでの説では、大人がまず直立二足方向を始めたことになっている。けれど、私はまず二足歩行に踏み切ったのは、大人でなくて赤ん坊だったと考えている。」
と言ったのは今西錦司。何故そう考えたか、今西はこう続けた。
 「サルの赤ん坊ににくらべて、人間の赤ん坊があまりにも未発達の状態で生まれてくることが、気になりだしたからだ。サルの赤ん坊は、手足の握力が十分発達した後に生まれてくるから、生まれたときから母親の胸にしがみつくことによって、母親が群れと共に遊動生活を続けていくことの妨げとはならないが、人間の赤ん坊にはそういう芸当ができないから、母親はどこかに隠れ家を求めて、そのなかである程度大きくなるまで赤ん坊の世話をしてやらなければならない。すなわちサル時代を通じての伝統であった群れの遊動生活というものに別れを告げて、永住的ではないにせよ定着生活をせざるをえなくなり、この隠れ家に定着している間に、未発達で生まれた赤ん坊が、発達とともに直立二足歩行を始めるようになったのである。」
 と仮説を立てた。人類の発生上に胎児化という現象が起こって、未発達の赤ん坊が生まれるようになった。この未発達が幸いして、赤ん坊の直立二足歩行を可能にした。そこから頭が大きくなる大脳化へと進化する。人類の文明はそこから起こってくる。

 ところで現代の人類は、どのような方向へ向かっているのだろう。宇宙にロケットは飛び、ドローンが物を運び、電子機器は限りなく進歩してきた。
 けれども、進歩の反対の退歩、ひょっとしたら退歩してるんじゃないかと思えるところが激しい。進歩する兵器による戦争、テロ、核開発に原発依存、森林破壊、地球温暖化‥‥、これら数百年前まではなかった地球規模の大量破壊、全生物の生存をおびやかす環境破壊が進行している。生きのびるための条件を、百年前、千年前よりも進歩させながら、生命環境を破滅させる条件も進歩させ、なお懲りない。地球レベル、国家レベル、地方レベルで、進行する破壊と進歩。