対の杭を探す

境界杭を探索するのは、ある意味宝探しのようなもので面白い^^

依頼された土地は、昭和30年に分筆された土地。
法務局にて地積測量図を申請するが、一元化前で備付けていない。

「見当たりません」の悲しい赤い文字が。

ならば、自治体に対して情報公開を請求するが・・・

「不存在」という理由で非公開の決定通知書。一元化前の測量図については、都内では市町村が保管している場合もある。

依頼された土地の所有者は代替わりしており、境界については詳細な記憶がなく、現地の占有状況と法務局備付け公図及び登記事項、依頼者に探して頂いた先代のメモ書きが頼り。

登記事項に記載された面積とメモを頼りに境界杭を探し当てる。

電柱の傍・・・・・。
電柱設置工事で杭が抜けていないことを祈りつつ・・・・。
現在の道路はアスファルト舗装されているが、昭和30年に杭が設置された当時の航空写真から、アスファルト舗装されておらず砂利道と判明。よって、杭が埋設された地盤高と異なっている可能性あり。
杭を傷つけないよう、斜めにタガネを当てて軽くハンマーを叩き、慎重にアスファルト面を剥がす。


出てきた境界杭。

20cmほど地盤面下にあり、大きさは9cm。

コンクリート製で中央に丸い窪みがあるのだが、横方向に→の刻みのペンキ。
ペンキの印がなければ、見ただけでは杭の中心が境界と判断してしまう。杭は素手で触るのが基本。
この種の杭は、昭和30年代に流行った杭で、コンクリートで出来ているものの、砂利が多くセメントの量が少なく表面はざらついている。
地中に埋まっている場合、水分により劣化しているので、少々の衝撃であっても欠けてしまうから掘削には注意を要す。

1つの境界杭を探し当てたので、分筆された当時の「対の杭」を探す。

巨大な物置・・・・。

人が入るスペースの確保のため、物置の中身を全て外に出して移動。

ブロック塀の基礎をタガネとハンマーで壊し、境界杭を見つけ出す。
基礎は一見硬くて壊し辛いが、基礎の最下部までスコップで掘り下げ、基礎の下から壊すと楽に壊れてくれる。

発見した杭


杭の材質は同種類だが、境界点の表示方法が異なる。

これは昭和58年に埋設された杭

セメントの含有量が多く、表面は滑らか。
杭の角が面取りされていて、境界点は杭の→の先ではなく、赤鉛筆の先端が境界点。



以前に探し当てた杭



これらと一致。

測量し登記された面積及び関係している土地の面積を比較したところ、許容誤差の範囲内であり、当時分筆されて創設された筆界と認定。

杭があるからこの杭を結んだ線が境界だ・・・・ではなく、杭が設置されていた当時の地形、杭の種類、分筆された土地の沿革、公図や各種図面類の読込み、関係土地の面積の増減歩率等、多くの検証をし、初めて筆界と認定することが可能になる。
小学生でも可能な稚拙な判断を、国民は土地家屋調査士に求めてはいない。