夏は足踏み

 今朝も明るい陽射しは厚い雲の彼方、
雨こそ落ちてきませんけれど、すっきりしません。
無風状態、ちょっと空気が重く感じられます。


 封切りしたら是非観たいと思っていた「風立ちぬ」、
私同様「観たい、観たい」と言っていた友人と行ってきました。

あちこちで話題になっていますし、夏休みでもあるので、
大混雑を予想して、しっかり予約をして行きました。
ところが、あにはからんや新宿ピカデリーの午前の部は
ゆったり状態、まことに快適でした。


 零式艦上戦闘機、いわゆるゼロ戦の設計者、

堀越二郎の生涯に「風立ちぬ」のストーリーを重ねた
ちょっと不思議な物語です。
関東大震災東京大空襲という大惨事を織り込みながら
その悲惨さよりも人々の健気さ、逞しさを描いています。
昭和という時代、そこに生きた人々への愛おしみが
映画の中に滲み出ています。
奥行きのある昭和の風景、家々、街々の佇まい、
時代を生きた人々の礼節、品格、慎ましさ、心意気、
懐かしさに胸がいっぱいになりました。
戦闘機の設計という戦争の真っ只中で生きた人を
主人公にした映画ですけれど、
戦争批判や強いメッセージを発しているわけではなく
ただ一言「一機も帰って来ませんでした」と
主人公に言わせているだけです。


 観る人の心に何かを突きつけるというのではなく
淡々と時代を、人を語ることで、
観る人にそっとボールを投げかけている、
そんな気がする映画でした。


 真っ青な空に浮かぶ白雲と美しい機影が
今も目から消えません。