第二部
マルセル・プルーストの小説、「失われた時を求めて」第一篇「スワン家の方へ」、第二部は「スワンの恋」。
出会い
オデットとの出会い、それはある劇場で、スワンが旧友からオデットを紹介されたことがきっかけだった。
男にはみな、それぞれ型は異なるが、官能の要求するタイプと正反対の女がいるもので、オデットはスワンにとって、まさにそういう女の一人に見えたのだった。オデットはスワンにとってどうでもよいような種類の美人、さっぱり彼の欲望をかき立てず、むしろ一種の肉体的嫌悪感すら起こさせる美人に見えた。
殺し文句
「愛情が恐くていらっしゃる?まあ、おかしな話ですこと。わたしなど、それしか求めておりませんのに。もし新しい愛情が見つけられるものなら、命を差し上げても惜しくありませんわ」とオデットはごく自然な、確信ありげな口調でつけ加えたので、スワンは心を動かされた。さらにオデットはこう言うのだった、「きっとどなたかのためにお苦しみになったにちがいありませんわ。そうして、ほかの女も同じだと思っておいでなのね。その女のかたはあなたを理解できなかったのです。だって、あなたってかたは、とてもほかの人とちがってらっしゃいますもの。わたしが最初からあなたのなかで好きになったのも、そのことなの。わたし、はっきり感じましたわ。あなたってかたは、ほかの人とちがうって」