ドライなミシェル・ウエルベック作品『闘争領域の拡大』『素粒子』を読んだ反動で、急にウェットな文学の極致ともいえるマルセル・プルースト(1871年~1922年)の『失われた時を求めて』が読みたくなった。20世紀文学の最高峰の一つとされながら、あまりの長さに多くの人が途中で投げ出し、知名度のわりに完読した人が少ないという手ごわい作品だ。私もかつて途中までは読んだのだが、多くの人の例にもれず途中で投げ出している。今回もはたして完読できるかは分からないが、それならばそれで、ともかく途中まで読んで続きは持ち越しにすればよいという気持ちで読み始めた。翻訳はいくつかあるのだが、私が選んだのは高遠弘美氏訳の光…