マルセル・プルースト(1871-1922) フランスの作家。二十世紀を代表する文学者の一人。 主著である大作『失われた時を求めて』は生前に4巻まで刊行された。死後、残された未定稿を遺族が整理して、5年後に全7巻で完結したものの、作者による修正作業は5巻の半ばまでしか行われていないため完成とはいいがたい。
人生でやり残していることは何かと考えたとき、読み終えていない長編小説があるのを思い出しました。 退職後にフリーの時間ができて、それを潰すのにスマホばかり眺めていました。気は紛れても満たされなくなってきました。 そこで、長編小説「失われた時を求めて」の読了をめざし、少しずつ読んだ部分の感想などを記事に書いていこうと思います。 同じように読みあぐねている人の参考になればうれしいです。 読書を通じて変わっていく自分を楽しむことーこれが最大の目標です。 使用するテキストは文庫本3種類の候補から選びます。 1、光文社古典新訳文庫 高遠弘美訳 2、集英社文庫 鈴木道彦訳 3、岩波文庫 吉川一義訳 3冊とも…
DVDでアメリカ映画『三つ数えろ』(ハワード・ホークス監督、1946年)を鑑賞した。原作はレイモンド・チャンドラーの探偵ミステリー『大いなる眠り』(The big sleep、映画の原題も同じ)で、フィルム・ノワールの傑作とされている。 フィルム・ノワールの傑作『三つ数えろ』 物語は私立探偵フィリップ・マーロウ(ハンフリー・ボガート)が大富豪の依頼で富豪の娘に対する脅迫事件の操作をするうちにいくつかの殺人事件とその謎に遭遇するというもの。ただ細部のストーリー展開がとても複雑で、私にはよく分からないところが多かったのだが、Wikipediaの記事を読んだところ「プロットが大変込み入っていることで…
今日、親戚の四十九日のお返しに、お菓子の詰め合わせセットをいただいたのだが、その中にマドレーヌが入っていた。たいへんおいしく舌の上で味わいながら、瞬間的に思い出したことがある。それは、プルーストの『失われた時を求めて』だ。この小説にプチ・マドレーヌが出てくる。“それは、人間の時間・記憶・存在の構造そのものを一瞬で明らかにする象徴的な意味を持っていた。”と、大昔、仏文科で習ったような覚えがあるのだが、はっきりとは思い出せない。小説の語り手が紅茶に浸したプチ・マドレーヌを口にした瞬間、「意志や努力とは無関係に幼年期のコンブレーの情景が奔流のようによみがえる」という場面がよく知られている。重要なのは…
今までほとんど読んだことがなかった堀辰雄を、機会を与えられたのでいくつかまとめて読んだ。 『美しい村』で、小説家志望なのになかなか書けない青年が、避暑地の散歩中に少女たちの一団とすれちがう場面を読むと、プルーストの『失われた時を求めて』の中の「花咲く乙女たちのかげに」で、語り手が避暑地の海辺で少女たちを見かける場面とそっくりなことに気がつく。 そう思って読むと、『風立ちぬ』で語り手と節子が隔絶された個室で愛を育む場面もまた、「囚われの女」におけるアルベルチーヌと語り手の閉塞的な同棲に似ているように思われてくる。 若い頃からプルーストに親しんだ著者の、自分なりの咀嚼の結果と言っていいだろう。 プ…
マルセル・プルースト『失われた時を求めて』を読みはじめたが、あまりの長さに最後まで読み切ることができなかった、迷路にまぎれこんだようになった ― こうした話はよく耳にします。挫折せずに長編小説を読み進む、しかも味読する秘訣はあるのでしょうか。あります!などと大声で断言することはできません。でも、わたしなりの読書道しるべといったものでよろしければ、持ってます、とわたしは小声でお答えします。以下にその一端をご紹介させていただきましょう。迷宮脱出のためのアリアドネの糸が見つかることを願いつつ・・・。 わたしは、2014年にフランスの権威あるプルースト研究誌Bulletin Marcel Proust…
私のブログ「オルフェウスの歌」の電子書籍(Kindle版)が発売されました。 書籍のタイトルは『新版 受容から創造へ―文学・芸術に導かれて Kindle版』です。この2025-06-23の記事は加筆・再編集のうえ書籍化いたしましたため、本文の掲載は控えております。 恐れ入りますが、内容は書籍にてお読みいただけますと幸いです。 詳細については2026年4月21日の投稿をご覧ください。 リンクはこちらです。 https://aushiba.hatenablog.com/entry/2026/04/21/171720 〇アマゾンへはこちらをクリックしてください ← 〇楽天ブックスへはこちらをクリック…
フェルメールの絵を見るほど、心に広がるのは静謐です。 これほど慎ましやかでありながら、色彩の力を画布に定着した人はいないと思います。情熱的で荒々しく、構図も色も雄弁な画家はたくさんいます。フェルメールはわたしにとって、その対極。日常を描いて、光の粒がひっそりと画布を満たしているような。 「牛乳を注ぐ女」 「真珠の耳飾りの少女」以上、画像はwikiから。 ヤン・フェルメール(またはヨハネス・フェルメール)は、17世紀のオランダに生きた寡作の画家。当時のヨーロッパで特段の注目を集めることなく、30数点の作品を残した人でした。ところが今や、バロック期を代表する画家の一人に数えられ、日本でも大人気です…
自治会の作業の終わりがようやく見えてきたので、アルバイトの通勤時間や休憩時間を使ってプルースト『失われた時を求めて』~第五篇「囚われの女」(集英社文庫、鈴木道彦氏訳、2007年)を読んだ。 芸術への疑問が記された「囚われの女」 『失われた時を求めて』の邦訳では、翻訳者による訳文の違いがよく話題になるが、この第五篇からはプルースト没後の刊行で、プルースト自身が最終的な推敲を行っていないのでテクストに曖昧な部分がある。このためどういうテクストを採用するかも翻訳者の判断にゆだねられ、誰の翻訳がいいのか、訳文だけでは一概には決定できない。結局、自分が選んだ翻訳者を信頼して読むしかない。 さて「囚われの…
1. 恋人アルベルチーヌは突然マルセルと別れ、その出奔後に落馬事故に遭い、死亡する。主人公マルセルは絶望にかられるが、アルベルチーヌの真の姿を知ろうとして、彼女が生前に見せたさまざまな面を思い出しては、真実の追求を様々な角度から続ける。しかし、彼女の同性愛疑惑についても、確証は得られない。 やがて、忘却の時期が始まり、それは三つの段階にわたって詳述される。確かに、アルベルチーヌは少しずつ消えてゆく。しかし特徴的な点は、習得を重ねつつ「書く」という実践へと向かういわば肯定的なプロセスも同時に描かれていることだ。アルベルチーヌの失踪、そして忘却へ向かう動きとは反対に、次篇『見出された時』掉尾でマル…
嗅ぎ回るって、警察のまわしものでも、怪しいものでもありません。 一昨日の続きで脳の活性化。 五感、特に嗅覚を使うことが大事なのだそうです。 五感って何? 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚ですね。温度認識、空間認識や平衡感覚も加えようと言う人もいます。あと第6感ともいわれる霊感もですかね。 現代人はほとんどの情報を視覚から得ています。そしてそれ以外の五感は、かなりおろそかになっています。原始時代は五感を研ぎ澄まさないと生きて行けなかったのに、いまでは視覚偏重、スマホなんかが普及してなおさらですね。味覚だって生存のためなく娯楽のため、触覚もそうですよね。 このうち、嗅覚は生命を維持するための安全機能の…