マルセル・プルースト(1871-1922) フランスの作家。二十世紀を代表する文学者の一人。 主著である大作『失われた時を求めて』は生前に4巻まで刊行された。死後、残された未定稿を遺族が整理して、5年後に全7巻で完結したものの、作者による修正作業は5巻の半ばまでしか行われていないため完成とはいいがたい。
本日は久しぶりで野暮用にでかけることにです。旅の土産は紙ものでありま して、主に松阪市で集めてきた展示施設のパンフなどを持参することにです。 その地でのお菓子などよりも、紙もの資料のほうを喜んでくれる人がいるとい うのはありがたき環境であります。 本日にたずねて来てくれた人に、その資料を見てもらいましたら、彼は小津 安二郎の大ファンということで、松阪市立歴史民俗資料館2階の小津安二郎記 念館で配布の資料をことのほか喜んでくれました。ということで、本日は彼に 資料を贈呈することになりました。 読書家の彼と話をしていて、今回の旅の持参本は何かということになったの ですが、彼からは松阪だから足立巻一…
『失われた時を求めて』の文体は長い。平均的な文の長さの二倍にもなることもしばしばだ。冒頭のまどろみや、それに続く小さな田舎町コンブレの描写においても、使われる表現はむしろ平明なまま静かにゆったりと文章が繰り広げられてゆく。難解な語彙や美辞麗句が連なるのでもなく、また知性による分析が続くだけでもない。 しかし、読み進むにつれ、われわれ読者はこの長い文章が、作者プルーストの精神の息遣いのようなもので構成されていて、それが間隔をおきつつも反復されてゆくことに気づくようになる。小説の主要テーマが文章の中にすでに表現されるのだ。文はそれだけで作品のヴィジョンを語っている、とプルーストは最終篇『見出された…
光文社古典新訳文庫版(高遠弘美 訳)。 いつか読んでやろう、と思っていた本のひとつで、そのいつかがやって来た。読みやすい訳のおかげで面白く読んでいる。が、自分がどこをどう面白く感じているのか、まだよくわからない。ただ、子どものころ、主人公と同じ風景を見たことがあるような、同じように感じたことがあるような、ときどきそんな気がするのが不思議。 有名なマドレーヌのくだりはすぐ登場した。すぐ出てくるから、みんな知っているってことなのか。 全7篇のうち、第3篇の『ゲルマントのほう』までと、第6篇の『消え去ったアルベルチーヌ』が出版済で、完結してないのが気になるところ。残りは他の翻訳を読むしかない。 失わ…
この長編小説では当初主役として舞台前面で照明を浴びて目立っていたものが、読み進むにつれやがて少しずつその存在を希薄にしてゆきます。反対にそうした全般的な流れに逆らうようにして、それまで目立たなかった脇役たちが舞台の袖から登場してきます。長く主役をはってきたものは翳り、それに代わりそれまで役割も明確ではなかったものが新たに活躍を始めます。 まず社交界で、次に恋愛において起きる大きな変化を追ってみますが、それに重なるようにして主人公マルセルの内面においても大きな変化が起き、主人公は変貌することになります。<ゲルマント公爵家の没落> 社交界の中心となるのは、なんといってゲルマント公爵家です。王家とも…
■1.6(Thu.) 曇りのち雪 関東の南沿岸にもう一つ別の低気圧が発生したらしく、予想以上の大雪になる。 news.yahoo.co.jp 学童に行っている息子は帰り道、きっとはしゃぐに違いない。自宅に居る娘は「雪だ雪だ」と騒ぎながらも、冬休み最後の一日を過ごしている。 わたしは、今週在宅勤務。昨日は朝から体調が悪く、なんとか夕方までもったが早めに退勤をして少しベッドに臥せっていて、今朝はいつもの〈朝勉〉もパスして二度寝、そのおかげか今日はまずまずの体調でいる。 午後はずっと会議でしゃべりっぱなし。『失われた時を求めて』は、最初の〈まどろみ〉の部分の真っ最中から抜け出せていない。 そして、哲…
■1.5(Wed.) 晴れ関東南部は(も)、ぐっと冷えた朝だ。夜間スクーリングで残っている[政治思想論]の期末レポートに取りかかる。来週1/11までの提出。課題は2つ、容赦ナシの4300文字だ。週末までにはざっと脱稿しておいて、土日に推敲、という具合に行きたいところ。ご存じのように、『失われた時を求めて』には日本語では複数の訳本が存在していて、翻訳に関する技術も知見も積み重ねがあるだろうから、わたしは基本的にはいつも〈新訳〉を信用して採用する。 今回の『失われた時を求めて』では、本棚に2種類の訳本の第1巻目があって、言うまでもなく「岩波文庫版(吉川一義訳)」と「光文社古典新訳文庫版(高遠弘美訳…
■2022.1.4(火) 晴れTwitterを眺めていたら、ふとしたことでプルーストの『失われた時を求めて』を読みはじめようという呟きに出会い、つい反応してしまう。今年、森鴎外を読もうかなと思っていたのですが、少し気が乗らなくて、昨年、いくつか「うしとき(失われた時を求めて)」文庫本を集めていました。そのまま年が明けてしまってどっちつかずだったところに、岸波さんのtweetを発見したという次第です。— nikolaschka (@xaqihooo) 2022年1月4日 去年だったか、柿内正午『プルーストを読む生活』(H.A.B)を読んでいて、いつかはプルーストも読みたいと思いつつ日々に流されて…
YouTubeチャンネルの「フランスを読む」では、今回、根本美作子さんによる「失われた時を求めて」をお送りします。マルセル・プルーストによる大作です。途中でストップしてしまう読者も少なくありませんが、今回、根本さんが読みどころと魅力をたっぷりご紹介します。フランスでは2020年11月からコメディ・フランセーズの俳優たちによる朗読リレーをYouTubeにUPしていますが、コロナ禍と「失われた時を求めて」は親和性があるのかもしれません。米国ではスマホで読む人もいろそうです。 www.youtube.com
左から、ヴィトゲンシュタイン、ヒトラー、ハイデガー。1889年生まれの同い年。 それまでの哲学をひっくり返した天才、ヴィトゲンシュタイン。ナチスの指導者、ヒトラー。そして、究極の哲学書「存在と時間」を著した、ハイデガー。奇しくも時代を動かしたこの3人が同じ年の生まれであるとは。。。なかでも、ハイデガーは、私を宗教2世の呪縛から解き放ってくれた恩人。「存在と時間」は未完の大著。挫折の金字塔なのだ。なぜそれが上梓から100年を過ぎても、今でも問題の書なのか?それは存在論に正面から挑んだ、人類最初で最後の書だから。 皆さんは、一度でもこんな疑問を持ったことがあるだろうか?「なぜ何もないのではなく、な…
上の写真は左から、 展示会案内状、作品「風と共に去りぬ」、作品「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 小林雅子さんの作品 ― アート作品と呼ぶべきか― の一部は当ブログのタイトルバックとして掲載させて頂いています。 6月のとある日、小林雅子さんの展覧会を東京銀座のど真ん中にある小松庵総本家銀座に観に行きました。小松庵はお蕎麦屋さんですが、17時までは展示会場・サロン会場として開放されています。展示を観たあと、お蕎麦屋さんに変わった会場でおいしいお蕎麦も食べました。 本が大好きな小林さんは、鋭利なカッター・ナイフを握りながら、本の急所とも思われる所へ踏みこみ、そこに切り目をつけます。切り開かれた…
ゴールデンウィークに岐阜に帰省したとき、久しぶりに「みんなの森 ぎふメディアコスモス」に立ち寄った。 ぎふメディアコスモスは、岐阜市立図書館を中心とした複合施設で、多摩美術大学の図書館などを設計した伊藤豊雄氏による建築の居心地がとても良くて、「冴えない地元だけど図書館だけは今住んでるところと取り替えてほしい...」と訪れるたびに毎回思ってしまう。 子ども達も広い図書館の中をめいめいに、興味のある本を探して歩き回っていたが、その中で、子供向け書籍の一角に、世界の文学名作をまんがで読める「まんがで読破」というシリーズのコーナーがあるのが目に止まった。 そのいくつかをパラパラとめくってみたら、小5と…
・采女の怨霊・歴史のなかの大地動乱・プルーストからコレットへ
こんばんは🌟 トランポリンです*1 昨日は、匂いが記憶に残るプルースト効果について書きましたね😊 trampoline777.hatenablog.com 本日は、プルースト効果の印象づけに関わるトランポリンがオススメするオーガニックな香水3つ紹介します✍️ ◆おすすめの香水3選 1.SINN PURETE エシカル、オーガニックな特徴: 植物由来成分90%以上を配合🌟 自然由来の原料やサスティナブルな原料を可能な限り採用🍀 オーガニック認証のある原料を積極的に採用。 クルエルティーフリー✨✨ https://ethical-leaf.com/1187/ 2.Neal‘s Yard Remed…
こんばんは🌃 トランポリンです( ^ω^ ) 「歌手の瑛人が歌う「香水」って、めっちゃ流行っていたよね😊」 隣で話すのは、友人の橋本さん✨✨ たしかに、私も一時期は沢山聴いていて 歌詞の中で、 『君のドルチェ&ガッパーナの香水が思い出させる』 というフレーズが今でも頭に残っています✨ 実は、香水の香りで元恋人の事を思い出すという現象は、プルースト効果と呼ばれる現象だそうです😊 本日は、「プルースト効果」について書いていきます✍️ https://www.karumoa.co.jp/column/smell/column-12063/ ◆プルースト効果とは? なぜ匂いを嗅ぐと記憶が思い出されると…
薄い本を読むパート2 - Close To The Wall 一年おきにやってる気がするこれ、三回目。今回は厳密ではなく本文200ページ前後、とややゆるめに選んだ20冊。冊数も記事も分量が増えて行っている。 フリオ・ホセ・オルドバス『天使のいる廃墟』 ミルチャ・エリアーデ『令嬢クリスティナ』 フランツ・カフカ『変身』 アントニオ・タブッキ『島とクジラと女をめぐる断片』 イタロ・カルヴィーノ『ある投票立会人の一日』 スティーヴン・ミルハウザー『魔法の夜』 パーヴェル・ペッペルシテイン『地獄の裏切り者』 イマヌエル・カント『永遠の平和のために』 閻連科『年月日』 宮内悠介『黄色い夜』 ヴァージニア…
五月二十一日が「小満」であるという。「陰暦四月の中で、立夏の後十五日、陽暦の五月二十一日ごろにあたる。陽気盛んにして万物しだいに長じて満つるという意である。」(『カラー図説日本大歳時記』講談社1983年刊)たとえば、丸太町通から雙ヶ岡(ならびがおか)の西の裾に沿って国道162号を上り仁和寺の門前から来る一条通を福王子神社の角で越してその先、周山街道となって下りはじめる右手に見える嵯峨野病院の看板の足元に「いづみ谷 西壽寺」という小さな石の道案内が立っている。この案内に従って道を上って行けば民家の間を抜けて山裾の上の嵯峨野病院の入り口に出、そのまま傍らを奥に進めば西壽寺(さいじゅじ)である。尼寺…
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。 earth-words.org 無知の知 「こわい」を分解すると、ほとんどが「知らない」と「わからない」でできている。だから知識が必要なんだよ。 — 平 熱 (@365_teacher) 2021年3月8日 自分が知らない状態を恐れてすべてを知ろうと質問攻めになることも少なくないだろう。その都度思った不安を解消していく程度で良く、多くを一度に知ろうと思っても点ばかりが増えていって、後で線を引く際…
プランターを覗き込んだら、今年最初の小さな芽がひとつ出ている。 朝顔の種を撒いたプランターなんだから朝顔の芽なのだろうとは思うが、昨シーズン面白がって雑にばらまいた果物か野菜の種である可能性も否めない。 しかし、去年見た朝顔の芽もこんなふうに色味の悪い冴えない感じの若芽だったような気もするので、するってえと、たぶん朝顔。 発芽一日目にしてさっそく猫に食われては切ないので土を被せて隠しておきたい気にもなったが、せっかく目覚めて出てきたところをまた二度寝されるのも困るし、幸運を祈ってそのままおくことにした。 七難八苦を乗り越えて太陽に向かってゆけ。 ベランダにいる猫が、何の物音に驚いたのか四肢を踏…
2022年5月のWorld Topics(郵趣サービス社が行っている切手頒布サービス)は、フランスのナポレオン1世没後200年、ドイツのゾフィー・ショル生誕100年、そしてモナコのプルースト生誕150年切手である。 切手の入荷状況によるのか、最近のワールドトピックスはヨーロッパからのものが大半である。単価をあげてもいいので、多様な国の切手もとりあげてほしい。 しかしこのフランスのナポレオン切手は、豪華な仕様であり、肖像画の金ラメの飾りもいいし、下のセントヘレナ島での立ち姿も哀愁があってよし。
本や音楽は危険だ。感動は枯渇した精神を潤すが、同時に人を死に近づける。「芸術は人を幸福にすると同時に老けさせる」とは、トーマス・マンの言葉である。刺激は麻薬だ。一つの刺激に慣れると、それ以下のものに退屈を覚え始める。胸を揺さぶる読書体験をした人は、以前には興じることのできたものを冷めた目で眺めるようになる。美しい音楽に心を奪われた人は、普段なら楽しめるはずの遊びを空虚に思うこととなる。感動はそれまでの自己同一性を喪失させるのである。 芸術はよく逃避の手段として用いられる。愛好家たちは、麻酔に打たれるかのような官能を求めて作品に触れる。痺れる感覚、苦痛が薄れ、意識が遠のいていく。全身を小刻みに震…
小説書いてみたいという欲がないわけではない。 好きに書けば書けるだろう。 しかしほぼ100%自己満足なだけだ。 自分を振り返れば分かるけど、小説とかなんか、ハクがついてるか、さもなければ自分の興味のある話題が入ってなければ読もうともしないからね。 女性なんか無名な作者のを好んで集めることがあるけどそれはBLマニアの腐女子みたいなのが多いのだと思う。 プルーストとかジョイスみたいなのが売れたりした時代って、現代からすると異常なんだよね。 一枚の絵を描いてた方が、趣向を分かってもらうという点でははるかにましだ。 もしかすると漫画描くよりましかもしれない。
こんにちは。もりもり日記です。雨の日は、なんとなくテンション上がらないですね☔それでも少しづつ気温が上がり、季節が夏へ進んでいるのを感じます。 *** 我が家は、私が大学生の時に乗っていたJRの路線が近く、窓から電車の往来が見えます。学生の時にしか利用しない路線だったので、現在はその電車に乗ることは滅多にありませんが、電車を見るたびに懐かしい気持ちになります。先日、寝る前の話です。夫が残業で遅く、一人で先に寝ようとしたのですが、部屋の中がどうにも暑く、寝室の窓を開けると、電車の音が聞こえ、あかりがついた電車がちょうど走っていきました。少し涼しい風の匂いが、なんというか夏の匂い?という感じで、そ…
そういえば連休期間中にブックオフはセールをやっていて、それにいって 何冊か購入したのでありました。ひどく読書のペースが遅いところにもって、 図書館から借りたり、いつまでかかるかわからないプルーストに手をだしたり しているのですから、とってもブックオフで買ったものの割り込む余地はない のでありますが、それでもブックオフは、大人の駄菓子屋でありまして、ここ でワンコインで何冊か購入し、読書生活に刺激を与えるのですね。 そのかいがあるのかないのかですが、購入した本が積まれるのを見て、これ は読まなくてはとすこしは気合がはいることです。 今回は連休の旅行に持っていこうかなと思ったものもあったのですが、…
1)小説作法 西欧が近代化する中で、世界をモノとココロに分ける考え方が広まりました。 近代的な小説は、ココロを中心に構成されています。 プルーストは、失われた世界の冒頭で、ココロからモノを投影するという芸当をして、モノは動かなくても小説が進められることを示しました。 読者が感動するココロの変動パターンは研究されており、ココロの変化は同じでも、モノを入れ替えるような衣装変えの手法は広く使われています。 古い映画をリメイクする場合、シェークスピアの作品を下書きに小説を書く方法、連続ドラマ、ハーレクイーンロマンスなどの例を上げることができます。 ココロの変化のパターンが類型化されることで、読者は、小…
26歳になり、"色々"と思うことがありブログを改めて始めます。本ブログでは、私が本を読んで思ったことや思い出したことを書き連ねていきます。 "色々"といいますと色々なんですが、一つ私の中2022年の重要テーマとして、文学少年カネコに向き合っていこうかなということがあります。私はずっと文学少年としてのカネコが好きではありませんでした。微細な感情を汲み取り、解釈し、内奥に落とし込む。ぐるぐると内面に沈んでいくカネコが嫌いで、いなして躱して生きてきた丸26年がありました。カネコはことある毎に顔を出すのですが、考えないくらい忙しくするという習慣で、躱し続けてきました。少年の頃は部活やアルバイト、社会人…