最後に、黄色い夕空を見上げたのはいつだっただろう。 空気の密度を肌で感じる、初夏の夕暮れ。 定時より、少し早く退勤したある日。二、三駅隣のバス停で下車した僕は、ある場所へと向かっていた。 いつか行こう。そう思っていたスーパー銭湯である。 帰宅ラッシュの車が行き交う幹線道路を曲がると、少しこぢんまりとした住宅街があわられる。灯り始めた街灯をなぞっていくと、目的の銭湯に到着した。 自動ドアが開く。わずかな冷気が体をすり抜けたのち、鼻先を温泉の香りがかすめていく。平日夕方の、少し賑わいをおさえたエントランスはほんのりと暗い。 入館受付を済ませ、暖簾をくぐる。エントランスと同様に、静かでガラガラの浴場…