自動車保険参考純率(等級制度)改定(2011年9月届出)

損害保険料率算出機構は、自動車保険の参考純率の一部であるノンフリート等級別料率制度の等級係数に対して「無事故係数」と「事故有係数」に分ける改定等を行いました。この改定について2011年9月26日に金融庁に届出を行い、同年10月21日に適合性審査結果通知を受領しました。
改定内容については以下の2点です。
自動車保険参考純率改定説明資料[PDF 322KB]」
http://www.nliro.or.jp/service/ryoritsu/jsiryo201110.pdf
(損害保険料率算出機構 トップ > 業務内容 > 料率算出業務 > 参考純率に関するお知らせ > 参考純率改定の内容)

(1)等級係数の見直し
等級係数を「無事故係数」と「事故有係数」に細分化します。なお、これに伴い全ての等級について、直近のリスク実態を基に等級係数を見直します。

 

(2)すえおき事故の廃止
現行制度ですえおき事故に該当する事故があった場合、リスク実態に応じた保険料負担とするため、1等級ダウンとします。

 
この内容に付随して、「事故有係数適用期間」が導入され、その期間内は前年無事故であっても「事故有係数」を適用しなければならないとされています。
私ははっきり言って、何故このような改定をしたのか理解できません。
リスク実態に合わせて保険料率を変更するのは分かるのですが、複数年に渡って「事故有係数」を適用しなければならない制度設計とする必然性があるのでしょうか?
これは営業現場とバックオフィスでの事務処理も相当の負荷がかかるであろうことは、営業経験のない私ですら容易に想像できます。
現場で混乱を招くような制度はいずれ不適正な扱いが生じます。それは付随的保険金の支払い漏れや火災保険の構造級別誤りによる保険料の取り過ぎで問題になったばかりです。
算出機構は、実務がどうなるかの考慮をまったくしない理屈をこねているだけの頭でっかちの集団ではないかと思えてきます。
事故有契約のリスクが高いなら、「事故有係数適用期間」を導入せず、翌年契約を3等級ダウンではなく6等級ダウンにするなどとした方が余程マシではないでしょうか。(2・3・6と異なる等級ダウンを持っている全労済の等級制度がこれに近いと思います。)
 
参考純率が改定されたら、その参考純率を使っている保険は一定期間内にその改定に対応しなければなりません。これは、金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」にて下記のとおり定められています。
なお、参考純率の改定が自動的に各社の保険に反映するのではなく、各社が自社商品それぞれについて改定の認可申請をし、それが認可されることによって各社の保険に反映することになります。
したがって、改定実施時期は一定の範囲内で会社によってばらけるのが普通です。

Ⅳ−5−6 参考純率改定への対応
純率の算出に参考純率を用いている保険商品において、その参考純率の改定について損害保険料率算出団体に関する法律第9条の2 第3項に定める通知を受けた日から原則として1年以内にその使用している純率を新たな参考純率に基づいて改定しない場合には、その使用している純率は参考純率を基礎としておらず、自社独自の料率とみなされることから、引き続き使用する純率の合理性・妥当性について、法第128条に基づく報告又は資料の提出を求めるものとする。

 
また、全国共済農業協同組合連合会(JA共済)・全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)・全国中小企業共済協同組合連合会(中小企業共済)については、その自動車共済に等級制度があり、一般社団法人日本損害保険協会の情報交換制度に参加していても算出機構の自動車保険の会員とはなっていません。それに「保険会社向けの総合的な監督指針」の適用対象でもありません。
従って、これらの共済については今回の改定を自社商品に反映させる必要はないはずです。
もし反映させなければ、事故あり契約は一定量がこれらの共済に流れるという現象が見られるかもしれません。算出機構の詳細資料は会員外秘なので、同様の改定をしたくてもできないかもしれません。
 
共済が「事故有係数」を新設しなかった場合には、当然に「事故有係数適用期間」も保持しないことになろうかと思います。
では、事故を起こした契約であっても、共済を挟んでから保険会社に戻るとどうなるのでしょう?
例えば、A契約でカウント事故1件あった場合を考えて見ます。
【ケース1】A契約(保険会社)→B契約(共済)→C契約(保険会社)
【ケース2】A契約(保険会社)→B契約(共済)→C契約(共済)→D契約(保険会社)
ケース1・ケース2のいずれも、共済での契約においては「事故有係数」は適用されず、保険会社での契約においては「事故有係数」が適用されるべきということになります。
問題は、ケース1のC契約,ケース2のD契約において、「事故有係数適用期間」を正しく把握することができるか?という点にあります。噂では、【ケース1】は前々契約であるA契約の情報により把握するようなことが言われていますが、3つ以上前の契約にまでは遡って把握するのは難しいようです。
なにしろ、A契約でカウント事故が2件あると「事故有係数適用期間」は6年にもなるし、共済でも事故があったらもっと長くなるので理屈上は確認可能でも実務上は不可能でしょう。
このあたりからも、算出機構は頭でっかちで現場のことを全く考慮しない体質であることがうかがえます。