鑑賞記録

文字だけツラツラ並べても書いた本人しかわからない、展示の感想なので申し訳ないですが記録として・・・
ギャラリーに作品を見に行くのは、いつもの日常とちょっと離れて、だけどいつもの日常と確かに繋がっている不思議な空気に、スッと触れることが出来るからかなと思う。「アート」はイベントじゃないんだよ。


石井保子写真展「特急電車64号」コニカミノルタプラザ | 以前、郊外の新しい住宅を撮影した展示も素晴らしかったけれど、今回もとても良かった。西武線からの車窓風景を撮影した作品で、冬、恐らく12月の、夜に差し掛かる一歩手前の夕暮れの街を、ザラッとほの暗い滲んだ画像で捉えていて、どこか寂しげで、じんと胸に刺さって立ちすくんだまま泣きそうになりました。散歩して差し掛かる小さな私鉄駅の商店街は、あたたかく見えてもどこか沈滞して、憂鬱で、時間とともに心もそこにいるままに見えるときがあります。その感覚と共通するものを感じました。
今回の会場であった、新宿のコニカミノルタプラザは閉館する予定だとニュース記事で見かけました。ここは駅からすぐの場所にあり、ぶらりと行けることが魅力で、尚且つ3つのギャラリーが併設されているのでどれか一つは自分に合う写真展であることも多いのです。なのでよく通っていたのだけど、このご時世、企業がこういったスペースを維持するのも困難な話で、カメラ事業から撤退した今となっては当然継続する意味はないわけで。世知辛い世の中だねとしかいえない、のかな。


横浪修 「ASSEMBLY & Snow」エモン・フォトギャラリー | すごく好き。具象が抽象へ変化する狭間の、曖昧な色と形がとても好き。心の奥底が静かに湧き上がってきて、ぼーっとしてしまった。ここのギャラリーの雰囲気と相まって、よい時間だったなあ。


伊藤存ふしぎなおどり」タカ・イシイギャラリー | 伊藤さんの作品といえば刺繍による絵画なのですが、繊細なつくりで大胆なことをやっていて、間近から遠くから、見ていていつも楽しい気持ちになる。北参道にあるここからそのまま渋谷まで歩いた。周辺は拡幅工事がようやく目処がつき始めた感じ。テナントビルやマンションは新旧入り混じり、記憶が混在してくる。原宿のパレフランセ跡はようやく高層ビルが出来てきた。長かったね・・・


トーマス・ルフ展 国立近代美術館 | 場内写真撮影可にすることで「写真を写真で撮る」という面白い行為が発生し、「何故、それを撮るのか」という根本的な問いかけがスマホのシャッター音とともに浮かびあがっていることが興味深かった。所蔵作品展では大好きな萬鉄五郎にいつも力と笑みを貰うし、畦地梅太郎木版画やドイツ近代写真のコーナーがとてもよかったなあ。エアポケットなあの空間で過ごすのが好きです。


杉本博司「ロスト・ヒューマン」東京都写真美術館 | リオープン記念企画としては気合の入れ方を間違えた感あり。うーむ、と早々と出てしまった。隣接の三越は相も変わらず閑古鳥、テラスではビールフェスで賑わっている、私には行き場のないガーデンプレイス。あの空間はどういう人々を集めたいのかズレたままだなー。全体でトータルコーディネートして、写真・映画・物・食を繋げることは出来ないのかしら。


クリスチャン・ボルタンスキー「アニミタス−さざめく亡霊たち」東京都庭園美術館 | 亡霊の表現方法をあのやり方でするならば、音響や映像はもっとハイクオリティのものにしてほしい。敢えてなのかもしれないけれど、あれじゃただの雑音だ。