「こんな時代が来るなんて」
東京新聞の記事を紹介した際の、かっこちゃんの言葉が心に残っています。
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前に柴田先生が、
「こんな時代が来るなんて」
ってぽつりとつぶやかれたのです。
私は柴田先生のおっしゃることがすごくよくわかりました。
重い障害の方や、寝たきりの方が、
思いを伝える方法を子どもさんと一緒にみつけられても、
「うそだ」とかあるいは、手を動かすことをひどいときには「虐待だ」とか、
名前を売りたいのだとか、そんなことを言われてしまう時代があったのです。
だから、みんなが思いを持っているということを、
あるいは、思いを表出する方法を知らせることを、
報道の方も、やはりとても慎重になられて、
なかなか大きく取り上げられるようなことはなかったと思います。
でも、本当のことはやっぱり曲げられるものではないのですね。
東京新聞の方も、おそらくはものすごく勇気を持って、
大切なことだからと、大きな記事として、取り上げようとしてくださったのだと思うのです。
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郁代が亡くなった時、まわりの人の誰もが言いました。
「若いのに、かわいそうに・・・」
若くして亡くなっただけで、これまでの人生すべてが否定されたような気がして、
大きな違和感を持ちました。
郁代の思い出を書いた本、「あなたにあえてよかった」をどこで知ったのか、
スタッフの方が家までやって来られ、
テレビ番組を作りたいと話されました。
その頃私の心は今より凍っていたし、
こんな悲しい出来事を公開したくないと頑なに拒んで困らせたものでした。
場所は日本武道館、『24時間テレビ30回記念番組』のオープニングで放送されたとき、
「死んだ人を主人公にする、こんな時代が来るなんて」
「テレビ局は勇気があるなあ」
と思ったのです。
それまでは、ハンデイに負けないで“懸命に生きる人”が登場していたのに、
郁代の番組は“死んでしまった人”が主人公だったからです。
この年は秋川雅史さんの「千の風にのって」が一大ブームとなった年、
死者が生者に語りかける内容にもかかわらず、
日本中、どこででも歌われた年でした。
郁代の番組でも歌って下さっています。
この年の紅白では、秋川さんが「千の風にのって」で初出場したのでした。
そして、この頃から「死」を語ることはタブーではなくなったような気がします。
まもなく迎える「3月11日」。
「亡くなった人」は私たちのすぐ近くにいて励ましてくれている。
日本中の人が祈りの1日にしたいものです。
2007年8月、『24時間テレビ』のオープニングで放送されました。