■ノエイン もうひとりの君へ06ナミダノジクウs北嶋博明c&d田中孝行g中屋了小美野雅彦相馬充高田晃見嶋梨香g補佐千陌十一

自分のラクリマの世界に釣り上げられたカラスは、待ち受けていた兵隊たちに捕獲されます。カラスの背中の触手が内蔵みたいな描写されていて気持ち悪い。
カラスは、地下牢みたいなところに逆さづりで貼り付けにされてしまいます。


ハルカは、研究室に幽閉。こんな異常な状況なのに、あからさまに怯えたりする演出はしないんだ。「誘拐すると親が悲しむよ」と言ってみたり、食事に出されてきたもぞもぞ動いている芋虫を割と普通にたべちゃったり、それがこのキャラクターなのですね。
「それぞれの時空に自分と同じ存在がいるという多元宇宙設定」をベースとする世界設定なのだと説明あり。


さて、円卓でこのラクリマの民の偉い人たちが会議してます。円卓の座席には空席が多数。雑な作りの人形がのっていたりもします。
「少女の形をしたあれが高密度なレイズ素粒子集合体だとは予想がつかなかった」とか、「蛮族、シャングリラの侵蝕をこれで阻止できる」とか、「レイズシミュレーターに龍のトルクを組み込めば、シャングリラの侵蝕を食い止めることが出来る。」とか「それも仮定だが。」とか、「この事態は、人類がこの宇宙に存在する意味を試されているのだ」とか、「われわれは絶対的観測者によって確認されるのか。それとも」とか。
世界設定の断片がいろいろ語られます。
量子化した世界だから、観測者に確認されると状態が変化しちゃうってことですか。


さて、ハルカは、この後、研究室を脱走。建物を外に出て上を見上げると、非常に大げさな装置でシャフトみたいなギミックが動いてます。エレベータで「上の階層」に行くと、浮浪者たむろする地下貧民街。


そうか、未来世界の美術や、衣装、階層社会と地下の貧民街。これは、テリー・ギリアム的なビジュアルに凝ったデストピアものでもあるのか!エリスンの少年と犬とかも想起。これは大好物です、わたくし。
さらに、この世界のミホの子供とおぼしき子供にここは地下だと教えられ、地上に出ると・・・・そこは廃墟。夕景に染まった廃墟に鳥の羽が舞っているのを見ると、板東真砂子の曼荼羅道も思い出すな。


そこには、フクロウと、女研究者が待ちかまえていて、ここは15年後の函館だと教えられます。女研究者は自分がアイだと申告。とまどうハルカ。
とすると、フクロウは、フジワラくんか。Bパート冒頭で思わせぶりな会話をしていたし。


一方、日常の、ハルカが連れ去られた函館。夕暮れの公園で、思い詰めたユウを、アイ、ミホ、フジワラが囲んでいます。とにかくハルカを探そうというところに、おっさんと女の二人組みが登場。
二人は、女博士と刑事だということを申告。女博士は「もしホイーラの泡に巻き込まれて時空を移動したなら、もうこの世界には戻ってこれないかもしれない」などとかなり事情を把握していることがわかります。


そんな感じで、この作品のもう一つの売りの日常パートも、この場面の続きとして、アイが呼んだ女教師と、女博士が大人げない喧嘩をする場面が挿入されて非常にサービス精神が旺盛。
暗い世界と明るい世界が交互に挿入されるアクセントの強弱も巧いし、道具仕立て、舞台仕立てが非常に多彩で、しかも空転していない。非常に面白いですよこれは。