「暗号解読」

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

長門有希嬢が読んでいたから」という非常にミーハーな理由で手にとって見たのですが、いやこれはすごい。めちゃくちゃ面白いですよ? もともとこういうサイエンス一般書に弱いこともあって、巻を置くあたわずの勢いで読みました。おかげで寝不足。


歴史上、長年にわたって続けられてきた暗号作成と解読の戦い。筆者は平易な筆致で実に興味深く読ませてくれます。「解読不可能」と言われた暗号が人々の努力の元、一つ一つ破られていくのには素晴らしい知的興奮を感じました。大げさなようですが、人類の知恵を見直すことになる一冊でしたよ。


近代になって暗号の戦いは拡大します。よくコンピュータ界隈で名前を聞く公開鍵と秘密鍵の概念も、本書を読んでようやく理解できました。「誰でも南京錠をかけられるが、開けられるのは鍵を持っている者だけ」みたいな感じですが、理解するとこれが暗号における革命的発想であったことが良く分かります。考え出した人はすごすぎる。


現在はそのRSA暗号によってほぼ確実な暗号化が可能となり、暗号作成者側の勝利となっているところみたいです。ネットの通販ページなんかで出てくるSSLというのもこれを使っているのですね。しかし量子コンピュータが出来ればその座は脅かされるかも? さらに対抗して量子暗号も考慮済み? めまぐるしく情勢は変わり、本書発売後5年以上が経過した現在ではどうなっていることやら。量子論といえば確率論で有名ですが、確率でしか決定していないものを使えば確かに完全な暗号化が出来そうで、これまた発想のすごさにうならされました。さて、実用の日が来ますか? そもそも量子コンピュータは出来るのか? 気になるところです。

涼宮ハルヒの憂鬱 第8話「孤島症候群(後編)」

いつもながら面白いなあ。はっきり言ってお話自体は特別面白いようなものではないと思うんですよ。お芝居だということ自体、仮に原作を知らなくても割と早く分かると思いますし。しかしそれでも引き込まれる。アニメというのは見せ方しだいで何倍にもグレードアップすることが出来るんだなあとつくづく感じさせられます。今回も色々と凝った演出がありましたが、個人的には窓から差し込む光に豪雨の影が流れているところに感嘆しました。


さてそれで内容ですが、「ハルヒが可愛い!」というのが素直に思ったことだったり。嵐の崖に向かってキョンを引っ張っていくところはいつもの強気なハルヒでしたが、転落してしまい「大丈夫、キョン?」と心配するところは、初めて見られる表情で魅力的でした。ついでに洞窟内の描写にはこの作品が萌えアニメであることをあらためて感じたりもしたのですが、萌えというのはそれだけ狙ってつくっても大抵うまくいかないので、他の基本部分がしっかりしていてこそ引き立つものだと考えるわけです。その点でもこの作品は分かっていらっしゃる。


事件はハルヒの「超人的天才的名推理」で閉幕。「簡単なことだよ、ワトスン君」の笑顔とウインクは反則的でした。でも「気づいたのは俺だがな」のキョンの方がさりげなくすごい気もします。


帰途は上機嫌のハルヒ。しかしそれも「機関」の演出あればこそだったわけで。特殊性を知らぬは本人のみの構図が、この物語をただの「学園SFコメディ」に終わらせない、ちょっと引っかかる後味にしているような気がします。無自覚のうちにご機嫌伺いの接待受けてるようなものですからねえ。一方、キョンの首筋には怪しげなものが。あれは古泉の仕込みなのでしょうか? それともただほくろを見ていただけ? はて、この辺すっかり忘れているようではもう原作読者を名乗れないような気がしてきました(汗)。