天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

66 殺人犯はそこにいる 清水潔

 推理小説のようなタイトルだが、そうではない。ノンフィクションだ。文庫本になった時に、「文庫本X」として売られて話題になった。
 帯に各氏が絶賛している。 
「この本を読まずに死ねるか!」と言う気持ちはわかる。ワシは読んでしまったので死ねる。かと思ったが、内容のあまりのひどさに、なんとならないのか、自分にできることは無いのか。という気持ちになる。著者の清水さんは、ジャーナリストとして誠意をもってできることをした結果がこの本。せめてワシはこのブログに書いて、少しでも多くの人に知ってもらおうと思った。
「すべての日本人は直視すべきだ。」ともある。まさにそう。何を直視するのかというと、警察と検察の犯罪捜査やその立証方法のズサンな実態だ。
 この本の大半は、著者が冤罪事件を自ら取材で暴いていった流れが事実にそって書かれている。その冤罪事件とは、1995年に発生し逮捕された菅谷さんが2010年3月まで犯人として17年間も拘留された事件だ。
 冤罪事件はこれだけではない。免田事件も含めて、四大冤罪事件というのがある。死刑確定後、再審で冤罪が判明した事件だ。松山事件、財田川事件、島田事件。
 そして、飯塚事件に至っては、被告が無罪を主張し続けていたにも関わらず、死刑判決に基づいて当時の法務大臣森英介は死刑執行命令を出し、死刑が執行されてしまっている。遺族は再審請求をし、現在、福岡高裁飯塚事件再審抗告審は実質的な審理を終えたものの判決が提示される時期の見通しが無いとされている。
https://mainichi.jp/articles/20170519/k00/00m/040/139000c
 足利事件で冤罪を認めたのは、菅谷さんが犯人とされたDNA判定に証拠能力が無いということで、そこに持ち込むまでの清水記者の綿密な「取材」があった。
 警察当局は現在も、当時の技術レベルではそのDNA判定は正しかったとして誤りを認めようとしない。ばかりか真犯人の捜査を行おうとしない。
 真犯人は、やはり清水氏の取材でルパンに似た男というのが浮かび上がっており、目撃者もいる。にも関わらず、この捜査をしない。それはルパンを犯人とするDNA鑑定を行うと、免田さんのときの判定が不適切であったことを認めざるを得ないからだ、ということまで踏み込んで指摘されている。
 この地域では、足利事件を含めて4つの幼児殺害事件とまだ行方不明の事件が起きている。この4つの幼児連続殺人事件は時効とされて真犯人は、のうのうと暮らしている。また同じことをやるかもしれない状態が放置されている。
 時効は警察がその気になれば、持効成立させない理屈はいくらもある。これらの捜査をしないのも、DNA判定の誤りを葬り去るためと指摘される。
 最近のニュースでは、ストーカー被害を警察に訴えたものの、警察が相手にしなかったために、被害者が殺されるという事件が起きている。
 警察も官僚組織同様、自分たちの失点を隠蔽する。また犯罪捜査で、結果を急いで点数をあげるために強引な捜査で犯人を仕立て上げてしまうのが冤罪につながる。 それにしても、市民の助けを取り上げない警察官はいらない。もう少し真面目な、根本的な再発防止策が提示されないと、警察の信用は地に落ちるのではないか。