『一人っ子同盟』を読んだ

昭和40年代の、一人っ子が珍しかった時代のお話。


主人公のノブ、同級生ハム子、下のオサム。一人っ子ではなかったノブ、一人っ子じゃなくなったけど受け入れないハム子、生まれてすぐ本当の一人っ子になってしまったオサム……複雑な一人っ子たちが群れ合うわけでも慰め合うわけでもない。ハム子に至ってはその逆をして過ごしている。それでも「同盟」。クラスの他の男子がつけたけれど、「同盟」。


どちらかと言えば暗い、重い内容なので、ワクワクしながらページをめくる感じではない。心にズシンと来るけど止めずに読みたくなる。そして読み進めていくと重さに伴う深さに目をそらせなくなる。
オサムなんか最初に出てきた時は嫌いだった。そして2つのビョーキが出てノブの気持ちを裏切った時は大嫌いになった。なんでこいつをずっと話に出すんだろうと思ったけれど、終盤になりその印象が変わっていく。親戚をたらい回しにされたオサムはこうやって生きていき、こうやって生きていくんだなと深さに暗くなった。そこで終わるかと思ったらおじいちゃんおばあちゃんとノブ、そしてハム子との時間で少しだけ光が差す。


でも結末は決してハッピーなものではない。ハム子だってそう、そしてハム子と過ごしたノブの気持ちだってそう。ぎゅっと胸を掴まれたままお話は終わる。しかしその終わり方だから心に残った。長編でずっと重めの内容が最後にハッピーエンドだと読後気持ちよくなれたと思う。でも、そうじゃなく、こういう終わり方だったから心に残ったのだと思う。ノブもハム子も、そして読み終わったら一番好きになったオサムも、心に残った。

一人っ子同盟

一人っ子同盟