僕の妹は漢字が読める

一年ほど前にノベルジャパン大賞の銀賞を獲得し、ウェブ上で序文が公開されるとそのイカレ…もとい、先鋭っぷりに話題沸騰(一部界隈で)した怪作、僕の妹は漢字が読めるです。近未来、文化の主流は二次元と萌えになり総理大臣ですら二次元美少女、漢字は古文に成り下がり日常生活には平仮名と片仮名と記号のみが使われ、文学は小学生が書いた携帯小説のようなものが文壇を占めるという、かなりぶっ飛んだ世界設定。アイデアはかなり面白いと思います。で、それに輪をかけて時間旅行が始まったりするあたりの何でもアリ感はもはや清々しさすら感じさせますね。


深読みすると文化論(文学論)がどうのこうのと考えられるのでしょうが、僕がこの作品を読んで受け取ったメッセージは結局のところ、「何がメインカルチャーで何がサブカルチャーだかなんて関係ねぇ!俺を救ってくれたものが俺のメインカルチャーなんだ!俺の好きなものが俺のメインカルチャーなんだ!人から押し付けられる文化観なんて知るかクソッタレ!」というものでした。
イロモノなイメージが先行してるのでどうしてもバイアスがかかってしまいますが、頭は空っぽのまま痛快ドタバタ時空ラブコメディとして読むのが最も幸せです。あとは主人公が鈍感なうえにかなり頭がおかしい(現代水準比)ので、その主人公の一人称形式の与えるストレスに我慢できるか否かも楽しめるボーダーになると思います。ちなみに僕は一部の場面をのぞいてイライラしっぱなしでした。作品の構成上、主人公の一人称形式にならざるを得ないのですが、もうちょっとなんとかならなかったのでしょうか。主人公の妹で唯一の常識人であるメインヒロインのクロハちゃんが不憫でなりません。それでも、奇天烈なヒロインに常識人の主人公が振り回されるお話とは逆転しているのは久しぶりに読んだのでかなり物珍しかったです。


好評を博したデビュー作に取って付けるような続編ではなく、元々の構想での続編があるので物語を完走するためには読まなければいけないのですが、うーん…どうだろうなぁ…。てっきり賞をもらった作品なので単巻だと思ってたのですが。鈍感主人公とハーレムものは本当に肌に合わないのが再確認できてしまっただけに、二の足を踏んでしまいます。続編は、また機会があれば…。