グラン・トリノ

母からおすすめを受けたのでグラン・トリノを観ました。
偏屈な老人がひょんなことからモン族の一家と親交を持つようになり、その一家の青年タウに色々と教え込むうちに心を通わせていくというお話。いやー、イーストウッド演じる老人が最高にクールです。確かに老人特有の偏屈さと昔の基準を重んじて現代に背を向けるのはありがちでそれを劇的に変化させる物語が多い中、本作では些細なことで少しだけ老人の心境にも変化が表れ、だけれどもやはりその偏屈さこそを彼自身アイデンティティとして貫き通す男気のあふれる一作となっています。
価値観がある日突然180度変わってしまうなんてのはよほどのことが無い限りなくて、そんな劇的な変化を主人公の老人は朝鮮戦争で体験してしまっています。その変わってしまった価値観を再びひっくり返すとなると、それはほとんど不可能に近く、だから少しづつの積み重ねで少しづつ変わっていくしかないのです。何者かになって凝り固まった老人と、何者にもなれないと悩む少年が心を通わせるうちにお互いの価値観によって変わっていく様は素晴らしかったです。
タイトル通り作中ではグラン・トリノクラシックカー)がキーアイテムの役割を果たしていて、メイキング映像では老若を問わず男の根幹に車に対する情熱はあってそれぞれのキャストやスタッフが熱く語る中で、あるキャストの女性が「男は車を所有することでモテると思ってる」と水をぶっかけるような発言をしていて、思わず笑ってしまいました。機械に対する男女の温度差は、やはり埋めがたいものがあるのでしょうね…。


イーストウッドの監督作品は暗いものが多くて、今作も全体的に暗いのはあまり替わらないのですが、昔はあまり好きじゃなかったのに今は楽しめるようになっていてこれが変化というものなのかなぁと思う次第です。単に、この作品が名作なのもあるかもしれませんが。グラン・トリノ、観て良かったと思えた良作でした。
悔しいけど、母ちゃんレコメンドの信頼度の高さな…。