浅田次郎作品を読む




今回も浅田さんの短編集の短い感想を記す。
「見知らぬ妻へ」1998年
「踊り子」浅田自身の青春時代に経験したお話なのかな?60〜70年代新宿歌舞伎町のダンスホールでのナオミとの出会い。
スターダストレビュー」スターダストという古いクラブで働く老紳士のお話。元オーケストラのピアノ弾きがうらぶれたクラブでジャズを弾くちょっと物悲しいお話。
「かくれんぼ」幼い頃のかくれんぼ遊びを題材に、ガキ大将や混血の少年、女友達等の心のつながりを描く。
「うたかた」さびれた団地での孤独死した老女の思い出。
「迷惑な死体」半端なヤクザの部屋に帰ってみると、突然死体がおかれているという状況から物語は始まる。浅田さんお得意のヤクザもの。
「金の鎖」オールドミスのデザイナーが若い頃の恋を捨てられず、思いで引きずったまま暮らしているというお話。絵画館前の並木道が目に浮かぶ。
「ファイナルラック」古い競馬ファンの同僚の死と思い出とともに描かれる。
表題作「見知らぬ妻へ」離婚し、会社もやめバーの客引きのような仕事をしている男が、日本に不法入国している中国女と戸籍上結婚するはめに。他の短編「ラブレター」の原点?とも思われる作品。

「姫椿」(2001年)
「シエ(XIE)」善人と悪人を判別できるという中国の伝説上の奇妙な動物を飼う女性のお話。
「姫椿」(表題作)行き詰まった会社を経営する社長がある晩、タクシーに乗っている時に保険金を家族に残そうと自殺を考えるのだが、たまたま通りかかった昔の銭湯に咲いていた姫椿を見つけ、当時妻とこの銭湯に通っていた頃を思い出し自殺を思いとどまるというお話。
「再会」高校時代の知り合いに何十年ぶりに再会し、その後の彼の人生を聞かされる。その顛末は恐ろしい現実が。
「マダムの喉仏」タイトル通りミスターレディーのお話。そのマダムは完璧に二重生活をおくっていたのだった。
「トラブル・メーカー」オーストラリアに移住しようとしている会社を退職した男が、航空機の中で語る彼の人生。それは、彼の部署に配属されたトラブルメーカーのためにさんざんな目にあった物語。
「オリンポスの聖女」学生時代同棲していた演劇好きな彼女は、シドニーでオリンポスの聖女になっていた。
「零下の災厄」氷点下の寒い晩、彼はマンションの入り口で酔いつぶれた女性を見つける。諸処の事情により、その泥酔した女を自分の部屋に連れて行かなければならないはめに。その女の素性は?謎めいた災厄を物語りの口調で描き出す。
「永遠の緑」このタイトル、英訳するとエバーグリーンこれは馬の名である。競馬好きな大学教授とたまたま出会った解体屋の青年の交流。

「薔薇盗人」(2000年)
あじさい心中」ある中年のリストラされたカメラマンが、たまたま地方競馬に行き泊まった東北の温泉街ででくわしたストリッパーとの心の交流を描く。浅田文学の真骨頂!
「死に賃」ある会社社長が死の苦痛から免れるという宣伝文句をかかげた商売があると知り、その営業マンを呼び契約しようとする。普段心のうちを見せない社長秘書のその心の内側が次第に明らかになってゆく。
「奈落」ある会社の課長が高層エレベーターで奇怪な死をとげる。この事件をとりまく社員や部下、社長や会長等、家族といった人達の会話から、だんだん新しい事実が浮かび上がってくる。各章がそれぞれの登場人物の会話だけで成り立っているという面白い構造の短編小説。
「佳人」自分の娘に紹介した青年は、お見合いの時に彼女の祖母に一目惚れしてしまう。熟女好きってのはあるけど、ババコンってあるの?
「おひなさま」ひな祭りを迎えようという2月のある晩、彼女(小6)は少女漫画の付録についている付録のひな人形を作っている。これだけで、十分物悲しいのだが、母はスナックつとめで帰りが遅くさびしい。唯一訪れてくれる青年も最近はなかなかやってこない。そんな彼が交通事故にあってしまう。彼女は貧乏でも勉強して1番をとれば将来お医者さんになれるとがんばっている姿がけなげで泣ける。
「薔薇盗人」この話は世界一周の航海に出ている航海士であるダディに送る少年の手紙から成り立っている。近所に住む好きになってしまったガールフレンドのことや、母親のこと、学校の先生、そして大事にしていた薔薇が盗まれたこと。港が見える小高い高級住宅地でのお話。