残響の足りない部屋

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ガンダムビルドファイターズ 第十七話「心の形」感想

いやあ、今回も面白かったですねビルドファイターズ。
今回はマオ君ことヤサカ・マオ=ガンダムX魔王回。

全国1万人(もいるのか? 2万いるかは微妙かもしれない)の機動新世紀ガンダムX愛好家が、第五話「最強ビルダー!」以来の!

というか、えーと第七回の温泉回とか。ダブルエックスがGビットまでテレビ化さしたというのに、一撃でブッ殺されましたけどね!それ以来の! 

えーとそれから世界大会序盤でヴァサーゴも簡単にブっ殺されましたけどね!(でも「兄さん!」呼びまでされたんだから本望でしょう)以来の!

……マオ君登場以来、どれも微妙な出番ばっかじゃねーか!
いや、それでも扱いはほんとにいいんだ、X勢は! わたしの友人にX勢がいるのですが、「良しッ!良しッ!」ってな感じで歓喜してますからね。
全く……リアルタイムでX見てた連中は、ひどい冷や飯を食わされてますから。
近年キットの復刻が進んでいるとはいえ、長い間HGあたりのは、リサイクル屋の片隅で埃かぶってるような状況でしたし。どれだけXディバイダーゲットするのに苦労したと思ってるんだ! ヴァサーゴとアシュタロンはほとんど絶望的だと思ってるぞ、あ、いや、ヴァサーゴチェストブレイクのキットに比べれば……(アシュタロンの後継機に関しては、もう諦めようや)


なんか泣きごとが多いですねこのブログ!
まあX勢なんてこんなもんですが。そこまで積極的でないX勢でも、あのアニメのメカニックはほんと無骨で地味でサイコーでした。
自分の趣味嗜好が「スーパーロボット」から「メカニック、スケール」志向に移っていくに従って、余計に好きになっていきました。
例えるならWよりもSEEDよりも0083みたいな。ポケ戦みたいな。IGROOみたいな。
そりゃ人気出ないよ!(また泣きごと)

で、今回のお話、ガンダムビルドファイターズ。
そんなX勢を体現するかのようなショタ、じゃなかった、糸目、じゃなかった、帽子!キャラ!(しかしどれも間違ってはない)
ヤサカ・マオ君の決死の回です、見てない奴は今すぐみろ!

公式ページ

(公式HPでの公式配信は月曜の午後九時、って覚えておくと、しあわせになれますよ


●楽しんだモン勝ち


このマオ君&X魔王というキャラ/機体は、第五話において、セイ君(主人公の「作り手(ビルダー)」側の子)を圧倒したのです。
サテライトキャノンを軸とした圧倒的高火力。それを実現する秘儀じみたテクノロジー&技。
もちろん操縦技術も圧倒的(プレイヤー側主人公、レイジとそんなに変わらないでしょう。だからこそ登場界ではレイジをハブる必要があった)

かといって、マオ君=セイ君の上位互換、というわけではなく。
ある意味で「先輩」みたいなキャラでした。
とあるところ(某ファンコミュニティ)で見た意見ですが、マオ君がセイ君の、イオリ模型展示ガンプラを見て、「ただ造りのレベルが高いだけ、独創性がない」と言っていたのを、

「いやいやそもそも展示用キットだろ、独創性とかいってるのアホちゃうか」

と冷静なツッコミいれてたのを妙に記憶してますが、これは結構マオ君というキャラを体現している「伏線」だったのだ、といまになったら思います。

なにせ、今回のマオ君、自分の独創性のレベルに思い悩む回だったのですから。

ガンプラ心形流(しんぎょうりゅう)の継承者(予定)たるマオ君。
ガンプラ心形流とは……ひとことでいえば「独創性を武器にする」ガンプラ制作&操縦流派。
その教えをくんだマオ君は、独創性を第一に尊ぶ。

……が。
ここで気づいてしまったのです。独創性を誇っても、さらなる独創性の前に自分が敗退する可能性を。
それが、大きな樹の下で思い悩む、冒頭のシーン。
ありとあらゆるスタービルドストライク(主人公機)の「戦闘対応可能性」を想定します。
そしてそのどれもに自分のX魔王が追いついていない。

よくある光景といえばそうです。
往々にして、才能は次世代の才能に駆逐されるものですから。
そういって消えていった才能……とくにラノベ界隈が、真っ先にわたしの脳裏には浮かび上がりました。
だいたい5年周期、10年周期でこの代替わりはあります。
とくに最近の、「なろう」を中心とした、新世代=ネット小説あたりの台頭は……

じゃあ、マオ君は、自惚れていたのか?
全然違うのです。
今回の話の一番最初で、「自分よりもガンプラ造りがうまい奴なんていない、という天狗になってた」と述懐し、その後、師匠に出会い、「上には上がいる」ということで、ガンプラ心形流に入門するのです。
自惚れワナビは山といますが、「流派」に入門して研鑽するワナビはほとんどいないでしょう、プライドやたら高いのがワナビですから。
それが現在のずっと前。京都でさらなる研鑽を、師匠のもとつんで、それで現在に至って、武者修行的に東京のイオリ模型(セイ君)に行ったのが第五話「最強ビルダー!」。

どうですか、ここまで研鑽を積んだ人間は、ふつうの物語でしたら、もうTUEEEEだのSUGEEEEEだのという境地にいってるものなのです。そこまでいってたら、誰も文句をいいません。

そのマオ君が、悩む。
これは高次の悩みといってよいです。

才能の次に、努力。
努力の次に、世界。
マオ君はセイ君というライバルを得て、セイ君はマオ君というライバルを得て、ともに自らのスタイルで研鑽を続けていきます。

お互いに、才能を燃え上がらせて、努力を積んで、実戦でともにかたを並べて戦って……
だからこそ、相手がわかる、のです。
冷静といえば冷静。
ここのマオ君の煩悶を、主人公を持ち上げるための演出、と捉えることも可能ですが、「ひとりの求道者」として見れば、痛ましい場面でもあります。


ちょっと場面を飛ばしますが、マオ君が得た「心形流」とは、真の意味では、独創性ではなかったのです。
「独創性ではない」というか……正確にいうなら、独創性をはぐくむに必要なのは、プライドでもセンスでもなく……
いや、センスでもあるのですが、センスすらもはぐくむのに必要なもの、
才能の、源泉。努力の、源泉。強さの……源泉。

それは、
「楽しむこと」「好き勝手にやること」

師匠はいいます。マオ君の前で、自分の「強さ」を見せてみて、
「このくらい、儂の年までやってればふつうに出来る」
くらいのことを、さらっというのです。
そこからの真理の言葉はちょっとかなり深いので、みなさん見ていただきたいのですが、それがこの番組の前半だっちゅうからね。

じゃ、その強さは、どこから?
そこからわけのわからん取っ組み合いがはじまって、マオ君自身も「わけわからん」的な反応ながらも、必死にします。

……で、朝の光とともに、唐突に悟ります。
(なかなか、「悟る」っていう、爽やかさと解放感を表現しようとしたらむずいっすよ)

「楽しめばいいのだ」
「好き勝手やればいいのだ」

……結局、マオ君は……ええ、皆さんの予想通りです。それがアニメの勝ち上がり展開ってやつです。
でも……いままでのバトルで、前のフェリーニ/フェニーチェ戦の超絶感動バトルとはまた別の、心地よいぐったりした疲労、というものを、主人公二人は覚えています。(次回予告まえで)

で、ここからわたし自身のことをはなします。
ここ最近、すごーーーーーく、悩んでいたのです。

自分のブログがどうあるべきか、
自分の表現(小説とか音楽とか絵とか)がどうあるべきか、
自分の仕事がどうあるべきか、そしてそれをプライベートとどう両立させるべきか

みたいなことを、延々、延々と。結局……3か月くらい、悩んでいたんでしょうかね。
自分はマオ君とちがって、才能もなければ、努力も全然足りてないです。
そのくせして、こうやってブログを分割したり、いろんなとこに文章まきちらしたり……

書評
音楽
・模型(このページ)
自作小説
雑惑
それらのまとめページ
エロゲ

分割しすぎ!
それも、どれも高品質の記事……「(笑)」「wwwwwww」がつきそうな意気込みですが(周囲からみたら)、面白い記事、高品質の記事をあげなければ自分ではない、みたいに悩んでいたのです。ばか!

しかも、それらを全力でしようとすれば、時間なんてなく。
で、仕事が忙しく、頭がパンパンで(若造が自分の好きなように仕事は進められませんわなぁ、いや、ある程度「分野」を任せてくれてるので、ありがたい話なんですが)、ろくに考えを整理もできず。


……自分は、独創性と、各記事のアップ回数を両立しようとして、でもなかなか出来ずに、いいわけばっかりして……
音楽や漫画が好きなだけに、よけいに、形にしようとして焦って……
仕事も同じく。結果だそうとばっかりに。

でも、今回のビルドファイターズ見て、ふっきれました。
いや、「ふっきる」ことこそが、メッセージなんです、BFの(わたしにとっては)


ガノタガンダムオタク)ってやつぁ、どうにも自己撞着しがちというか、自分のカラにがんじがらめになりがちな人種です。
(だからガンダムなんてものを好む、というどうしようもないループ)
だからこそ、今に至るまで無数の論戦が、ガノタ内でやたらとあるのですね。
(わたしの言い分としては、SDガンダムの地位をもちっとあげてもらえれば、それでいいのですが……)
たかがED曲(ヒャダインの)ひとつでギャーギャーさわぐのですから。

……まあ、わたしも、ほかの分野においては、おんなじようにギャーギャーわめいている輩ですわな。
……小さい!

創造力とは、楽しむこころから、生まれるもの。
なにかをヘイトしたり、焦る心からは、創造力は生まれない!

言葉にすればあったりまえなんですが、でも、ねえ。
「わぁってるよ!」といいたくなりますよね。

でも、今回のマオ君の一連の修行(これこそ修行だ!)は、真の創造力は、やはり「素直にたのしむ」ことからしか、芽吹いてこない、ということを、体感ーーアニメで体感させてくれました。

ということで、あしたから(ていうかいま日がかわった)、バンバンレビューとか、自作小説とか、それのBGMとかあげていきましょう!
どうせ自分はそれしかできないんですから!
反応を気にするよりも、自分が楽しむこと!
そして、「たのしむとはなにか?」みたいなことにこだわらないこと!


……………………無心! それこそがガンプラ心形流の極意! 師匠もいってた! 
だからこその、紅く禍々しい、大出力のX魔王剣や!
バトルのただなかで、たのしむのや!

Dinosar JR.「Without a Sound」

 

オルタナ仙人・J・マスキス(自分はずっとマスシスで覚えていたのですが、最近これなんですよね、界隈)の本体バンドの6作目で、世間的には初期のダイナソー……BUGとかと比べると、90s中期に発表されたこのあたりの盤の評価は、あんまり、なんだか地味であります。

 

といいうかダイナソーの評価って、2nd、3rd、そしてグランジ・ムーヴメント(メジャー)としてのGreen mindあたりを第一の極点として、次に専門筋で「Hang it over」(すごい好きな一枚です)の戦慄性が語られ……再結成は話題になったけど、大方の評価はこの再結成も「悪くはないけど、初期よりはね……」みたいな。

 

わかった。んで、このレビューブログでは、そういう世間の「ささくれ轟音じゃなければ価値がない」という方針に抗うことにする。わたしがそうですから。

 

まず、ジャケを見てみましょう。

暗い!

しょぼくれた変な子供(?)が不安そうに、こっちをオドオド見ています。バック(背景)もすげー適当。黒と緑。

 

それがどこまでアルバムと同期となるのかはさておき(ダイナソーのアルバムジャケって、だいたいヘンだし)、少なくとも、サウンドは「壮大に広がる」というのではなく。そういう作風なアルバムじゃなく。

 

あからさまな爆走チューンは少し。

しかし大体において、いつもの「ジャズマス+マフ+マーシャル」のぶっといギターに、なんかてけとーなダルいvo。

「YEAH」という声がこんな、やる気なさそうに、しぼられる感じで出ようとは。ダルさのコンプ(圧縮)がかかっているよう。

 

しかし……不思議なことに、そのダルさの奥には、エモーションが見えます。

 

サウンドなのですが、ウォームにしておだやか。イージーリスニングとはいわんが、どこか落ち着いています。

その落ち着きが、轟音とあわさる。バリバリ弾きたおしてるわけではない。編成もすごいすっきり。ギターとベースとドラムとVO。彩りをそえるのは、ときおりのコーラスくらい。

 

でも、「飽きない」のは、エフェクターの使用というより(いうまでもなく、エフェクター仙人なんですがJは)、ギターの「轟」なるのに加えて、全体の感じが「河」――ゆったりした、大き目の川。そのようなおおきなグル―ヴがあるから。

 

急ぐわけではない、あくまでゆっくり。ダイナミクスを長いスパンでとって。

 

そして……メジャーキーで結構曲書いてる感じ(フレーズとかも)にもかかわらず、なんか暗い……「落ち込んでいる」感が。

それは、心のくぼみのようなところに、音楽が落ちていく感覚。Jは、このようなシブ味のある盤を作るのです――否、ひょっとしたら、轟音疾走よりも、「轟音シンガーソングライター」として、このように「シミるな……」という感じな評価のが、より適切にJを表してるのかも。

うーん、ニール・ヤングの正当後継者ですなぁ。