「涼宮ハルヒの憂鬱」の躁鬱

「涼宮ハルヒの憂鬱 コンプリートボックス」を買った

amazon で2200円で入手した。もちろん正規品だし、（2話収録の単品ではなく）14話収録されたものだ。どんな仕掛けかというと、買ったのはこれだ。

The Melancholy Of Haruhi Suzumiya Complete - Anime Legends [DVD] [2006]
Price: £14.99
http://www.amazon.co.uk/dp/B0038KGM0G/

私が買った時には£12.76（送料£3.58）だったので、今は少し値上がりしているのだけれど）、それでも2500円くらいで買えるわけだ。Yahoo! オークションで安く売られている DVD-BOX がまさにこれだ。少し値段は高いが北米版もある。英国版の場合は、リージョンが日本と同じ2なのでパソコンでそのまま再生できるが、映像形式がPALなので普通のDVDプレーヤーではテレビで見られない。北米版はNTSCだが、リージョンが1なのでアメリカ版のDVDプレーヤーが必要だ。

有名なアニメだとは知っていた。バンダイチャンネルで1話無料配信があったので見て、その時点では、あまり続きを見たくなるような内容でもなかったけれど、どうしてそんなに世間に受け入れられたのかは興味深かった。続きは1話100円なので、それほどの値段でもないが、レンタルDVDという手もあるなと思っているところに、たまたま英国版の安い DVD-BOX を見つけた*1。

どうせ動画配信ならパソコンで見るのだし、何しろ画質がよくない。レンタルDVDでもいいが返さないといけないし、けっこう高くなる（2話収録で7枚分＋電車賃）。だいたい、いつも映画を見ているのもノートパソコンだったりする。それなら、たとえ英国版でも「返さなくてもいい」DVD の方が気楽だと思って注文してみたのだ*2。格安バンザイ:-D

なぜ安くできるのか

DVD-BOX は現行商品ではないが、日本ではずっと高い値段で売られていた。現行商品の blu-ray 版『涼宮ハルヒの憂鬱 ブルーレイ コンプリート BOX (初回限定生産) [Blu-ray]』なんて定価で4万、売値で3万円もする（ただし、シーズン2も含まれているし、オマケもあるようだ）。

テレビ放送なら無料なのに、アニメDVDの値段が高いのは、テレビが宣伝で、DVDが収入源だからだ。子供の頃、アニメ（テレビまんが）がパラパラまんがと同じように“少しずつ違う絵を描いて動かしている”と知って驚いたことがあるが、そこに膨大な手間とコストがかかることは容易に推察できる。よほど大量にさばけるものでなければ、安価な設定は難しい。

ではなぜ、英国版はこんなに安いのだろう。

村上隆氏がこんなツイートをしていた。

おそらくそういう値段で海外向けに権利を売っているのだろう。いくらアニメが海外で人気だからといって、自ら現地に乗り込んで開拓するほどの市場があるか分からない。字幕翻訳やネイティブの声優にコストをかけて現地版を作っても赤字になるかもしれない。それなら安くても権利を現地の会社に売って、後は全部やらせておけば自分たちが赤字にはなることはないという判断なのではないか。

権利を買い取った方もそれなりのコストをかけて利益を出さなければならないが、高い値段をつけて売れないのではしょうがない。だから薄利多売で数を稼いでいるのだろう。1セット£10の粗利があったとして1万セット売っても1300万程度だ。実際見てみると、ちゃんと字幕もアフレコも入っているし、まともに編集されている*3。どんなシステムかは知らないが、翻訳、声優、スタジオ、編集、マスタリング、パッケージデザイン、製造と目に見える部分を想像するだけでもそれなりにコストがかかりそうだ。

アメリカ製のソフトを日本語化して売っていた頃、「アメリカ製のソフトなんて、アメリカで元を取ったはずだから、日本ではもっと安く売れるはずだ」という雑誌投稿を見かけたことがある。そのときは「なんて身勝手な」と思ったものだが、アニメ業界ではそれを海外に向けてやっていたわけだ（ため息）。

需要と供給

日本のユーザーは怒っていい（たぶん）。けれど、これも需要と供給のなせる業なのだろう。日本の値段は、日本のアニメファン層を考えてつけられている値段であり、それが利益を最大化できると見込まれ、その一方、海外で英語版の格安品が出回っても日本の商品を排斥してしまうほどではないということだろう*4。“安くしても、それに見合うだけ買ってもらえるわけではない”なら安くする理由もない。実際、「涼宮ハルヒの憂鬱」以外のタイトルを調べてみても、あまり割安感のあるものはなかったから例外的なものかもしれない*5。

ちなみに、日本でもそういう売り方をすればいいのにと思っていたら、「HEROES シーズン1 DVD-SET」（23話）が\2,353で売っていた（もう持ってるけど）。「プリズン・ブレイク シーズン1 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]」（22話）も\3,241だからまあまあだ。「ER 緊急救命室 I 〈ファースト・シーズン〉 セット1 [DVD]」（13話）なんて\1,084だ。というわけで、けっこうアメリカのテレビドラマはけっこう安売りしているようだ*6。

余談

「エンドレスエイト」を見てみたい:-)

*1:英国版DVDならリージョンが同じでパソコンで見られることは、「Hill Street Blues」で確認済。

*2:注文したのが10月24日で、到着したのが11月29日だから、ずいぶん時間はかかったけれど

*3:ただし、あまり綺麗な圧縮ではないような気はする。

*4:字幕なし＋日本語音声にすれば普通に楽しめるが、オープニングやエンディングは英語のテロップなので同一ではない。また、日本語版のDVDは知らないが、ビットレートの割には画質が粗い気がする。

*5:お勧めがあったら教えてください。

*6:日本のドラマで、ここまでの安売りが見当たらないのは「事前」ではなく「事後」に権利処理をしているからかなあという気もするのだが、あまりよく知らない。