「ヘタレ」という名の怪物

恋するフォーチュンクッキーType A(初回限定盤)すでに種々のメディアで報じられているとおり*1、過日、某巨大アイドルグループ内の序列を決める年に一度の「選抜総選挙」が開催され、2013年は指原莉乃さんが1位に選出された。思えば長い道のりだった。選抜にも入れない不遇の時代から応援している者(=私だ)にはたいへん感慨深い。
およそ正統派からはほど遠いアイドルである。テレビで活躍するのはバラエティ絡みのものだけで、歌番組ではほとんど後列にしか置いてもらえない。見た目は残念*2。スキャンダルにもまみれた。本店(秋葉原)所属でもない。ファン以外はほぼ全員アンチ。そんな指原さんが総勢250名になろうかという巨大グループのトップに立ったのである。下克上いや革命と言っても過言ではない。
しかし、この一年のグループを巡る状況を考えてみると、彼女ほどこのグループのありようを体現しているメンバーはいない。最も象徴的なのは、恋愛にまつわるルール破りの騒動と地域密着型アイドルのコンセプトを、よくも悪くも一手に一挙に引き受けて、すべてをエンターテインメントとして昇華させてしまったことであろう。その点で、どんなに汚れたキャラであっても、今のグループにおいては、彼女こそが最もセンター(中心)にふさわしい。個人の力量や魅力を超えた、グループの象徴(あるいは代表)として完璧に機能している。
失敗や凋落すら飲み込む強烈な「物語」と「歴史」を持つ指原さんは、すべてを見世物として提示できる劇場型アイドルである。順調に成長したヒーロー(ヒロイン)がいったんは挫折するものの、かろうじて生き延びた先で新たな力を蓄え、やがて中央社会でかつて以上の権力で復権を果たすという、まさにこの国の人々が大好きな貴種流離譚を地でいくアイドルと言えよう。
彼女のますますの活躍を願ってやまない。

*1:テレビ生中継もあった

*2:私はそうは思わない、というか、むしろ見た目から入った

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いつかどこかで

morio01012012-08-01

思い返せば最初にサイトを立ち上げたのは、「私のホームページへようこそ」などという惹句があちこちで踊っていた時代、1998年2月のことだった。もはや見るべきものは何もないと思うけれど、今でも消さずに残してある。
  http://homepage1.nifty.com/pekopokonet/index.html
その中の日記部分を移す形で2003年12月から「1/365*morio0101」というブログを始めた。これもなんとなく残してある。
  http://morio0101.air-nifty.com/kataru/2003/12/index.html
そして東京への単身赴任が決まり、新たに作ったのが、この「トウキョウタルビ」である。もともとは、初めての一人暮らしの(酷い)ありようを記すつもりで始めたものであった。特にまったくやったことのない自炊のどたばたを世間に晒すことで、自らへの叱咤激励とした。当時のエントリーには「今日の自炊くん」というタイトルの記事がたくさん並んでいて、「なんじゃ、それ、料理?」というものもあり、今見返すと苦笑いするしかないような代物ばかりである。多くの方々からありがたいアドバイスや励ましなどをいただき、おかげさまでふらりと入ったスーパーに並んでいるもので、適当に食べたいものをそれなりに作れるようになった。料理本や調理器具もずいぶん増えた。単身赴任7年半にして最大の成長はこの部分だと思う。他はたぶんまったく、ね……。
続けていくうちに、しだいに自炊ネタは減っていき、本や映画や音楽や写真や自転車などのことを主に書くようになった。いつも自分の好きなものを好きだと無意味かつ無責任に叫ぶような内容で、どこまでも自己満足な文章に過ぎない。それでも折々にそれに付き合って下さる方々がいて、そういう人たちとの交流を楽しみに、箸にも棒にもかからないことを書き続けていたのであった。
でも、このエントリーをもって、ひとまずの閉じめにしようと思う*1
井原西鶴の『諸艶大鑑』にとても有名な言がある。「人間は欲に手足のついたるものぞかし」というものである。難しい解釈はどこにもなく、文字通りの意味だ。「欲」をかきすぎると、往々にしてよろしくない事態を招くことになるけれど、一方で「欲」は「生きる力」にもなる。何かに対する強い「欲」は、すなわち「目標」になったり、「動機」になったり、「活力」になったりするだろう。そのように「欲」を捉えた場合、西鶴の言葉は実に味わい深いものに思えてくる。たとえそれが「物欲」(私はしばしばこれに支配されています)であったとしても。
これからもここでさらけ出していた「欲」に囚われながら、今しばらく東京での単身生活が続きます*2。私が「好きだ」と叫んでいたものに接した時には、きっとあいつは大喜びしている(あるいは悲しんでいる、怒っている等々)のだろうと思い出していただけると幸いです。
どうもありがとうございました。またいつかどこかで。

*1:Twitter / flickr / Facebook は続けます

*2:いつ終わるか、わからないけど

浜松で馬鹿騒ぎ

morio01012012-07-22

いろいろあって、このブログを2週間も放置してしまった。そのままフェードアウトしようかとも思っていたのだけれど、ももクロちゃんのライブを見たら、黙っていられなくなった。静まりかえった夜半の浜松のホテルで、こうして駄文をものしている(笑)
春の「横浜アリーナまさかの2Days」以来のももクロ現場である。新曲リリースに合わせた今回のツアーでは、初っ端のNHKホール@東京と最終のアクトシティ大ホール@浜松が最激戦であると囁かれていた。それぞれがももクロちゃんにとって特別な場所であるから、当然である。NHKホールの方は自宅で生中継を楽しむことになったけれど、浜松は幸運にもその場にいることができた。それにしても、上原ひろみ以外でこのホールに来ることになるとは、夢にも思わなかったよ。
昼過ぎの新幹線で浜松入りし、すぐに駅傍のホールへ向かう。基本的にグッズには興味はないのであるが、このツアーで初めて用意されたパンフレットだけは確保しようと思ってのことである。会場内外にはすでに色とりどりのモノノフたちが集結しており、一般の人は寄りつけないような気配が濃厚で、嬉しくなった(!?)。グッズ売り場は待ち時間なしで、パンフレットの他についペンライトやタオルまで買ってしまう。いいのだ、聖地遠征記念ということにする。物販横では某有名マネージャー*1のツーショット撮影が行われていて、こちらは長蛇の列だった。微笑ましい。
ホテルで一休みしてから、モノノフ装備に身を固め、いざ出陣。推しである百田さんの初の地元凱旋ライブ*2である。気合いもいっそう入るというものだ。かなこぉぉぉぉぉ↑↑↑
以下、折り込み部分に箇条書きで印象を記す。セットリストもね。

*1:kwkm & tmmn

*2:ナタリーのライブレポート http://natalie.mu/music/news/73352

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胡散臭いと思う

車を乗り換えたこともあり、その車種に関する書籍を何冊か手に入れて、ニヤニヤしながら眺めている。しかし、ろくに中身を確認せずに、ネットでまとめ買いしているので、中には酷いものも混じっている。たとえばこの本*1とか。
ハツカネズミ君に乗ってイタリアを旅するという、実に魅力的な内容であるはずなのに、これがもう酷い、酷すぎる。何が酷いかと言えば、取り付けるだけで燃費や挙動や操縦性などが劇的に向上するという「画期的な製品」のテスト(あるいは売り込み)のような記述が嫌になるくらい繰り返し出てくるのだ。もちろん筆者は大絶賛している。あまりの胡散臭さに、長靴の国の魅力などすべて消し飛んだ。そんなにすごい製品なら、モータースポーツの世界で常識になっているでしょ。あるいはメーカーが市販車に導入するとか。いずれも寡聞にして知らない。
もちろんこの商品を試したことはなく、本当に「魔法のような効果」があるのなら、それはそれですばらしいと思う。でもネットで見るこの商品の評判は相当怪しいものである。霊感商法一歩手前と言ってもいいくらい。えい出版は何を考えているのだろうね。ここがこんな胡散臭い本をシリーズで出しているのに、かなりがっかりしている。

ミニの余生とか

いつも世話になっている自動車整備工場から、ミニに買い手がついたと連絡があった。手放してわずか10日のことである。大切に乗っていたとはいえ、21年選手に余生があるとは思っていなかったので、ちょっと吃驚した。もちろん買い取り金額はまったく期待していない。ともあれ、いきなり「廃車→解体→スクラップ」の道を辿らずにすんだことを喜んでいる。街中でサーフブルーのミニを見かけたら、もしやと思える楽しみができた。
来週の土曜日に身分不相応役職の一つが任期満了となる。その日の大きな会議に向けて、タウンページのような分厚い資料集を作成するのであるが、今日その原稿をすべて印刷会社に手渡した。のしかかっていた重すぎるものが一気になくなり、清々している。夜は密林から届いた「築城せよ!」を楽しむ。海老瀬さん、いいわ。

京都太秦物語

まったく映画を見る余裕がない。時間というより気持ちの面で。こんな精神状態では肝心の仕事もまともにできるはずもなく、哀しい。
6月はwowowでフランス映画の特集があって、トリュフォーゴダール、シャブロルらの作品が30本くらい放映された。ひとまずHDレコーダーに収めたものの、いまだたったの1本も見ることがかなわない。某国営放送局のBSチャンネルでは、山田洋次が昨年から日本映画のセレクション番組をしていて、古い邦画が毎週放映されている。山田洋次の映画は好きではないけれど、選ばれたものに罪はない、というか、見たいので、彼の名前をキーワード登録してすべてレコーダーに残している。こちらも溜め込む一方である。
山田の名前で自動録画しているため、寅さんシリーズとかもひっかかっているのだが、それはさっさと消している。その中に「京都太秦物語*1」というのがあった。「いらんな」と思って、消そうとしたところ、京都太秦を舞台にして、山田が立命館大学の学生たちと一緒になって、地元密着の短編を作ったとある。1時間半ほどのものであるし、ちょっとだけと思って再生してみたら、もうね、90分が5分に感じられるくらいの勢いではまりましたよ。
物語は、大学図書館に勤めるヒロインが、芸人志望の幼なじみと大学の研究者の間で揺れるという月並みなものなのだけれど、見知った場所が出てくるし、俳優たちも芝居がかった演技をしていないため、知り合いの人たちの話をこっそり聞いているような親しい感覚をおぼえた。とりわけヒロインを演じた海老瀬はな*2がよくて、なんで今までこの人の存在に気付いていなかったのかと深く後悔したほどである(大袈裟)。「京女」と聞くと、脊髄反射的にとても嫌な人のことを思い出してしまうのだけれど、海老瀬さんはいいなぁ*3。特に佇まいとか気配とか。つい彼女が出演している過去の作品を密林でポチってしまいました*4。これから売れっ子になるといいね。
映画史に残る傑作というものではないだろう。でもこういうちょっと気持ちが軽くなるような作品は、「小確幸」を与えてくれるものとして、とても大切に思える。このままレコーダーに残しておいて、何度も繰り返して観ることになりそうである。

 この短編の海老瀬さんもいいなぁ。

*1:公式サイト http://www.ritsumei.ac.jp/eizo/kyotostory/index.htm

*2:京都出身。公式ブログ http://ameblo.jp/ebise-hana/

*3:いつもの悪い癖、かも

*4:「築城せよ」のDVD、なんと677円。人気がないのね。

制多伽に癒される日々

morio01012012-06-30

この3週間の追い込まれっぷりは、ちょっと「それはないやろ」くらいのものだった。体も壊さず、心も折れず、今日という日を迎えていることに感謝したい、そんな気分である。明日は久しぶりに自転車に乗るぞ! と張り切っていたら、雨だって……。それはないよ。
最近手に入れた仏像のフィギュアに癒されている。いや、慰められている。運慶作とされる制多伽童子の実物を、実はまだ見たことがない。高野山金剛峯寺に出かけていっても、常設展示されているわけではないのだ*1。同じ国宝の矜羯羅童子像とともにぜひご尊顔を拝したいと願っている。それまでは目の前のフィギュアで見た気になる。
ああ、もう明日から7月か。