シベリア上空のPerfumeあるいは町田康

成田からウィーン*1までは約11時間半かかる。その飛行ルートの大半はロシアの上空である。
機内サービスで流れていた映画におもしろそうなものがなく、小沢征爾ベルリンフィルを指揮し、アンネ・ゾフィー・ムターがソリストを務めるベートーベンのバイオリン交響曲を見てしまうと、他に興味を引くものはなにもなくなってしまった。あとは惰眠を貪るか、本を読むか、音楽を聴くか、無駄な思考を巡らすかくらいしかすることがない。
妄想モードに入るにはまだ早いので、自分のiPodで音楽を聴きながら、本を読むことにした。長時間飛行に持ってこいの800ページ超の文庫本を取り出す。谷崎潤一郎賞を受賞した町田康の『告白』(中公文庫)。河内弁で語られる「人はなぜ人を殺すのか」というこの書がたいへんおもしろくて、ぐんぐん引き込まれながらも、自分がいまシベリア上空にいることが不思議に思えてくる。河内vsロシア。明治vs21世紀。さらにそこに追い討ちをかけるように流れて来たのが、よりによってPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」であった。うまくことばで説明できないもどかしさに身悶え、ひとりミスマッチ感に興奮を禁じ得なかったのだった。これがドストエフスキーを読みながら、チャイコフスキーでも聴いていたら、きっとものすごくつまらなかったと思う。同じロシアものでもタトゥーとイリヤ・カバコフだったら、まだあれかって、あれって何だ?
激烈に調子が上がってきたので、その後は三人組の無機的な歌声を集中的に流しながら、ひたすら町田康を読むことにした。こういうのも小確幸だと思う。
venezia venezia
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マルコ・ポーロ空港で見た夕日が綺麗。ベネチアの街が綺麗。修道院を改修したホテルも綺麗。満たされた思いで一日目は終了する。オチはなし。

*1:ウィーンでベネチア行きに乗り換える

落ち着かないまま

明日からのイタリア行きに備えて、片付けられる仕事をやっつけておく。しかしながら、山を崩し始めたら、どうにも身動きが取れなくなってしまい、かえって心配の種を残したままになってしまった。ま、いいか。夕方、ポケロケに乗って砧公園方面に行く。一か月ぶりくらいのポケロケは、いつものように気持ちよく走ってくれた。夕焼けはいまいちだった。
ベネチアのホテルには何もないらしい。インターネットはもとより冷房設備もないらしい。なんでも元修道院だった建物を改修したそうで、楽しみなような楽しみでないような。蚊取り線香がいるなんてことも聞こえてきたけれど、結局買わないままである。両替すらしていない。さてどうなることやら。