降り注ぐ水、催涙弾を色鮮やかな傘の花が防いでいる

(日経「春秋」2014/10/19付) この夏、川端康成が初恋の女性に書いた手紙が見つかった。恋は破れたが、婚約翌日に撮った写真が残っている。そのときの光景が目に浮かぶ短編「雨傘」がある。霧雨のふる日、少年と少女が思い出にと写真館に立ち寄る。ぎこちない撮影のあとで、少女が先に表に出る。少年の傘を手にして、立っていた。来る道と違い、二人で入ると急に大人になった。夫婦のような気持ちがした。傘には、ほのかな喜び、幸福感がこもっていた。その傘が香港では抵抗の象徴になっている。降り注ぐ水、催涙弾を色鮮やかな傘の花が防いでいる。そこから運動は「雨傘革命」とも呼ばれ始めている。返還から17年。中国の支配が強まるにつれ、自由が制限され、デモなどの動きに火がつく。50年保証した「高度の自治」も羊頭(ようとう)狗肉(くにく)だったらしい。民主派と政府が折り合い、同じ傘の下で、喜びを感じる日はまだ見えない。
(JN) 中国の革命は、何のために行われたのか。人間としての自由を求めて、孫文は闘ったであろう。それが、今は共産党を守るために、人の自由が抑えられている。これについて、他国は干渉が難しかろうが、他国の一般市民は自由に対して、自分たちのことも含めて考え、それを発信すべきであろう。私たちも、日本国の傘に下で平和と自由をいつまでも維持できるわけではない。また、同じ傘を押し付けられてはならない。様々な小さなカラフルな傘を自分たちで作り、それを持って進まなけれなばらない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO78601460Z11C14A0MM8000/