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なにかあり/とくになし

シメキリ女中にちょっとヒマをやる

懸案の仕事を送り出し、
シメキリ女中にちょっとヒマをやったすきに、
森薫乙嫁語り」(BEAM C0MIX)、
伊坂幸太郎「あるキング」(徳間書店)を読む。


乙嫁語り」期待以上のおはなし。
中央アジア萌えか。
想像したことなかった。


誰もいないところに蹴り込んだはずのパスが
まさかの逆転を生んだ、みたいな。


「あるキング」仙台市を想定した架空の都市の
弱小プロ野球チームにまつわるストーリーは、
今ちょうどチャンピオン・シリーズを戦っている
某球団を彷彿とさせるものでもないのだが、
時節としてはシンクロしてしまった。


悲しみというものを
悲しいという感情を排除して描くとはどういうことか、
スポーツというものを
スポーツの美しさや躍動感に救いを求めずに描くとはどういうことか。


それでも
感動というものは残る。
つまり、
この一種の寓話は
どうしようもなくイヤな話であると同時に
救い難いほどいい話でもあるのだ。


天才らしいレトリックはやっぱりさすがだが、
今回はそれよりも書かずにはいられない衝動の方が勝っている気がした。
その分だけぐいぐいと心に入ってくる。


伊坂さんの小説には
一時期「週刊モーニング」で
花沢健吾が挿絵を描いていたこともあって
ついついあの絵でイメージをしてしまうが
「あるキング」は
無理を承知で
あだち充に漫画で描かせてみたい話だと
悪い悪魔がぼくにささやいた。


もっと言えば、
唐突なたとえかもしれないが、
松本人志が映画を撮るとはじめて聞いたときに
ぼくが無意識に思い浮かべた
彼に描いてほしいストーリーは
巨大なヒーローの報われない奮闘記や
白い部屋に閉じ込められる話よりも、
こういう話だったんじゃないかなとも思った。