つかまらさしてもらいます by座頭市


もう19日かー。早いもんだな〜。正月なんてもうはるか昔のことのようだ・・・
その年明け早々に、アニが京都でお世話になっている鍼灸の美女先生様を東京の家に呼び、Mくん(7歳・ポメラニヤン)を始め家族全員を布団の上にころがしてもらう。
わたしは以前、長いことお世話になっていた、やはり美人の鍼灸師の先生がいて、うっかり結婚を申し込みそうになるくらい先生のハリ無しでは生きられない体になってしまったのだが、その先生は神宮外苑花火大会の晩を最後に勤めていた鍼灸院からどんな訳があったのか知らないがぱったり姿を消してしまった。それからさんざ違う鍼灸師の先生にもお世話になったが、相性って何に関してもあるもので、打てば打つほど「あー、違うそこじゃないよー涙」とむしろ欲求不満がつのるばかりになって様々な鍼灸院の扉を後にし続け、鍼灸ジプシーとなって彷徨ってきたという黒い履歴書をもっており、京都からの先生を呼ぶと決まったときも期待半分・諦め半分のやるせない気持ちだった。
父がその昔、「強いお侍には背中にも目があってな・・・」みたいな話を、子連れ狼みながらしていたが、今回、京都からの先生が布団上にわたしを座らせて「さあ、舌と手首を出してみやがれ」(←実際にはこんな言い方してません。)といってわたしの基本的な体質を診察したとき、強い侍が相手の技量を見てどの脇差を抜くか一瞬で決めてる時みたいな緊張感があって「このひと背中に目がある〜」と思った。
「ハリ、初めてじゃないですよね?」
と念を押されたとき、自分が、むう、おぬしやるな的な目付きをしてしまいやしなかったか不安だ。
そしてわたしのやるせない気持ちをよそに、京都から来た美女は次々にハリともぐさを置き始めた。
・・・・
鍼灸は、指圧とかマッサージと違って、身体に直接入るので、当たれば、それこそ極彩色の世界が一気に広がるクスリみたいな効果がある。
「血が通う」とか「血の巡りがよくなる」とかよく云われる言葉が、比喩でなく自分の内部で実際に起きるのを知るのだ。あっ!いまのひと打ちでここの水路は一気に開通しましたー!!という、はっきりした効果が得られる。頭部や顔部への施術でキた時などは、脳に近いからか覚醒感に近いものが得られること請け合いだ。それが本来の目的じゃないのはヨガと一緒なんだろうが、やっぱこう、夜行列車の旅で十数時間後の夜明けみたいな感じがある。薔薇色の朝焼けだ。これも比喩じゃなく、まぶたを通して見ることができる♪真っ赤に流れるぼくの血潮〜だ。

ある程度長い施術というのは、軽い運動後みたいに少しぐったりする。家族をまるでちびくろサンボの虎バターのように溶けとけにさせた後、背中に目のある美剣士ならぬ美人先生様はついにはMくんのハートをも完全に手中におさめて再び京都へ帰っていった。診察で先生に「おぬし、どんな時にもいらちではあるまい?」(←こんな言い方はしてません。)と言われたのがなんか凄く嬉しかった。他にもいろいろと老練な占い師のように自分の体質・気質を言い当ててゆくので、口には出さねど本当はもっと、凄いこととか、わかっちゃってんだろーなー!と思いちょっと恥ずかしくなったのであった。
わたしのハリに関する魂の旅は終わった・・・でも問題は先生が京都だってことなんだよ〜!!