日々のつれづれ

不惑をむかえ戸惑いを隠せない男性の独り言

乳がんサブタイプと術後補助化学療法

乳がんは手術、薬物療法放射線療法、たくさんの治療選択肢がある
エコー、CT、MRIマンモグラフィー、たくさんの診断法がある

日本では定期検診も盛んで、早期発見ができる環境にある
だから、予後の良い方もたくさんいらっしゃる
早期発見ができること、それが生存率に反映する
乳がんはそれが実現可能な癌なんだと思う
http://www.tbs.co.jp/pink-ribbon/img/data/data_graph_04.gif
(TBSリボンプロジェクトから)

で、乳がん学会があった
今年も未来を感じさせる発表がたくさんあった
その中で、興味深い発表があった

乳癌の早期発見と手術

乳がんは4つのタイプに分かれます
世界の乳がん治療はその分類に従って実施されています
早期発見であれば、薬物療法が摘要になりますが、より強い薬効が期待できます

これは

  • ホルモン受容体の状態
  • HER2の状態
  • 増殖のスピード(Ki-67など)

の状態(乳がん細胞に発現しているかどうか)を指標にする分類です
http://nyugan.info/tt/qa/images/qa4_17_03.jpg
(乳癌診療TIPS&TRAPSから)

Luminal Aにもサブタイプ

Luminal Aはホルモンレセプター陽性乳がんで、患者数が一番多いサブクラスです
そのため、たくさんの治療方針があります

そういった中、Luminal A乳がんに対する治療効果で、更に細分化することのメリットが報告されました

Luminal A乳癌に対する術後補助化学療法は、核グレード、リンパ節転移状況、病理学的腫瘍径を用いて細分化し、再発リスクに応じて化学療法の追加を検討することが有効である可能性が示された。
東邦大学医療センター佐倉病院外科学講座乳腺外科准教授の朴英進氏が明らかにした。

Luminal A乳癌の術後補助療法はホルモン療法が主力となっているが、再発リスクが高い症例に対しては化学療法の追加を検討する必要がある。
しかし、どのような症例に化学療法の追加が必要かは明確になっていない。

そこで朴氏は、Luminal A乳癌をさらに細分化し、術後補助療法の個別化を試みた。
(中略)
Luminal A乳癌の術後5年成績においてLuminal A2、A3乳癌の累積健存率が不良であったこと、晩期再発も考慮してLuminal A乳癌は5年以降も観察を続けるべきと指摘し、とくにLuminal A2乳癌の治療戦略にさらなる検討が必要であると述べた。

Luminal A乳癌に対する術後補助化学療法は、核グレード、リンパ節転移状況、病理学的腫瘍径を用いて細分化し、再発リスクに応じて化学療法を追加すべき

ここでは、Luminal Aを更に3つのサブタイプに分類しています

  • Luminal A1 … ER陽性かつ/またはPgR陽性、HER2陰性で、核グレード1かつリンパ節転移個数0個かつ病理学的腫瘍径2cm以下のすべてに合致するもの
  • Luminal A2 … ER陽性かつ/またはPgR陽性、HER2陰性で、核グレード2またはリンパ節転移個数1〜3個または病理学的腫瘍径2.1〜5cmのうち1つ以上合致するもの
  • Luminal A3 … ER陽性かつ/またはPgR陽性、HER2陰性で、核グレード3またはリンパ節転移個数4個以上または病理学的腫瘍径5cm以上のうち1つ以上合致するもの

表にするとこんな感じ

サブタイプ ER/PgR HER2 追加条件 核グレード リンパ節転移個数 病理的腫瘍径
Luminal A1 陽性 陰性 右の全てが合致 1 0個 2cm以下
Luminal A2 陽性 陰性 右の1つ以上が合致 2 1~3個 2.1〜5cm
Luminal A3 陽性 陰性 右の1つ以上が合致 3 4個以上 5cm以上

つまり、A1が悪性度が一番低く、A3が高いという分類でしょうか?

治療成績

で、悪性度に応じて治療法を変えています

サブタイプ 治療法 期間
Luminal A1 ホルモン療法(LH-RHアナログ、タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬) 5年間
Luminal A2 ホルモン療法(LH-RHアナログ、タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬)+UFT療法 5年間
Luminal A3 EC療法(エピルビシン+シクロホスファミド)+タキサン系抗癌剤逐次療法→ホルモン療法(LH-RHアナログ、タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬) 6カ月→4.5年間

Luminal A乳がんに一般的に適用させるホルモン療法に追加の化学療法を追加しているということだと思います

で、その治療成績ですが

サブタイプ 治療成績 累積生存率 総症例数 再発例 死亡例
Luminal A1 98.2% 98.2% 57 0 1
Luminal A2 84.7% 88.1% 56 3 1
Luminal A3 42.9% 96.7% 34 11 1

というものでした

つまり、悪性度に応じて、術後化学療法を強くすることで、良い治療効果が得られる
言い換えると、悪性度の低いLuminal A患者には通常のホルモン療法で十分な治療効果が得られる
ということだと思います

化学療法は治療効果と有害事象の裏表です
強い化学療法は治療効果も大きいですが、有害事象も増えて、患者様にとって辛い負担を強いることになります

少しでも少ない種類の薬で、より大きな治療効果が得られる
それは患者さまにとって、良いことだと思います