君は冷血の面の裏に隠された温かさを見たか!? 『木造迷宮別館』

木造迷宮別館 (リュウコミックス)

木造迷宮別館 (リュウコミックス)

最強女中ヤイさんの可愛らしさと昭和の雰囲気漂う空気が魅力の木造迷宮本編。
その裏で連載開始よりも前に作者自身の同人誌によって描かれていたもう一つの木造迷宮
本編2巻のあとがきでも触れられていた本作が本編4巻の発売に合わせてまさかの登場です。
当時からヤイさんと正反対のキャラを意識して描いていたと語っていた通り、
確かに全然異なるキャラであるはずなのに、
旦那と女中のポジションや全体的に漂う空気は紛れもなく同じもの。
冷血とまで言われてたほどの百目さんですから、
ドS使用人が主人を逆にいびるような話を想像してしまっていたのですが、
むしろツンデレ系(ただしデレはほぼ皆無)な感じですね。
と言うか旦那のボケに冷静にツッコむ関係と言えなくもない。

機械的な思考を持っているわけでもなくて、実はすごく人間的なところもありますし。
勿論本編に出てくるヤイさんが最高であることは間違いないものの、
こっちの百目さんのような話もありですね。


こちらの女中さんは武闘派にして酒豪。
完全に旦那のことを主人として見ていないと言いますか、
誰を相手にしても自分のキャラを曲げないお人です。

一緒に食事をしていても旦那を尻目に一人酒飲んでたり、
悪酔いした旦那に向かってぶっ殺すとまで言い出してしまうくらいですし。

自分があまり上下関係を気にしないタチだったりするからか、
従順ではない百目さんのキャラにはむしろ好感が持てたりします。
酒に関しても表紙からして既に一升瓶かついでるくらいですからもう説明不要でしょう。
そして何と言っても戦闘力が最強。
チンピラに襲われてもあっさりとあしらってしまうかと思えば、
『ぶっ殺す』発言が出まかせではないことを根拠付ける強烈な一コマ。

ヤバい・・・こいつぁ絶対に過去に数人殺めてる目だ・・・
と、これだとただの傍若無人なだけなんですが、
けっこう弱点とかお茶目なところ、温かみのあるところがあったりして、
それが百目さんを魅力付けてます。
『G』とか辛いものが苦手だったり、実は和食しか作れなくてカレーをカレイを聞き違えてしまったり。

意外と子供の面倒見が良くて寝ぼけた子に胸を揉まれて素直に恥ずかしがったりとかもまた。
あらゆるところで人間らしい、女性らしい一面を見せてくれるもんだから
何か憎めないところがありますね。


このように魅力的な女中さん二人が競演を果たした特別編は
共に読んできていると非常に感慨深いものがあります。

ええ、こちらの表紙にもヤイさんがいるのはそういうことです。
タイプ的には全く正反対の二人が一緒に出ているのが
これまたすごい相乗効果を生んでどちらともより一層魅力的に見えるんですよね。
お客様としてやって来ているのに手伝おうとしてよく動くヤイさんに、
ヤイさんが作った肴を旦那が気に入ったのを見て教えてもらう百目さん。
女中コンビに隙はなかった・・・
まさかこの二人が酒を飲み交わす図が見られるなんて思いもしませんでした。
本作のタイトルとなっている『木造迷宮』が『木造迷宮』たる所以も垣間見えましたし。