とある科学のトレカシミュレータ


同僚が,「ブシロード トレーディングカードセレクション Vol.12 とある科学の超電磁砲」なるものを買ってきました.トレーディングカードなるものに初めて触れて,これはいったい,全種類のカードをコンプリートするために,いくらのマネーをつぎ込まなければならないのか気になりました...
トレーディングカードの販売システムは以下のようになっています.全100種類くらいのカードがあり,一袋に5枚くらい入っています.袋の中身を確認することはできません.購入は一袋から可能です.カードには出現確率によって,ランク付けがされていて,出現確率が低いカードは「レアカード」と呼ばれます.
「トレーディング」の名の通り,友達同士でカードを交換してコンプリートを目指す,という遊び方もあるようです.えーと,交換するお友達がいなくても大丈夫です.特定のカードを1枚から購入できる「お店」もあるみたいですから.もちろん,「お店」のカードは,少しお高いですけど.
直観的には,トレードした方が,早くコンプリートできそうですが,定量的には,どのくらい早くなるのでしょうか.あなたが集めているトレーディングカード,もし「お店」に行って,欲しいレアカードが,●●●●円だったら,それは購入するべきでしょうか?それとも,購入しないで,期待を胸に,もう一袋買った方が良いでしょうか.
こういう状況を,単純にモンテカルロ法でシミュレーションするプログラム*0を,ニ時間ほどの休憩時間ででっち上げることができましたので,こっそり公開します.

シミュレーション結果

さてさて,結果ですが,「ブシロード トレーディングカードセレクション Vol.12 とある科学の超電磁砲」の場合,全122種で,内訳は,ノーマル90種類,レア18種類(1枚/1袋),超レア9種類(1枚/3袋),超々レア6種類(1枚/6袋)です.普通にコンプリートを目指すと,平均購入袋数は105袋,平均総費用は39,900円という結果になりました.ただし,分布が後ろにだらーっと伸びたロングテールになるので,55%の人は,平均袋数未満でコンプリートできますが,逆に,7%の人は,160袋買っても,コンプリートできないという,恐ろしい未来が待っています.
自分は運が悪いと思っているアナタに朗報です.レアカード,超レアカード,超々レアカードについて,それぞれ1枚ずつ合計3枚だけ,「お店」でこっそり買っちゃってください.こうすると,平均購入袋数は65袋まで下がり,93%の人が,普通に購入した場合の平均である,105袋未満でコンプリートすることができます!残り7%の人は...ゴホゴホ.
ちなみに,全ランク2枚づつ,合計8枚こっそり買うことにすると,コンプリートまでの平均購入袋数は45袋まで下がります.
こんどは,別の視点から見てみます.どうしても欲しいカードが1枚あるとして,その1枚を手に入れるまでに掛かる袋数(マネー)はどのくらいでしょう?ノーマルカードの場合は17袋(6,460円),レアカードの場合は19袋,超レアカードの場合は25袋,超々レアカードの場合は36袋(13,680円)でした.さすが,超々レアカードは,1枚13,680円の価値があるんですね!ゴホゴホ*1
もう,7箱84袋(1箱12袋×7)*2買っちゃったよ!というあなた!そこのあなた!えー,残り枚数は,各ランクで何枚ありますか?もう1箱買うべきか,残りを「お店」で買い集めるべきか,迷っていませんか?そんなあなたには,本シミュレータの「購入戦略」決定機能をどうぞ.各ランクごとにN枚集めるために,あと何袋必要か計算してくれます.「お店」で買う方が安いのか?もう一袋買う方が安いのか,この問題は,あなたの環境で,シミュレーションしてみてくださいね.

応用

本シミュレータは,4種類までのカードランクをサポートし,各タイプ毎に総枚数と基準パッケージ数(何袋に1枚含まれているか)を設定することができます.その他項目の設定を変更することで,色々なトレカに対応できる,かもしれません.既存のトレカの購入計画を立てるために役に立ちますが*3,新しいトレカシステムを設計する場合にも役に立つ,かもしれません.
あと,有り得ない数値を設定すると,落ちたり,暴走したりするかもしれないので注意してくださいませ.バグもあるかもしれませんが,休憩時間ででっち上げたものなのでご勘弁ください.アップデートの予定はありません(>_<)//

ご注意

本シミュレータは完全無保証で現状有姿で公開されるものです.本シミュレータが使用できなかったことによるいかなること,本シミュレータを使用した結果,及び,本シミュレータの結果を利用して起こったいかなることにも筆者は責任を取ることはできませんので,御留意ください.

ダウンロード [ 4.0MB ]

*0 クーポンコレクター問題(追記)  厳密に数値計算できる筈なのに,なぜ数値計算による解を求めないのか,というコメントをいただきました.えー,無念です.欲しい答えは暗算で求めて,15分で数値計算を実装してウェブで公開するぐらいの力が僕にあれば...!!自分の無能を呪います.ごめんなさい.ちなみに,Coupon Collector's Problem [ Wikipedia ]に,解法が掲載されています.教えてナントカでも良く質問されているようですから,あとは,僕よりもずっと能力の高い「僕にもわかるシリーズ」の著者にお任せします...頼んだよ...

*1 1袋380円,1枚13,680円  行動経済学の観点によると,少しでも安く購入できる可能性があるなら,人はリスクを取ってしまうのだそうです.「お店」の価格決定時には,そういった要素も考慮する必要がありそうです.

*2 7箱(84袋)でコンプリートする確率  冒頭に掲載した図からも読めますが,だいたい33%くらいでしょうか.製品には,「1箱買っても全種類揃うとは限りません」という注意書きがありますが,1箱では...

*3 参考までに  トレカの袋の裏に書いてある「出現確率」が,本当に正しいかどうかはわかりません.実は,超々レアカードの出現確率は,袋の裏に書いてあるより,ずっと低い,なんていうこともあるかもしれません.この意味で,シミュレーション結果は,ただの算数なので,ご参考までに留めて下さいね.世の中は,ただの算数じゃ,渡っていけないかもしれませんよ?

*1 プライスレス(追記)  いただいた情報によると,確かに「お店」で買った方が明らかに安いようです(「お店」の例[ 外部リンク ]).しかしながら,<袋を開ける瞬間のドキドキ→プライスレス>,です.理性的にコストを最小化しながら,ちょっとしたドキドキを楽しむというのが,このデフレ時代,これからのオトナの楽しみ方ではないでしょうか!!(>_<)// 失礼しました.冗談はさておき,こういう類の制度設計問題で,提供側も短期の利益最大化ばかりを狙うのではなく,中長期的に楽しみを継続できるような良心的な制度設計にする必要があるのではないか,ということを感じたということです.特定のコア層から絞り取るより,薄く広く長く続けられる,暖かい仕組みの方が最終的なキャッシュフローは大きくなるのではないかと思います.甘いかもしれませんが.