日々のなごはく。

名護博物館ブログ

リュウキュウアユの故郷へ行ってきました!

最近、ポカポカと暖かい日が続いていますね。

さて、先週、リュウキュウアユの故郷である奄美大島へ行ってきました(奄美も暖かかったです)。
リュウキュウアユといえば、名護市では源河川が有名。
先日も、源河小学校の生徒がJB環境ネットワーク会のシンポジウムで源河川でのアユ保全に関する活動を発表した、と新聞で報道されていましたね。

これまでにもこのブログで取りあげてきましたが(こちらこちら)、沖縄のリュウキュウアユは1980年頃に絶滅してしまい、現在名護・やんばるの川で見られるのは、奄美大島産のアユです。
野生のリュウキュウアユが見られるのは、世界中でも奄美大島だけなのです。


民家のすぐ脇を流れるごく普通の小さな川ですが・・・

そこには、リュウキュウアユの姿が!

100尾以上の群れを作って泳いでおり、橋の上からも体をしならせて泳ぐアユが見られました。
かつて、沖縄の川でも見られた光景なのでしょうね。
今はちょうど、リュウキュウアユの繁殖時期にあたります。
ピークは過ぎていたのですが、別の川では産卵も見ることができました。
アユが産卵するのは川の下流の瀬で、毎年ほぼ同じ場所で行われます。

産卵場に集まるリュウキュウアユ。ほとんどは、おなかに赤い婚姻色(こんいんしょく)の出たオスです。

産卵の瞬間。
メスが産卵すると複数のオスが我先にと群がり放精します。
水が白くにごっているのがわかるでしょうか。
リュウキュウアユの産卵は、日没前後、辺りが薄暗くなってから始まります。

川岸には、アユを狙って若いゴイサギが。
夕方から日付が変わる深夜までず〜っといました。なかなか粘り強い・・・
また、川の中ではナガノゴリやゴクラクハゼ、シマヨシノボリなどが集まり、ちゃっかり産卵された卵をかすめ取っていました。
自然の掟ですね・・・

川底の石に付いた卵は、10日ほどでふ化し、すぐに海へ流されます。
そして、川の近くの浅い海で成長し、3cmほどに成長するとまた川へやってきます。

リュウキュウアユの最後の砦、奄美大島
しかし、アユの数は決して安心できる数ではなく、絶滅が心配されています。
そのため、アユ保全のために様々な活動が行われています。

住用川の河口近くにある「黒潮の森マングローブパーク」。
こちらで取り組まれているリュウキュウアユの人工繁殖の様子を見せて頂きました。
管理を行うKさんは、かつて名護市の源河川にあるリュウキュウアユ種苗センターで、アユの人工繁殖技術に関する研修を行ったそうです。
名護と奄美リュウキュウアユに想いをかけた人のつながりが確かに活きていました。

鹿児島県の条例では、リュウキュウアユを捕まえることは禁止されています。
産卵場を観察しているときに出会った地元の方は、「昔は食べていたけど、今は捕る人は誰もいない」と仰っていました。
条例のこともあるのでしょうが、それ以上に地元の方々が地域の象徴としてのアユを大事にしている印象を受けました。

アユの保護を呼びかける看板

マンホールのフタにもアユが。

かつて沖縄でも見られたリュウキュウアユ。現在、奄美から沖縄に持ちこまれたアユはダム湖での定着に成功しています。
これは、奄美リュウキュウアユに何かあったときに絶滅を阻止できるという観点で重要な意義があります(もちろん、奄美のアユを絶滅させないことが最優先課題ですが)。

しかし、沖縄の自然の川でリュウキュウアユが復活するまでは、まだまだ遠い道のりが待っています。
かつて開発で破壊された川の環境だけでなく、アユが子ども時代をすごす海の環境まで含めて、アユと人が共生できる環境づくりを行っていく必要があるのです。

〜〜〜〜〜〜〜オマケ〜〜〜〜〜〜〜〜
奄美に向かう飛行機から、名護の街がよく見えました。

名護市街地。博物館はどこでしょう?

名護から本部にかけて。
ちょうど今、ザトウクジラが名護湾にもやってくるシーズンですね。
すでに、伊江島付近ではクジラの姿が確認されています。
その話はまた次の機会に。

(NM)