シンガポール通信-THE世界大学ランキング

英国の会社Times Higher Educationが今年度の世界大学ランキング(THE World University Ranking 2016/2017)を発表した。まだ2016年も終わっていないのに気の早いことであるが、例年この時期に発表される。

さて気になるのは東大・京大の日本を代表する2大学のランキングが他のアジアを代表する大学との比較でどうなったかである。このブログでは昨年度のランキング結果であるThe World University Ranking 2015/2016に関してしばらく前に論じたが、今回も東大・京大を含め以下のアジアを代表する大学のランキング変動をグラフなどを用いて論じてみよう。

日本:東大、京大
韓国:ソウル国立大学、KAIST(韓国先端科学技術大学院大学
中国:北京大学(Peking University)、清華大学(Tsinghua University)
香港:香港大学(University of Hong Kong)、香港科学技術大学(Hong Kong University of Science and Technology)
シンガポールシンガポール国立大学(NUS: National University of Singapore)、南洋工科大学(NTU: Nanyang Technological University)

まず2011年度から2016年度までの10大学すべての順位の変動をグラフにしたものを図1に示す。2015年度は評価基準を変えたこともあって、大きく順位を下げた大学があるが今年度は大半が順位を回復している。残念ながら唯一の例外は京都大学で、昨年の88位から91位に順位を下げている。これについてはまた後で詳しく論じたい。



図1.アジアの10大学のランキングの年度変動


THEによれば基本的な評価基準の変更はなく、論文の評価の際に本や本の章になった研究論文も評価に加えることにしただけであるとのことである。しかし昨年度の各大学の順位変動が回復しているという傾向が明白であることから、私の推測するところでは昨年度の結果で大きく順位を下げた大学からの苦情などがあり、各評価結果を合計する際の重み付けは少し変えているのではないかと思われる。

2015年度のランキング結果でも論じたが、ここ数年日本および韓国の大学のランキングの変動が大きいが、それ以外のアジアの大学のランキングはかなり安定してきている。そこで日本および韓国の大学を除いたアジアの8大学のランキングの順位変動をグラフにしたものを図2に示す。



図2.日本・韓国の4大学を除いたアジアの6大学のランキングの年度変動


このグラフを見るとこれらの6大学のランキングが継続して上昇基調にあることがわかる。それと同時に順位が最近はかなり安定してきていることがわかる。シンガポール国立大学(NUS)は2012年度以降ジリジリと順位は上げているとはいうものの、20位〜30位の間で安定した位置を占めていることがわかる。

これはNUSの世界的にもアジアのトップであることが評価として固まってきたことを示している。それは実力が本物であるということを示しているのと同時に、さすがにこれ以上順位を上げて世界の強豪大学が上位を占めている20位以内に食い込むことはなかなか大変であるらしいことも示している。多分NUSでは、今後世界のトップ20に入ることを大きな目標としてどのように政策的に動くべきかが議論されているものと思われる。

それとともに南洋工科大学(NTU)のランキング変動も注目される。NTUは2011年度は150位以下であまり注目されなかったが、2012年度にいきなり86位に上げるとともにその後も毎年大きく順位を上げて、世界大学ランキングの大きなトピックとなった。この快進撃がいつまで続くのかと注目されていたが、2015年度は55位、2016年度は56位と順位上昇が止まり、50位〜60位の間で安定し始めた。とは言いながらまだ順位を上げており、来年度50位以内に入るのか否かが注目されるところである。

(続く)