なみかわみさきの日記

2018年ころまでの日記。

読書感想文:プロのための Linuxシステム・10年効く技術

はじめにおわび

プロのための Linuxシステム・10年効く技術 (Software Design plus)

プロのための Linuxシステム・10年効く技術 (Software Design plus)

実は去年、技術評論社担当者様に献本をいただいておきながら、感想を寝かし続けてました。ごめんなさい。ざっと見直しましたが約1年の間に古い記載なんかが残ってたらごめんなさいです。

どんな本か

この本は2012年に発行された、RHEL6対応の、どちらかといえば、いやはっきり「上級者向け」の本である。タイトルに「10年効く技術」とうたっている通り、この時点で「今後10年」第一線で活躍したい人へのテーマを絞っている。

文章自体は某技術サイトのドキュメントを書かれている経験も十分にある方が手がけているので、非常に(技術者には)読みやすい。

難易度

各章の難易度はばらつきがある。頭から読むと、苦手な人は第1章の時点でつまづく可能性がある。前書きにも「どこから読んでもOK」という趣旨の記載があるため、本屋等で見出しや各章数ページを読んで判断されたほうが良い。(Amazonレビューなどでも章ごとの感想を書かれている方がいらっしゃいますので……)ただし、まだ Linux コマンドが手になじんでいないなど、技術に自信のない人は、既刊2冊(「プロのための Linuxシステム構築・運用技術 」と「プロのための Linuxシステム・ネットワーク管理技術」)、またはもっと初心者向けの本を読んでから*1チャレンジした方が良い。

プロのための Linuxシステム構築・運用技術 (Software Design plus)

プロのための Linuxシステム構築・運用技術 (Software Design plus)

プロのための Linuxシステム・ネットワーク管理技術 (Software Design plus)

プロのための Linuxシステム・ネットワーク管理技術 (Software Design plus)

また、本書では参考文献が積極的に挙げられているため、紹介されている本を芋づる式に読むというのも良いだろう。

これからの10年をのりこえるために

表紙に書いているとおり、RHEL6(相当)を前提として書いているので、現在の運用サイトがそれ以前のOSや違うデストリビューションである−−つまり「枯れた」システムを運用している人には、仮想化の章等新しい技術に関しては、リプレイス(検討中〜)後に役立つ。ただし2012年時点の情報であるため、気になった技術へ深く知識を広げたい方は別途専門書が必要になるかもしれない。

なぜその技術が必要なのか、を考えられる技術者は少ない

本書の中でのコラム(P.64)で「なぜその技術が必要なのか」という視点を持つことについてふれられていた。最近のにわか技術者(私もその気があるはず。反省)は、とりあえずエラーメッセージが出たらそれでググる、やりたいことがあればそれでググる、で完結してしまいがちなので、根本的に、たとえば積極的にちゃんと用意されたマニュアルを引いたり、ドキュメントにもふれるようにして、なぜこの技術があるのか、を考えながら仕事をしていくことが、長期的にも技術者としての成長を支えるのではないかと思った。

もちろん完全にとはいえないが、これをマスターすれば10年といわず読者が納得いくまで長期にLinuxをさわる仕事を続けることができるのではないだろうかと思う。そして一方で、こういう本が出るということは、技術はありながらもなかなか伝達する機会が乏しいとか、また周囲に聞ける人がいないまま漠然と仕事をしてしまっている若手もまだまだ多いんではないかと感じた。

おまけ:Perl

本書ではPerlを使ったスクリプトがいくつか紹介されている。

もちろん基本部分は飛ばされているので全くのPerl初心者(この本を手に取る時点でそういう人はまれだけど)には向かない。また、Webアプリケーション(連携)とか”巨人の肩の上に立つ”*2という話でもない−−地味なんだけど、結局日々の運用ベースとなるとそのあたりが大事になるんだろう。

Perlのトレンドが知りたい、という人は2013年夏時点では「Perl徹底攻略」というムックや、2009年発行だが「モダンPerl入門*3がおすすめである。

Perl徹底攻略 (WEB+DB PRESS plus)

Perl徹底攻略 (WEB+DB PRESS plus)

余談:10年ひと昔とすれば

私も某所で仕事として Linux をさわりはじめて10年少し経って、その時の環境と現在とではだいぶ変わっているところもあるし、そうでないところもあると思う。そのへんの体験談とかは、また機会があれば書いてみたい。

最後になりましたが、技術評論社のI様、今回は良い本を送っていただき、本当にありがとうございました。

*1:いろいろあるんですが、きちんと、ひととおりコマンドを手で打って、なじんでから

*2:Standing on the shoulders of giants そのものよりは「Webサービスのつくり方」のほうで

*3:GooglePlay と Kobo 電子書籍ストアで電子書籍版が出ていた!